街
まだ、夜明け前です。
これから、カーテンを開けると小鳥がさえずります。
鳴き始めました。
若いお母さんが坂道を大きなごみ袋を両手に持って歩いています。ゴミ置き場は大きな屋敷の、駐車場の横にありました。彼女は、生活のために歩いているのです。朝一番の仕事がごみ捨てです。街にはいろいろな便利なモノがありますがゴミも溢れています。鳥はその大金袋お横をとぼとぼ歩いています。小鳥長一番の仕事はごみ袋から、朝食を探すことでした。それも生きるための朝一番の、日課になっていました。庭に植えられた柿の木になった、オレンジの実はそれを見て、しょうがないな、と思いました。6丁目の坂道で毎日見ることができる様子です。
宅地造成された丘の中央には線路が走っています。丘を抜けたところに駅があります。そこに向かう坂道です。ビジネスバッグを手に持った人たちがそこに向かって走っていきます。子は無表情です。それも暮らしのためです。
時折、制服を着た女子高生が、サドルから腰をあげて、自転車を走らせています。
夜明けから3時間経った公園には誰もません。入り口で、策に腰掛けてスマホを見ている、作業着を着た若者が一人空を見上げました。白い雲が地平線の先まで広がっていました。
坂の途中にある、2軒のコンビニからエコバッグを持った、人たちが出入りしていました。
そして、坂の上のスーパーディスカウントショップは、まだ開店前の電灯がついていました。バス停には、5人のサラリーマンとおばあさんが並んでいました。そこにあるラーメン店は、夜通し御営業が一段落して、チャーシューを煮込んでいる匂いが、していました。
新築のマンションの前にもごみ置き場には沢山のごみ袋がありますが、人の気配はありません。その前を黒いタクシーが通り過ぎていきましたが、乗客はいないようでした。向こうの交差点にある消防署から緊急サイレンを鳴らして、救急車が出ていきました。今朝二回目に聞く音です。
6丁目の坂道は30度の角度のまま1キロ伸びています。
遠くから、バスの音がきこえます。
グランドのベンチにはもうすでにおじさんたちが座っていました。
「おい、今日はどうするんだ」
「警備の仕事に行くよ」
「ゲートボールは」
「今日はやらん」
「碁にするか」
「向こうの遊具で、ちょっと運動してくるよ、お前は」
「わしは、この後寝てから、夕方から、清掃の仕事に出るよ」
「膝は痛くないのか」
「痛いよ」
「だな」
「ああ、かなわん、マッサージに行ったら、三日分の食費になるからな」
「痛むな」
「さすっとけよ、ほら」
男は、隣の男の膝をさすりました。
「何か、変わるか」
「いや」
「気の持ち方じゃ」
「めしは」
「水だ」
「おじさん、水でもいいから朝は食べてね」
「ああ」
「ありゃ、誰」
「看護師です」
「はあー」
「水よ」
「ああ」
「朝は水をのんでくださいね」
「草の匂いはしますよ」
「商店街は、まだあいていますよ」
「そうじゃ、そろそろシールが貼ってある頃じゃの」
「3個入。150円なら買えるじゃろ」
「ああ、日給もらったから」
「それじゃあ買いに行くか」
「早いで、まだ、唐揚げがあったらどうするん」
「それりゃ、諦めるしかない」
「我慢できるか」
「ああ」
「おめえ、孫は」
「3歳」
「おるんか」
「4歳」
「おるんじゃの」
「5歳」
「3院もおるんンか」
「6歳」
「また増えた、菓子はいくついるんだ」
「7歳」
「年子で7人か」
「は」
「もういい、それ以上いたら、食えん」
「お握りじゃ」
「三つ入り、150円」
「買うたか」
「まだこれからじゃ」
「ほんなら歩くか」
「傘は」
「おっと、忘れるとこじゃ、杖にしていた」
「持っとるならいい、もうすぐ雨じゃ」
「させん」
「何を」
「傘を」
「させない」
「何を」
「菓子を食わせない」
「なぜんなら」
「極貧じゃけえ」
「極貧か」
「ああ」
「貧しい分だけいいほうじゃ、わしは屋根もない」
「そろそろ、まともに働いたらどうね」
「それじゃあソロソロ歩こう」
「よっしゃ」
「三個入り、おにぎり一個」
「水は飲む」
「漸く今日の飯じゃ」
アスファルトの道は雨で黒くなったので森の道を歩きました。街灯が道を照らしています。
「おっと、滑った」
「転ぶなよ」
「えい、言うた途端に転ぶところじゃったの」
「ささえてもろうたからなんとっきばったで」
「危ないの」
「滑らんよう言歩くわ」
ひろばはびしょびしょです。
傘の人が歩いています。
坂の道はトンネルのようにつづいていきます。
街灯の下を歩いていきます。
途中でそばを食べます。
500円はポケットにありました。
傘はさせません。
ぬれていきます。
明日出直します。
新聞を読んで。
グランドの道を女子高生が傘をさして歩いていきます。
「オジサン」
「いってらっしゃい」
「ド助べえ」
「気を付けて」
「死ね」
「ゆっくり歩いて」
「うるさい」
「またね」
「気持ち悪い通報するぞ」
女子高生は、スマホをも追って電話を掛けました。
「終わった」
坂道です。
自転車はやっぱり立って漕ぐんです下りはゆっくり座っております。
「こら、ジジイ」
「すみません」
「逮捕だ」
「ヒェー、掃除します」
「馬鹿濡れてるぞ」
「勘弁を」
「警察を馬鹿にするな」
「困るんです」
「厳重注意だ」
「はい」
「助べえなことは、止めなさい」
「はい」
「馬鹿にするなよ」
「はい」
「では歩いて帰れ」
「逃がした」
「まだ許せんか」
「いいよ」
私は杖を突いてゆっくり森の道を歩いて帰りました。どんぐりが沢山落ちて転がっています。鳩が首を振って何羽も歩いていました。
看護師さん、食べろといったが、金はどうしようか。
これから清掃の仕事に言って日払いでもらってこよう。
「お前、やっと働く気になったか」
「蕎麦ぐらい食えないと」
「回るすしは」
「目の前を通り過ぎた」
「アナゴの皿に、ナスに、大根のすしが通り過ぎた」
「見ているだけでお腹すくな」
「食うたら泥棒じゃ」
「ただ見をしたら、不法侵入」
「捕まるんか」
「ああ」
「ほんまに困ったもんじゃ」
「働かんのか」
「いくよ」
「作業着は着替えていけ、臭いぞ」
「うんちか」
これらの建物はすべて坂ノ途中にあります。
小高い山の途中にあるのです。宅地造成は60年前に始まったようです。私の人生の半分以上は小高い山の中腹で過ごしたことになります。
私は川の淵の岩の上で釣竿を垂らしていました。岩の上のくぼみの水溜まりにヤゴや、沢蟹の子供がいました。
60年前の私は川底より低い平地の家に住んでいました。垣根を出たところにある柿の木に一頭の白い山羊がつながれて木の下の草を食べていました。
こいつ神の手紙をむしゃむしゃ食って、黒い山羊に足す奴か。と思ってお尻を押してやりました。
「メエー」
絵本通りに鳴くではありませんか。
山羊の乳はたっぷり出ました。
「おまえたいしたもんだな」
と声をかけて道をとぼとぼ上って、土が固まって轍が残る道を歩いて川に架かる橋を、渡ってバス通道と鉄道の駅がある街の、小学校に通っていたのです。
宅地造成された団地には、いくつか古墳の跡や古戦場跡に神社の跡があります。私はその下の歩道を、杖で歩いて上るのです。道の片側にはセメントのブロックで作られた、高い塀が続いています。
そこに植えられたクヌギや樫の樹が、木陰を作ってくれます。
その先に広がる空には、白い雲が、広がっています。
途中には、ごみ収集所がいくつかあります。大きなごみ袋でいっぱいです。
カラスがその横で静かに睨んでいます。
ネズミが通り過ぎました。
カラスはすかさずくちばしで捕まえました。
坂尾道は二つにわかれています。
坂の上には、大きなプールがありました。夏は子供たちで賑やかですが、今はコンクリートの塊です。
その横を通ると青い空が突然広がりました。大きな樹の緑が輝いています。
「ラーメンでも食うか」
「その目に働いて稼いでくるよ」
「そうか」
「ああ」
「それでは、私一人そこの角のラーメン屋に寄ってくるわ」
「まあ、2時間ぐらい警備の仕事をしてくるよ」
「じゃあな」
バスが、通り過ぎました。
無表情な人が、見ることもなく外をあがめて乗っていました。
坂のしたを通る高架橋から電車が通る音が、
グアーン、ゴトゴトと音を出して通過しました。
「坂の上のベンチで休んで仕事に行くわ」
「ああ転ぶなよ」
「ああ」
「また後で」
「ああ」
私は坂を上っていきました。
ゴミ出しに若い奥さんが、やってきました。
「おはようございます、久しぶりにいい天気になりましたね」
「ええ」
「洗濯物を沢山ほしたんですよ」
「今日は布団も干せますね」
「ええ」
「おにぎりは」
「お昼い食べます」
「おかか」
「エビ天」
「昆布」
「ちりめんじゃこ」
「梅は」
「大個」
「味噌汁は」
「味の素の」
「うん、インスタント」
「昆布が抜けた」
「3枚」
「おにぎりは」
「3つ」
「7個でした」
「いれて」
「キター気持ち悪い」
「かけっこの音が広場に響いています」
「警備の仕事はどうじゃった」
「骨が折れるんよ、ひざに来るけえ」
「整骨院に行くしかないの」
「かせいだらな」
バス通りは夕暮れの光で眩しい、時間です。
若いお父さんは子どもを抱えて、おねえちゃんとっけっこをしています。
あれをやって石を踏んだらヘルニアになるんじゃがの。
蚊が飛んで来とるぞ。
まだがんばっとるの。
遠くで都会の音が響いているようじゃ。
若いもんはまあ、今もあっちで笑うとろうじゃろう。
「流行の甘いもんは知っとるか」
「あたりまえだ、アンマンだろ」
「残念、ワッフルという洋菓子じゃ」
「洒落とるの」
「あ」
「うまいんか」
「ぶちよ」
「ほう」
夕暮れの影が街にやってきました。
ド、カーン。
西の空に花火が打ちあがりました。
お顔下に広がる、森と、小川に囲まれた広大な敷地に建つ、総合大学の学園祭のようです。
学生たちが行う、経済と、介護の、シンポジウムや、英語劇が話題になっています。
バリアフリーの施設は、身体御不自由な実には安全ですが、すべてが優しいとは思えません、時折、健常な方の都合に合わせて設置したものもあるように感じます。街はそうしたもので菅、緑の森とベンチがあると時間が充実しています。
眺めていると落ち着きます。都会には都会の、郊外には郊外の、もうすでに小鳥がさえずっています温かい日の光で、商店街は、もうすでに、店をあけていました。支所の職員も明るく働いていました。
坂の上の商店街には、市役所の支所と、病院と、おいいしいパンを焼く主人がこじんまりと営んでいるパン屋さんに、腕のいい歯医者先生のやっている歯科医院、ドラッグストアーにスーパーに薬剤店と蕎麦屋と、中華屋さんに駄菓子屋さんに、学習塾に、銀行に、美容院に理容院に、バスターミナルに介護施設に。ケーキ屋さんに八百屋さんに衣料品店に制肉屋さんに自転車屋さんに、保育園に、ファミリーレストランに、写真店に眼鏡店に時計屋さんに、喫茶店、たこ焼き屋さんがあります。書店と靴屋さんが消えたままです。お茶屋さんと、レンタル着物店と葬儀屋さんはあります。たこ焼き屋さんと豆腐転移文房雨天も五トンでいます。赤の上の街は今日も静かに人々が行きかっています。
「おい、ごみ拾いは」
「やるが、金にならん」
「警備の仕事か」
「やねこいが行くわ」
「わしも清掃の仕事に行く」
「板金工場が十要員を募集していたぞ」
「あそこは歩いて、60分はかるぞ」
「背に腹は代えられんけえ、いってみるわ」
「そうか」
「じゃまたの」
「また、じゃあ」
図書館お入口から見た書棚は、あー本が並んでいいなとおもいました。すでに何人か人がいて子供の声が聞こえていました。
私棚の奥に行ってブルー背表紙が並ぶ文庫の棚から3冊選んで、借りました。
突然空の向うに閃光が光ました。海の遥か向こうの戦闘が始まったようです。
「おい、地下に走れ」
男の
大着な声がしました。
「なんてこと」
女の悲痛な叫びが地球を一周しました。
タンゴを踊っていた飛戸は急に止まって振り振り返りました。
「200年経っても終わらないな」
「億万年続くぞ」
「地球はやはり消滅するのか」
「二本足で立ってしっぽの無い頭が異様に膨らんだ生物のおかげで」
「あの二足歩行の運動物か」
「ああ」
「たまに杖をついて3足歩行をする奴」
「あいつらがまたやってしまうんか」
「10回無くして,11回作り直して」
「ああ、1000回つぶしてあと1000回作り直そうとするみたいだ」
「仕事は」
「いくよ、昼を食って一寝入りして」
「また、夜勤か」
「いや、夕方のみのやつだ」
「調理場のやつか」
「ああ、腰がやねこい奴だ」
駅向かうバスから、見下した視線がいくつも箱祈って通り過ぎました。
坂の上の空は真っ青です。
大きなごみ袋を両手に抱えた若い奥さんが、
「あら、また」
「ええ」
「これからお仕事ですか」
「いえ、一寝入りします」
「夜勤、お疲れさま、でした」
「いえ、楽なもんですよ、まだ一つ持てますよ」
といって一つごみ袋を受け取りました。
「嫌恥ずかしい、裸を見られたみたい」
「通報しないでください」
「いえ、もう押してしまいました」
「あーあ」
「オジサン達また、やりましたね」
「はい、つい」
「今回は一度留置しますよ」
「えー、勘弁を後生ですから」
と若い巡査を、大仏さんのように拝みました。
「油さん、地獄へ行ってくださいそこでエンマ大王に聞いてください」
「針の山に血の池地獄か」
「どうでしょうね」
「ええ」
「えてしてそのようなものです。ちょっとした出来心がこのようになったんですね」
「あー右京さんだ。冤罪の量産者」
「誰でしょうね、私は、一巡査です」
「取り調べですよ、鞭に竹刀にバッドと舌つまみの警棒は使います」
「可視化してるんですね」
「ええ、100万イーネがすぐに来ますよ」
「オジサン達仕方ないわ、臭いおじさんはこの街にはいらないの」
「ゴミは」
「ゴミ置き場に捨ててください」
「なんてこった」
朝露で芝生が凍っています。
坂道はまだ続きます。
仕方ない、行くか。
「オジサン、スケベ」
「ええ」
「巡査さん味噌汁がいい」
「つけておくから頼むよ」
「ええ」
カラスが鳴きました。
「ア、 ホー。バーカ」
私歩身をゴミ捨て場に捨てました。
清掃車が来ます。
「オッサン」
「やあ」
「早いな」
「ああ」
「今日は来るの」
「行けない」
「知り合いですか」
「いえ」
「行きましょう」
「交番」
も街にはあります。
広場もあります。
広場には水飲み場の蛇口があります。
広場を囲む道は下水のマンホールの蓋があります。
街には広場があります。
多くの人が集まるのですが、突然の嵐が来て、川が氾濫すると、多くのごみと自動車が、広場を埋め尽くします。
黒の国はそこを狙いました。
多くのがれきで埋め尽くされました。
従弟はそこを通ったということです。
多くの悲鳴の中から、ソプラノの歌声を聞いたそうです。
希望、平和、希望
と歌っていたそうです。
従弟はその声を聞いて、濁流の渦から生還したそうです。
坂の上の街は、何とか姿を残して食料も水も確保できました。でも広場を通らなれば生活はできません。
街の人たちは勇敢に災害に立ち向かいました。
100年後の今,それは伝説の歴史になっています。
街の歴史家は広場のコケを集めて伝説を歴史に刻もうとしています。
当時の気象と地形と、政治の記録を瓦礫のごみがうもれた意向を調査しています。
ゴミは街の宝になりました。
交番に着いた私は巡査にその話をしました。
「おじさん、分かっているんですか」
「ええ、ごみの話です」
「ゴミですがプライバシーの侵害という立派な犯罪ですよ」
「ごみでしょ」
「ええ、ですからごみが宝って自分で言いましたよね」
「はい、確かに言いました、ぼけてはいません」
「よくもま、いえたもんですね」
「ええ、ぼけてはいません」
「若い奥さんが出すごみはとてもデリケートものなんです」
「中網知っていたんですか」
「いいえ」
「私も知りません」
「合意の上で受け取ったんですか」
「ええ、ちゃんとお手伝いといったと思います」
「その証明はできますか」
「はい、数十行上を読んだら証明できます」
読みましたが奥さんは、確かに合意した、
「お願いします。の言葉は、受け取った時点でなかったようです、オジサンの臭さに負けてつい渡した無言の脅迫といえます」
「ですが抵抗なく渡してくれたんです。中身がプライバシーの侵害に当たる、貴重なものであることが証明されない限り、私の罪は成立しないと思うんですが、ゴミ捨て場に捨てるものですよ、ごみオジサンが採ったら罪になるんですか」
「ですが若い奥さんが、不快に感じ身の危険を感じて通報したんです。その事実は揺るぎのないものです」
「それは客観的な事実を積み上げた科学的な捜査とは程遠くありませんか」
「あなたのしたことは、嫌がらせですよ」
「わたしにはその認識はありません」
「あくまでも否認ですね、長くなりますが、氏名住所年齢と職業から、教えてください」
「お伝えする理由がありません」
交番の片隅でのことですので、私は暑くなって汗をかいてお腹が空いてきました。
「お腹がすきました、気分も悪いのですが」
「困りましたね。2時間か、仕方ない、証拠不十分で、今日はここまでです。が、捜査は継続します。
私はくたくたになって、交番を出ました。途端に三角眼鏡をかけたおばさんが指をさして、白目で見ていました。
「あんな風になっちゃあだめよ」
連れていた男の子にいいました。
「怖わーい」
男の子は、くすんで、おばさんの足の後ろに隠れました。
「俺は犯罪者か」
バス停にバスを待つ人が4人並んでいました。魔街路樹は緑です。私は歩いてけることにしました。若い,巡査さん、私を追跡しているようです。そうだ、100円パンを買って、食べよう。死にそうだ。
色じゅおしたお植え込みが、
「泥棒、出ていけ」
と叫んでいます。
「ゴミ」
「すてるぞ」
オジサンが笑って言いました。
「縛るぞ」
子ども達が踊って騒いでいます。
「嫌らしい」
若い奥さんが、顔をゆがめて、逃げていきました。
「汚らわしい」
犬がキャンキャンほえています。
植え込みは
「早く出ていけ」
「消えろ」
「汚い」
「臭い」
「死ね」
しょうがないな。
私は、スーパーの隣にある、安売りのパン屋さんに向かいました。
ジャムパン、とちょっと高いけどメロンパンは止めて、ここは、王道のアンパンを買いました。私は公園のベンチに座って、グランドを眺めながら、ゲートボールを始めた町内の老人の様子を見ていました。有難いことに、ここに座っていると、時間がたつのを忘れてしまいます。
「おーい」
「おう」
「手伝えよ」
「ああ」
「土が、でこぼこだから、土を足して、固めて平にしたいんだ」
「ああ、今行くよ」
「来るよ」
「どうしてるんだろうな、今行くよ、来るよ」
「もういないよ」
「あ、そうか」
私はグランド整備の道具で、土を均していきました。
「向こうのほうも」
「小グランドか」
「いや、向こうのフェンス前も均してくれ」
みんな、めいめいに作業をしていました。
「オジサン、人が良すぎだよ」
「はあ」
若い、巡査がたっていました。
「ローラー引きもやるんでしょ」
「ええ」
私はグランドの隅に転がっている特大のローラーを一つ、マウンドまで持ってきて引いていきました。
「オジサン腰は」
「やられた」
「また、やりましたね」
「え」
「許可は取りましたか」
「いや、やってしもうた」
「でしょ」
「ああ老人は、出て行けと言われるんじゃ、悪いか」
「いじめですか」
「いや、汚いらし、汚物だと」
「いじめですよ」
「いや、不快には思っておらん」
「では、平気なんですね」
「ああ」
「なる程」
「老人の実態だ。デリケートだが、確実に存在しているぞ」
「ええここに」
「それでなんであんたがおりなさる」
「捜査中です、あんたはまたやってしまました、所有者の許可なく、ローラーを動かしてしまいました。厳重注意です」
「おーい駐在、なんだ、不審者が、うろついているのか」
「ええこのおじさん」
「良平さんがかい」
「良平さん」
「はい」
「住所は」
「無いよ、そこのベンチだ」
「屋根あないじゃあないか」
「木の枝が屋根じゃ」
「公園の管理者に許可は取っているのか」
「いや」
「不法占拠だろ、勝手に住んだら」
「のベンチ誰でも使っていいんだろ、早いもの順だろ」
「いやそれは、ダメだ。勝手に住んだら、迷惑だろ、おばさんがどけというだろ」
「ああ、しょっちゅう、出て行けと言われるわ」
「あったら出て行かないと」
「そうか」
「不法占拠で逮捕だ」
「良平さん、駐在さんに手伝ってローラーをやってくれ時間がないんだ」
「すみません、今、職務中なので、民さん気を付けて、失礼します」
若い巡査は自転車に乗って、離れていきました。
「行っちゃたよ、あーあ」
「良平さん、大丈夫か」
「ああ」
「巡査若いのう、人情を教えんとな」
「それが大事じゃ」
「つきいうもんがわかっとらん」
「しかってもダメじゃ、見守ってやらんと」
「そうじゃの」
「ごみのだしかたもわかっとらん」
「そもそもごみを知らん」
「わしらのことじゃ、ごみは」
「そうじゃの」
「ああ」
「臭いし」
「重いし」
「役立たん」
「どうするよ」
「適当に」
「まあそうか」
「捨てられるしかないやつじゃけえ」
「のう万博の事じゃが」
「月の石じゃろ」
「太陽の塔の事じゃ」
「ああ」
「それでどうした」
「ゴミの島いうのがったろ」
「ああ」
「ずいぶんごみを捨てたの」
「まあの」
「ほれ、鉄人28号のかみのおまけ」
「小学1年生のやつ」
「ああ」
「あれはどうなったんかの」
「お前のうちで遊んだろう」
「ああ」
「片づけたろ」
「いや、おやつが来てみかんジュースを飲んででショートケーキを食べてそのまま昼寝をしたんだ」
「良平、けんちゃんは」
「ケーキ屋にんってクリーニング屋なって、どっかへ消えた」
「知らんじゃろうの、巡査は」
「人情はごみからはじまるのに」
「わかってくれてないんじゃけえ」
「それでローラーを引いて、終わらせないと、いくら時間があっても足りんよ」
「そうじゃのやるわ」
「ご苦労さん」
「ああ」
「もうええんか」
「ああ」
「それじゃあ、あんパンを食うわ」
良平はベンチに座って、袋からあんパンを出してジュースにストローをさして一口飲みました。
「あー生き返った」
ん。
「わし死んだんか」
「そうよ死んでしもうたんじゃ」
良平は思わず自分のほっぺをぎゅっとつまみました。
「痛い」
「生きとるわ」
「あんパンを食おう」
良平は一口パンをちぎって口に入れました。
ガリ、
何じゃ、この石のようなもんは。
こりゃあ、小麦粉の塊ををつかまされたわ。
やっぱり、ひとかご5円んじゃの。
「おーい、良平さん、これ蛇口の水」
「ありがとうこれをふやかしたらくえるじゃろ」
「脳、ごみの日は」
「髪は月曜日で他のは土日と祝日はダメじゃが朝8時30分から9時までなんじゃ」
「そあら捨ててもええか」
「なにを」
「わしらを」
「殺して捨てるんか」
「ああ、生きている生き物はだめじゃけえ」
「死体はいいのか」
「ああ、焼却炉いきじゃけえ」
「灰になるんじゃの」
「灰もごみじゃが、肥壺に捨ててもいいやつじゃけえ」
「街の中に肥壺はなかろう」
「下水処理場はあるじゃろ」
「そんならそこに捨てるか」
「ああ」
「ええやっとじゃの」
「ああ」
「やっと骨んれるんか」
「やっとじゃ」
「ええやっと人間になれるんじゃの」
「死んでか」
「死ぬることができるんなら幸せもんじゃの」
「生きとったんか」
「ああ」
「水を飲んだら来帰ってしもうた」
やれんの、活きていかんとダメじゃ。
「そうっじゃの」
「どうするんね」
「ああ」
「寝るか」
「ああ」
「寝て食うたらええは」
「そうじゃの本は、読むもんじゃ」
「くうんじゃあないんか」
「くうてもいいが」
「山羊にはなれん」
「馬か」
「馬もだめじゃ」
「馬鹿じゃ」
「やねこい動物じゃの」
「馬,鹿」
「生まれ、死かないわ」
「やねこいの」
「今日も歩くんだろ」
「もう歩いたけえ」
坂の上のグランドは、今日も晴れています。美味しい匂いがしてきます。
もう、救急車がはしっています。
中は冷たくて、いろいろな薬が、合理的に収納されている箱です。
私はそこに裸で寝ていたようです。
開いた窓から、すし屋が見えました。
「回るほうでいいから寿司」
と言いました。
「しゃべった」
「寝る」
「静かにしてください」
といったんだと思います。
わたしは、48時間は覚えていません。
やねこいことになりました。
ホンマに屋根濃い(やねこい)です。
屋根はあったほうがいいです「屋根、来い」です。
「ほほ、馬鹿さん、いい御家ありますよ」
「はい」
「頭金たったの5円と400億円の物件です」
「この団地に100億円物件ができたんですか」
「ええ向こうの駐車場の向かいの畑のところ,ホッホ」
「はい、買えません」
「そうですね、怠け者のジジイは」
「はい」
「ホッホ、ゴミですよ」
「捨てられるですか」
「じきからすさんがきますよ」
「カラス」
「臭ーい、あ、ホー」
「カラスさん匂いますか」
「あ、ほー。500キロ先からに匂ってるぞ」
「はい」
「アンモニア水か、熟した果物の匂いだ」
「当り」
「アンモニア水か、役に立たんが遊んでやろう」
カラスはごみを持ち上げて、駐車中の車めがけて落として遊びました。
「おーいくぞ、時速1000キロだ」
バシャーン
見事に割れて散ったぞ、フロントガラスをなめてやるぞ、臭いの」
「うわーなんだ。」
「アホー」
「カラスか」
「誰のパンツを落としたんだ、もろ便所にしたやつだぞ、弁償者だ」
頭を打った私は気絶していました。
悪いことに大型のバイクが通り過ぎてわたしはせんべいになりました。このまま乾かすか。
「祖rは真っ青だな」
「風は雪の匂いだ」
「おーい」
「お茶だ」
「飲むよ」
「小便出すな」
「乾いたから偉丈夫だ」
「富士山は」
「見えてるぞ」
「明日も日本晴れだ」
「雪は」
「まだ先だよ」
「よく来たな」
「此処まで、1000の街を通ってきたよ」
「1000秒で」
「うん」
風は、北向きの階段まで葉っぱを飛ばしていました。
そして私は、道の向こうを眺めていました。
何も起きません。
「おーい大変だ」
「え」
「東の街に大雨だ」
「雪は」
「富士に降った」
「よくきたな」
「とんでいくよ」
「光よりも早く」
「音よりも早いんだ」
「宇宙のさきまで」
「ああ」
「億万後年」
「うん」
坂の上のごみ置き場の葉っぱは、屋根より高く舞い上がっています。
「オー、太陽の光が温かいの」
パンツは乾いた、匂っていないがゴミだ、誰かちゃんと捨てないと公害だ。
障害だよ。交通の、小学生が通ったら健康被害を出す奴だ、焼いてしまえ、枯草と一緒にごみ焼き場で。灯油缶に穴をあけて、枯草を詰めて、川のそばで焼いてしまえ。
やるか。おう。
パンツはよく焼けて消滅しました。影も形もありません。
ようやっと死んだの。
まあええで。
これで自由じゃ。
どこ行く。
決まっとろうが。
そうじゃの。
銭湯、坂の上の煙突を目指していこう。杖を突いて。
そうじゃの、手ぬぐいは、
万屋で、石鹸と、イチゴミルクとこうていこう。
パンツとズボンははいているじゃろ。
変えんのか、
まあの、
あいかわらずごみじゃの。
きたねえ。
せっかくの青空なのに。
銭湯の富士美保の松原と青い空でした。
湯船に八プリ湯がん枯れていました。
「いーい湯だなー」
「いい湯だな」
「ここは団地の戦闘の湯」
「あーホイホイ」
「ホイサッサ」
「ゴボウクンダヨ」
「イチイサンシゴ、パッパ」
「みんなで体操、いい湯だな」
団地の戦闘の男湯は宴会になりました。
「こら、静かに」
番台の若いのが顔を赤くして、飛んできました。
「いいお湯ね」
「いいお湯ね」
「はい、はい」
女湯の叔母さんが気持ちよく歌っています。
「良平さん」
「あー」
「気持ちよすぎますよ、番台に、ビールを用意しています」
「ああそうか」
「総菜や賛意コロッケとメンチカツにポテトサラダを頼んだのでゆっくりしてください。2000万円です」
「若のいい商売をしとるの」
「ええ、そのうち、ジヨー紫を呼んでショーをやります。4000万円です」
「おっと」
「はい、大サービスです」
「カラオケは」
「やりません、流しのお姉さんを頼みます」
「それじゃあ、繁盛しすぎじゃろう」
「いいえ、廃材が手にひらなくて燃料代が高くついて真っ赤です」
「そうかの、それじゃあやれんの」
「ええ」
「もう一風呂あびてからにするよ」
「ごゆっくり」
「うわー」
「おう」
「えー」
「ええことじゃのビールが出る」
「2000万円だよ」
「飲めやおごるで」
「なんで」
「気持ちよかろうが」
「それはそうじゃが、一生かえせんよ」
「あんたの人生は明日終わるんか」
「まあの」
「だったらわしは5秒後に死ぬぞ、1,2,3,4,5。こく」
「死んだ」
「な、そういうことよ」
「わしもそうか」
「いたようなものよ」
「いけるとこまでいってみちもんじゃがの」
「それが、2秒後よ」
「また縮まった」
「そんなものよ」
「そうか」
「見てみろよ天上」
「あーもう真っ暗だ、さっきまで朝だったのに」
「ほれごらん」
「ちくしょー」
「あんた面白いね」
「面白くない、つまらん」
「つmらないならだいじょうぶだすっきりだろ」
「うんちのことか」
「此処でだすなよ」
「あー、でるー」
「出ていけ」
裸で便所に突っ込んだあら、おばさんがいました。
「ちかーん」
「すみません急いでるんです」
良平は便座に座ってしっかり出しました。
「間に合った人間でいられた」
「臭―い」
「流します」
「良平さん」
「はい」
「そっちは女風呂です」
「エー」
「しょうがない、ここから出て行って」
「はい」
「あーびっくりした」
「あんた馬鹿か、本当に詰まらん奴だな」
「はい」
良平は服を着て銭湯を出ました。
夜空の星が、輝いていました。
「あーあ」
やってしまったな、でも、間に合った。
街灯の下の道もきれいだな。
自動販売機の音が鳴っているよ。
停電になってなくてよかった。
便所がつかえるし、
おでん、コンビニで買って、帰って食うか。
300円だと大丈夫だ。
一日500円ならまだ、今月も持つ。
もうちょっと歩いたら、
でも止めた。
帰って本を読んでいよう。
坂の上の街には今日も風がやってきます。
臭いのは仕方ない。
パンツだけは変えておこう。
角をまがるとまだおもしろい所があるかも知れない。
寄り道は得意だ。
たった一つの自慢だ。
といらんことをやったりしゃべったりするのもだめじゃが得意だ。
寄り道して帰るか。
夜は長い。1億万メートル。
おっと、初めて見る看板。
喫茶店か。
おでん屋じゃ。
「500円ですが、一皿、いいですか」
「良平さん、いい気分でうなっていましたね」
「え」
「銭湯で」
「ええ」
「100円でやっていますから、缶ビールと二皿でおつりあります、ごゆっくり」
「こりゃ天国じゃ、こんな美人のお姉さんが団地にいるとは、たまげたよ」
5畳ぐらいの間家にカウンターで5席、ランプの光で、壁は白くくすんでいました。
「いらないことって、一つ減らすよ」
「ご勘弁を」
「知るか」
「はい」
私歩区の席に座って、入り口を編めていました。
皿の音とカウンターの中江で動く主人の音だけの店です。
「今日からここで始めたんで、これまでは屋台で………」
「やっと夕飯です」
「ゆっくり食べて行って」
「ええ、ここに500円おいておきます。本当にこれしかないんですこれであと20日過ごすんです」
「すごい」
私は、カウンターに100円玉5枚置きました。
「使えるお金だと思います」
「いいわ、これで」
「缶ビールは」
「飲んで人です」
「そう、それなら本当は出禁よ。下戸は大嫌い」
「下戸です、5年間」
「しょうがない、サッサと食べて出て行って」
「つまんない客ね」
「そうです、詰まってなんです」
「あんたやっただろ」
「ええ便所で、かろうじて人間でした」
「詰まんない、ネタよ、迷惑代1000円払って出て行って」
「あのー持ってないんです」
「じゃ、消すわけにはいかんね」
バシ。
カウンターに出刃包丁がささりました。
ゾク。
「えらいところに来たな。また寄り道で失敗だ」
「うるさい、反省がない」
私は静かに座っていました。
「いいから食いな」
大根一つ皿の上に乗って湯気をほっと出していました。
「こいつ恥ずかしいのか」
「今後ろを向いたろ」
「良平、狂ったか」
「いや、この大根生娘じゃの」
「また、イランことを言う」
「それじゃが、本間のことよ」
「気落ちは込めているものですから」
「いただきます、かわいいの」
「恥ずかしくなるから黙ってください」
燗をつけている湯気の音がシューッとしています。
箸をもって大根を二つに割って、
カチッという音が店に響きました。
良平はぢ婚を口に入れて、ゆっくり口の中で溶かして飲み込みました。
喉の奥が喜んでいます。
このカウンターは、もろうた。
良平はまた、来ることにしました。
「まだ、いるの」
「ええ、ごちそうさま」
良平は杖を持ってたちました。
「またあどうぞ」
背中から女将の声が聞こえました。
あー蛇の目を持ってこなかったな、道が濡れて来始めた。路地を抜けると又路地がって制肉屋さんが、総菜をまだ、並べているようだった。これは、よくない、左に行こう。稲荷の祠の狐が、にやりと笑った。ピカ、バーン。落ちたな、街灯が一瞬消えました。
暗いな。
「とうとうこの時が来たぞ」
甲高いジジイの声です。
「ぬらりひょん退散」
私は町中に響く声で願をかけました。
「わーなんだ」
「ぬらりひょん退散」
「老血を甘く見るな」
「アンチ銭湯でのぼせてこい」
「湯はいいな」
「ああ、出ていけ」
バッガーン。
天が割れてしまいました。
ぬらりひょんは宇宙の果てに、飛ばされてしまいました。
夜空に、億万の星が輝きました。
ほうき星が飛んできます。
路地の隅に咲いたオミナエシが笑いました。
「いいね」
「え」
「飛んだよ」
「え」
「見たでしょ」
「見たら」
「通報よ」
「じゃあ見ない」
「見てよ」
「でも」
「裸が好きなの」
「いいよ」
「見ないと呪うわ」
「いい日でありますように」
「身勝手の祈りよ」
「明後日はもっといい日で」
「無いよ、億万円よ」
「たったの」
「キャッシュで」
「ああ」
「ダメよ」
良平は杖を突いて歩きました、雨は止んだようです。
もうすこししたら、夕焼けの富士山が、
「おーいそっちの街の住人たち、もうすぐ冬だぞ」
「わしはようやく凍ったぞ」
「富士さーん」
「おー」
「ほうき星見ましたか」
「危なかった、もう少しで大爆発だ」
「やったー」
「派手にやるぞ」
「富士山さんならいいよ、真っ暗ではないでしょ」
「ああ、煙いぞ」
「く、さーい」
「50億年分のへだぞ」
「ジジイだな」
「もう10回死んだよ」
「今、11回目をやり直すのか」
「あと1000万回」
「ふーん」
「死んだんか」
「ああ死火山と言われたこともあったよ」
「息はしなかったのか」
「したよ」
「偽のやつか」
「ホンマもんよ」
「それじゃあ菊が風は」
「北風じゃ」
「山茶花」
「山茶花」
「咲いた花」
「焚火だ」
「焚火だ」
「落ち葉炊き」
「煙いの」
「火事じゃ」
「またやねこい」
「走れ」
「わしは良平じゃ」
「のりが悪いの、コータロー」
「馬じゃないよ」
「鹿もはしるだろ」
「馬、-鹿」
「ああ」
「縮めて、馬鹿か」
「そうじゃ」
「信玄さんは、温泉か」
「湯につかっとるよ」
「湯ざめせんように伝えてください」
「ひりに来んのか」
「何の企みなんかの」
富士はおおきなあくびをしました。
駐車場の下の梅の木は寒そうに、木枯らしに揺れています。
秋の草も霜に負けたのか、頬良く焦げています。
黄色く透明なはをゆらしています。
青い空です。
一反木綿が気持ちよく空を飛んでいます。
松の木にひっかかりました。
大きく袋にごみの文字がります。
中身だけ捨てて自由になったのか。
「良平さん、今朝はもう満杯で、かないません」
「どうせ焼かれるもじゃ心配するな」
「まあね」
「ゴミ袋はまたこちよさそういおい空を飛んでいきました。
「りょうへいさーん」富士にまで行ってくるよ、ごみを拾ってくるよ」
「街会い靴も広がっているよ、神社も見えるよ」
「おい気をつけろ凍っているぞ」
「痛い」
「だろ」
「切れる」
「破れるよ、お前がごみじゃ」
「一反木綿で化けて出るよ」
「そうしな」
「子供たちが喜ぶよ」
「ごみは」
「拾って捨てるよ」
「飛んでいるごみは、任せて」
「ああ」
「飛んでいくよ」
「ああ」
「広いな」
「ああ」
「紙のごみだ、食っちゃえ」
「まある鳥の羽毛だ」
「食っちゃえ」
漸く通勤通学の人で、交差点の歩道運んでいる。
落とすか。
人間のごみだ。
「わしか」
あいつ一番きたねえやつ。
あいつの、多摩を狙え。
ガッチーン
何だ氷が降ってきた。
雹だ。
いなげな天気じゃの。
「一反木綿よー」
「凍えんか」
「ああ、切れそうだ」
「べんちでやすもう」
「飯は」
「ああ、ご飯、おにぎり塩のがる」
「塩だけか」
「梅と昆布」
「食うか」
「ああ」
「温めたらもっとうまい」
「レンジでチン」
「おめえ陳はだめだろ」
「焼けると、機能が無くなるぞ」
良平は、ベンチで、紅葉が高揚しているのを見ました。
木枯らしが消えたのでいったんお面もベンチに気持ちよく座って手におにぎりを持ってポカーンとしています。
「ごみを捨てて来るか、体がボロボロで半分以下の幅になったよ、これじゃあ一反じゃあなく縒った糸よりひどいやつだ」
「おにぎり食えよ」
「あー」
「今日は遠くへ行ったから、疲れているんだよ」
「あー、まあ」
「気を確かに持てよ」
「樹かー」
「ああ、気だよ、元気の気」
「現金はない、このお握りいくらだ」
「元気になれよ」
「あー」
「街のこと見たことを話せよ」
「あー」
「中学生が並んで帰っていたよ、女子三人と、男子一人のグループが、いくつも歩道を歩いていたよ」
「女子高生の自転車が、交差点を走っていたよ」
「子供を背負った若いお母さんがママチャリをこいでいったよ」
「自動車もヘッドライトをつけて街灯が眩しく光っているよ」
「富士山は夕焼けの雲に隠れたよ」
「日が暮れて寒いだろ」
「ああ」
「それじゃあ、一緒に来いよ」
「ああ」
良平は路地裏に向かいました。
オミナエシが、道の角で泣いていました。
「夜は嫌い」
「朝がいいよ」
「夜になったんだから朝は近いよ」
「うん」
「100円玉20枚これで」
良平はカウンターにコインをならべました。
「おや、そこの薄っぺらいのは」
「一反木綿さんです」
「へえ、静かにしててね」
「ギャー、一反木綿」
若い女性がカウンターに飛んできました。
「この人、妖怪、素敵―」
「ええ」
店の中が急に明るくなりました。女性はカウンターの入り口にぽっくり座りました。
「ごめんなさいね。騒がせて」
「いえ」
「どうぞ」
「大根が染みて美味しいですね」
「そうよ」
「お面ね、青子はほっといて、娘です」
「ヒェー、すっごい美人さん」
一反木綿は、席からずり落ちそうになあるまで、反りました。
「一反木綿―、許さん」
「えー」
「雨にしないで」
「それはテルテル坊主です」
「うそー」
「だまってて」
主人は、怒ってしまいました。
「さて」
「さて」
「雨になりますか」
「寒いので、降らないですよ」
「降らないそうです」
「嘘つき、は泥棒」
「何も取っていません」
「私の心は」
「とれません」
「盗んだくせに」
「妖怪」
「ええ」
「ぬらりひょんは」
「あの爺さん欲が大きくて宇宙の果てに飛んでいきました」
外を見るとすっかり暗くなっていました。
自動車の音が響ています。
駅御ホームに電車がついて、つけたサラリーマンに女性が、肩をすぼめて荷物をしょって降りて階段を下りてきています。
これから、バスに乗る列が、長く、つながっています。
「燗、つけますか」
「うまいよ、ヤッホー」
「自由ですね」
「良平さん、スケベ」
「え」
「今見たよね」
「いいえ」
「見たよ、胸を、ちっちゃいって言ったよ」
「そうなんですか」
一反木綿はにっこりとしました。
今夜のカウンターは賑やかです。
「ゆっくりしましょう」
「お前たち、60分制だよ」
「娘が勝つか、お前たちが勝つか見ものだね」
良平は100円玉を20枚カウンターに置きました。
路地は店から漏れる灯りで、石畳がはっきり見えています。
「一反木綿さん、こっちで飲みなよ」
「おっと」
「いらっしゃい」
「アレー町会長」
「良平さん、よく来るのかい」
「二度目ですよ」
「そうかい、ここのオカミは腹黒いよ気立てはいいが」
「うるさい、でていけ」
「ああ、わかったゆっくりするよ」
「はい、おしぼり、顔で拭きな、脂ぎって気味が悪い」
「一反木綿さーん、来てよ」
「一反木綿さん気絶しちゃったよ」
「えーつまんない、妖怪のくせに」
鍋の中で、おでんのネタが気持ちよく湯につかっています。
路地には家の帰る人が、急ぎ足で通っていきます。街灯が黒い人影を、呼んでいるようです。
みんなこれから長い夜なんだな。
「夜は嫌いよ」
「ふーん」
「朝が来ないで」
「夜になったので朝になるんだよ」
「朝になったら明日になるでしょ」
「ああ、明日だ。今日でなくなる」
「何をするの」
「本でも読むよ」
「本か」
「ああ」
「選択してテレビを見てまた夜よ」
「掃除は」
「やらない、奇麗だから」
「もう食べないのかい」
「がんも」
「いるなら待って食いな」
「はい」
一反木綿は気絶してカウンターに赤い顔を置いて寝息を立てています。
「一反木綿気持ちよさそうだな」
町内会長も機嫌よさそうです。
「めざし、いいのがあるから、これは焼くけど食うかい」
店の中に香ばしい臭いの煙が、白い、霧を作りました。
「うまそうじゃあないか」
「焼けたよ」
「あーいただく」
兆に会長は気持ち良さそうにいっきに2尾食べました。
「こっちも」
「おや、食べるの」
「うん」
「肉じゃあないよ」
「私もそろそろ健康を、気にしてるの」
「まあゆっくり食べな」
お嬢さんは、丁寧に一尾ずつ、箸でつまんでゆっくり食べました。
「すみません、こっちも」
「良平さんもかい」
良平はカウンターに100円玉3枚置きました。
「関心なことじゃ、ないよ。ぺちゃぱいだなんて、一匹ね」
「なんで3枚置いたよ」
「だから一匹だよ」
良平は仕方ないと思って一匹手でつまんで、口に運びました。時間をかけてゆっくり噛みました。
「一反木綿、置きなよ、食べないのか」
「あーごみは、まだ捕まえるよ」
こいつ寝ぼけてるな。
「会長、明日のグランドは」
「やるよ」
「はい」
「だから明日はいらないの」
「明日はあるよ。今日があるから」
「何禅問答やってるんだい、食わないならさっさと出ていけ」
良平はポケットkら100円玉を5枚出しておきました。
「5枚ね」
「ああ、これ以上ない。今月はこれで終わりだ」
「あと25日どうするんだい」
「何とかなるよ、水は飲める」
「はい、がんもどき、餅入りだよ」
「女将こっちも」
「会長もかい」
「ああ」
「いいのかい、太ってきてるよ」
「まあ、血圧は計っとるよ」
「はい」
「うーん極楽じゃ」
会長は腹をたたいて喜んでいます。
「いい加減にしないと、長生きしてよ」
「何だ、妙に優しいじゃあないか」
「何言ってんのよ」
「なあ」
「何」
「うん、まあいい」
「おい、娘、若いんだから朝は、何毎回も来るぞ、怖いか」
「うん」
「朝になったら、お天道様に大声で」
「お早うございまーす」
「といううんだ」
声で店が揺れました。
「何」
一反木綿は目を覚ましたようです。
「うん、おじさん」
良平はなる程と思いました。
娘はにこやかに笑っていました。
たったの一声で、人の心を動かした。
「会長、大統領」
「また分けのわかんないことを言うね、良平さん、ねえ会長」
「あ、がんもお代わり」
「2個大サービスよ」
「気持ち悪いな」
「何よ」
「色っぽい声を出しよって、つけにするぞ」
「ダメよ。奥万円,たまっているのよ」
「億万円、100円玉いくつだ」
「店一杯分よ」
「1000年かかっても無理だ、会長さんさすが」
「わしは10年でためたよ」
「分かってるのね」
「怒るなよ、利子部分は払っているから店がつぶれてないだろ」
「ええ、政治家の金でなきゃいいけど」
「そりゃあ分からんよ、わしの金だからな」
「オー寒い」
女将が言うと
「ええ今日の木枯らしは大変でした」
一反木綿が真剣な顔で言いました。
「此処で寒いの念押しはだめなんだよ」
良平は慌てて言いました。
「あら、薄っぺらい人、木枯らしは、辛かったでしょう」
人で埋まったカウンターで店は暖かくなっていました。
一反木綿はまた寝たようです。
「一反木綿さん起きてこっちに来てよ、河童はいるの、塗り壁さんは今どこにいるの」
会長は席を立って一反木綿を引きずって自分の席を譲りました。
「キャー、来た妖怪」
「カッパは二丁目の井戸の中にいるし、塗り壁は五丁目の壁の中にいるよ」
一反木綿は半開きの目で面倒くさそうにいいました。
「えー」
「おい、そうかい」
「ええ」
「子供にいたずらしないよな」
「ええ、閻魔大王がにらんでいますから」
「おーそうか、一つ相談を思着いたんだが、今度の秋祭りで、みこしを閻魔大王に収めようと思うがどう思うかい」
「それは茂呂神社の仁王に聞いてくれ」
「そうか」
団地の西のはずれを守っている鎮守の杜の茂呂神社は、神木に守られています。
石造りの鳥居のそばにお地蔵さんが並んでいます。3人並んだお地蔵さんの隣で、仁王がにらみを利かせています。
会長さんは、
「おう、あの方か。夜明けにお参りに行って来よう」
と言いました。
「会長、秋祭りにおみこしを出すんですか」
「ああ、次の理事会で決めるよ」
「20年ぶりですよ」
「ああ」
「妖怪のお祭り、ヤッター」
「あらまあ、しょうがないね、今日のお勘定は、つけとくよ」
「すまないね」
良平は店の外を眺めていました。
おや、
電信柱のかげから小さな男の子がこちらの様子を見ているようです。
「会長、あそこ」
「おう、河童か」
「エー」
「お腹、空いているのか」
「うん」
カッパはうなずきました。
「女将めざし」
「ええ一匹残っているから、焼くよ」
「ああ」
「一反木綿、カッパだー」
娘はそういって、一反木綿の肩をたたきました。
「イテー」
男の子は、喜んでやってきました。
「寒くないか」
「うん」
「ほら」
「うん」
「キャー河童」
河童は手を出して、めざしをつまんで、口い入れて噛みました。
「まふらーにしろ」
「会長は手ぬう意をやりました。
「ありがとうごじます」
「ああ」
「飴はもうじき止みますよ」
「ああ」
「おみこしやってね」
「ああ」
「大丈夫です」
雨だったんだ、路地が光っている。
良平はもういちどそとをなめました。
やはり道には水溜まりができていました。
河童の子供は。そこを伝って、裸足で歩いてきたようです。
音がしなかったのはそれでだな。
「どうしてここに来たの」
「知らない」
「帰るの」
「うん、井戸に」
「そう」
「うまいか」
「うん」
「hらが減ってたんだな」
「運食べてなかった、100年」
「そうか」
「なんか変、畑や田んぼがないよ」
「100円ぶりに出てきたんだな」
「うん」
「朝になったら、お参りに行くか」
「うん」、茂呂神社楽しい」
「そうか」
夜はすでに終電が無くなった時間になっていました。
雨も止んだようです。
路地はすっかり暗くなって水溜まりに月が映っていました。
「一反木綿、そろそろ帰るか」
「う、何処に」
「家に」
「わしの家は遠いいぞ」
「ああ、そろそろ帰らないと夜明けになってしまう」
「そうか又ごみ拾いだ」
「ああ」
「起きろよ」
「眠いよ」
「一反木綿さんダメ、あのおじさん、悪いやつよ」
「そうか」
「そうよ」
「じゃあ帰ろう」
「一反木綿さんよ、このままここで過ごして夜明けになったら、茂呂神社に御参りにいこうじゃないか」
「僕も」
「カッパお前もか」
「ええ、明るくなったら店を閉めてみんなでいきましょう。おにぎりを持っていきましょう」
「賛成」
みんなおおきな声で言いました。
店は静かになりました。
もう入ってくるお客もありません。
女将はのれんを下げて、戸にカギをかけて、
お米を研いでご飯を炊きました。
30分ほどでお米のほっこりした香りがしてきました。
女将はお茶を入れて、カウンターの客に出して、自分もゆっくりと満足げにお茶を飲みました。
良平もゆっくり熱いお茶をいただきました。
皆冷えた体があったまって、寝息をたてています。気が付いたら女将はラジオをつけて、午前3時の時報が鳴って、ニュースが始まりました。
あと3時間で日の出。
あと1時間したら始発で電車が駅に入ってくる時間だ。
「良平さん」
「はい」
「起きているの」
「はい」
「面白い物を引っ張ってくる人ね、あなたは」
「いえ」
「娘が喜ぶ顔を久しぶりに見たの」
「はい」
「それだけよ」
「はい」
ご飯がたけると女将は塩お握りを握りました。
「食べて頂戴ね」
「あら寝てるね」
「起きますよ」
「いいよ、もう少しで日ノ出よ」
「ええ」
「まだ、少し明るい、雨は止んだようですね」
「もう少しね」
「はい」
「女将眠くないですか」
「朝よ、もう少しでラジオ体操よ」
「はい」
「良平さん、お参りに行きますね」
「はい」
「みんなの分尾根愛していいですか」
「女将は」
「此処で待っています、お味噌汁をしたくしておきます」
「はい」
「お願いね」
「はい」
路地の石畳は明るく輝いていて、緑のコケが目地に緑を埋めていました。
「行ってきます」
路地をぬけてふりかえったら、路地は透明になって消えていきました。
河童は喜んで、濡れた石畳みをペタペタと歩いて先頭を切っていきました。
一反木綿は、ごみが飛んでいると言って、空に舞いあがっていきました。
「キャー、飛んだ」
娘は万歳をしました。
「ほら明日が来たぞ」
会長はどっかどっかと歩いて来ます。
坂の上に、楠と栗林が見えてきました。
青い空に白い雲がぽっかりと浮かんでいます。
「良平君」
「はい」
「神輿は作れるか」
「え」
「倉庫にあるのがボロボロだから、修繕でいい」
「ホムセンターで材料を揃えてから、3日で」
「そうかでは、今日行ってくれ」
「でも今日っ働かないと一銭も無いんです」
「そうか、寺領費の1万円渡しとくよ、しbらく、うちの工場で働かないか」
「え、常勤はできません」
「こら、まだそんな呑気にしているのか」
「はい」
「ンら必ず来い」
「嫌だ」
「では秘書に連れてこさせるよ」
「嫌だ」
「良平さんいい歳なのに」
「昼は弁当があるよ」
「食えるのか」
「ああ」
「なら仕方ない、受けてやる」
「あきれたやつだ」
「はい」
良平は一気に暗い気持ちになりました。
「良平さん働かないと粗大ごみになっちゃいますよ」
「又ごみか」
「ええ、立派な」
「立派か」
「ええ」
「では、威張っていいな」
「良平さん、ゴミですよ」
「ああ、ゴミだ」
「良平さん、いじけないでください」
「いじけてないわ、わしの自由を返せ」
「貧民のわしを消すな」
「わしの時間を返せ」
「良平さん、聞くが」
「いつ無くしたんだ」
「夕べしっかり無くしたわ」
「夕べか」
「ああ」
「それなら今晩取り戻さんか」
「寝るわ」
「ならそうせい」
「昼にはわしの一番の美人秘書を向けにいかせるから、働いて今晩,寝ろ」
「美人と飯付きだな」
「ああ」
「ならいってやってもいい」
「そうか」
「ああ」
「来いよ」
会長は大きなあくびをしました。
鎮守の杜には、明るい太陽の日差し飽きていました。
河童は、神社の、手水場で、はしゃいでいます。
会長は、鳥居のそば、で仁王に蕎麦を備えて、秋祭りの祈願をしました。
「良平さんも拝んでくれ」
「ああ」
「良平さん、グランドのベンチで、おにぎりを食おう、そこで待って居よう」
「おーい、河童、グランドのベンチで朝飯だ。一反木綿を呼んでくれ」
「もう終わりか、まだ遊ぶよ、後で一反木綿と行くよ」
「ああ、頼んだぞ曽於後おでんや狼男炉で味噌汁だ」
「若芽がいい、頭の皿にいいんだ」
「そうか」
「ああ」
「朝から、うるさいな、一番鶏か、食ってやる」
と黒猫が起きて、狛犬の背中に飛び移って眠りました。
ズズズズ。
「行くぞ」
「はい」
ふたりはグランドにあるいてむかいました。
「会長、路地が消えたでしょ」
「ああ、いったらまた出てくるよ」
「はい、行ったら、何処へ………」
「良平君が見つけたところだよ」
「でも団地には駅はにですから、ずいぶん、遠くい行っていたんですね」
「良平君の近所じゃないかな」
「会長はどうしているんですか」
「行こうと思ったら路地が出て来るから、苦労はせんよ、家を出てすぐだ」
「駅は」
「駅は使わんが出てくるからいいんだ、いや、駅中の立ち食い蕎麦は、うまいぞ」
良平はあっちの駅か、と思いました。東にむかうんだ。
「会長、柿の木」
「うん」
「ずいぶん実っていますね」
「ああ」
「栗も実っているようですが」
「そうだな,梨にブドウにキウイは、例年並みのようだが」
「柿の枝、しなっていますよ」
「そうだな」
「もう一度収穫できますよ」
「ああ、秋祭りに」
「ええ」
「そういえば今年の夏はセミの鳴き声をあまり聞かなかったな」
「ええ」
「会長、栗は」
「ああ、栗拾い大会をするか」
「ヒェー栗拾い」
河童が来ました。
「ああ栗語派を炊いて、子供たちで食べよう」
「栗ご飯―」
河童は大喜びで踊っています。
すっかり夜がけて、自動車が走り始めまあした。バスの始発も出ました。
グランドにつて、ベンチに向かいました。
良平は塩おにいりを出して。
あれ、お嬢さんは。
「いるよ、一反木綿を待っているの」
「あ-来ていたんだ」
空をみたら、白い紙のようなものが、ひろひらと飛んでいました。
「一反木綿―」
「はーい、ごみ拾いしてきたよ、西の山の街にうっすらと雪つもっていたよ」
「おい、また足が凍っているぞ」
「痛い」
「ゆっくり降りてこいおいぎりだ」
「ああ」
あぐ。
「やっと朝飯だ」
「でかいな、大人用のだ」
「カッパ喉に詰めるなよ」
「アガハ」
詰めた、
「ダメよ、ほら出して」
娘は河童の背中をとんとんたたいてやりました。
「バハ」
「ほら」
葉っぱの皿にお握りがポトンとのっかりました。
河童は、少しづつ皿からつまんで食べました。
「女将のおにぎりか、100年ぶりだな」
「会長100何歳ですか」
180歳になったよ、青春だ」
「それは青春じゃあなく、茶春ですよ」
「増そうか、わっはっは」
会長は大笑いしました。
「まだ残っています」
「洋平さん1つ、わたしあと3つ食べます」
「さすが、若い。会長あと一つ」
「うん、さっきぶりオオカミのおにぎり」
「100年と数分ぶりでなく数分ぶりですよ」
「ああ」
そう言って会長はパクっとお握りを食べました。
考えてみると、女将も会長も妖怪だ、1000年生きてに元気なんだから。
「あのおじさん僕のじいちゃんの同級生なんだって」
と河童が言いました。
「妖怪だ」
妖怪の団地化ここは。
「ゴミ拾ったよ」
「おーいお握り、まだ、残っているよ、降りて食べろよ」
「あー」
一反木綿は
「あー寒かった」
一反木綿はゆっくり降りてきました。
「ほらこれ」
一反木綿は手を伸ばして、おにぎりをつかんでパクっと一口で食べました。
「おい、口の周りが黒いぞ」
「えー、わしがごみになってしまった」
一反木綿は大粒の涙を流しました。
「おいこれ使え」
良平は手ぬぐいを渡しました。
一反木綿は白くて細い手をのばして、
のっぺらぼうの顔に手ぬぐいを当てて乗りを取ったのですがそのままほっぺたを拭いてしまったので、黒いそばかすだらけの顔なりました。
「おい、顔中拭いたらダメだ、ひろがったぞ」
「えー、死ぬー」
「死ねるんか」
「死ねるはずない、妖怪は暗黒魔王が来ないと死ねん」
「死ぬるというな、ほらこれで拭け」
良平は手ぬぐいを水にぬらして絞って、一反木綿に渡しました。
「いやまて」
良平派手ぬぐいを取り返して一反木綿お顔を丁寧に拭いて、織りを拭きとりました。
「ずるーい」
娘が飛んできて良平の前に立ちました。
娘は手ぬぐいを取って、一反木綿のゴマのシミを一枚ずつ手稲にふき取りした。
「面白い、本当にふやふやで、ぺなぺな、ね」
「ほらこれ」
良平墓網を出しました。
「やめてくれ、鏡の世界にはいかん」
「えー」
「とれたのか」
「ああ、ご飯のように真っ白だ」
「あーやばい」
「おい」
良平は一反木綿御細い腕を掴みました。
「鏡はだめー」
河童が叫びました。
良平は慌てて鏡を板に落として割りました。
「やっちゃあたー」
「良平さん鏡が1000枚に増えたよ」
娘は慌てて箒と塵取りを持ってきました。
「容器は鏡に映ると、迷宮世界で一生過ごすの」
「死ぬのか」
「いいえ」
「自由」
「自由はないの」
とにかく鏡はよそう。
一反木綿は、ようやく笑顔になりました。
「ゴミから復活だ」
「ガラスはまずいぞ良平さん」
会長はうまそうにおいぎりを食べています。
「このベンチも、そうじしておこう」
「はい」
「良平さん、来いよ、みこしの修理も頼むよ」
「では、お店に戻ってお味噌汁をいただいて、解散です」
「おい、いつグループになったんだ、何でお前が指示を出す」
「ごめんなさい」
「そうだ」
「ごめんなさい。女将に頼まれたんで」
「何の企みだ」
「いいえ」
「怪しい」
「では、みなさんの自由に、私は向かいます」
「おい、それは勝手すぎるぞ」
「そうだ、みんな、行くよ」
それでは西南西に向かっていきます。
「道が違うだろ」
「いいえ」
「良平さん、ベンチの修理も頼むよ」
「会長」
「なあ」
「嫌です」
「またか」
「ええ」
「美人の秘書と昼飯付きだぞ、ソロソロ人間をやったらどうだ」
「自由でなきゃ嫌だ」
「お前自由は金がかかるぞ、はらがすいたら、起きることもできん」
「いいよ、便所には、行くから」
「良平さん、人間のごみはつらいぞ」
「いい加減、諦めてくれ、町内から妖怪の犯罪者はだしたくないんだ」
「美人ですか」
「ああ」
「昼飯は、アジフライ定食ですよ」
「ああ」
「給料は、100円玉で」
「ああ」
「じゃあ仕方ない、行くか」
「毎朝10時だぞ」
「寝てるよ」
「じゃあ、7時だ」
「なんで早くなるんだ」
「7時に起きろ、10時にこい」
「7時に起きるかそれじゃあ遅いの、6時30分からラジオ体操だ」
「起きてるなら来い」
「ああ考えとくよ」
あー出てきた、黒猫がみゃーと鳴きました。
「女将」
「お帰り」
「いい天気です」
「いいね、さあさあ」
「はい」
「おう」
会長はもうすでにカウンターの一番奥の席に座っています。
「キャキャ、昆布の味噌汁、4杯4杯」
「ええ、支配人」
「ハッハ、受ける」
河童は大喜びです。
「はいはい」
一反木綿がひらひらと、カウンターに座りました
娘は
「何よ」
そうって入り口のそばに座りました。
「良平さん」
「はい」
「おにぎりは」
「無くなりました」
「おやおかわりありますよ」
「2個」
「会長」
「こっちは一個を二つ」
「いいわ、一つづつね」
「うん」
一反木綿は、
「すみませんこっちは、海苔、抜きで」
「おや、たっぷりわさびをいれますよ」
「大好きです、今日も富士の街は雪できれいでした」
「見てきたのね」
「はい、ごみ拾いしてきました」
「はい」
「わー」
「お味噌汁ね」
女将はオタマで一杯づつ丁寧にすくって、漆の木の椀に入れてくれました。
「良平さん、やかんを取って、お湯が沸いたわ」
「お風呂、お風呂」
河童は大喜びです。
「お茶よ」
「はーい」
女将は味噌汁を一つづつ丁寧に席において、ゆっくり鉄瓶でお茶を入れました。
そして、赤絵の白磁の湯のみに、お茶を注いで、カウンターの席の前に置いていきました。
そして、神h自分お湯お身にお茶を入れて、
「私も失礼します」
といって、お茶をゆっくり、飲みました。
「あー生き返った、いい朝ね」
にこやかな笑顔になりました。銀歯がきっりと光りました。
皆、黙々とおにぎりとみそ汁をいただいています。
「うまい」
会長が、ふと声で言いました。
「ちょっと前ぶりのおにぎりですね」
「あーうまい」
「100年と20分後のおにぎりですよ」
「うまい」
「行きませんよ」
「美人が行ってもか」
「美人の具合に寄ります」
「お前が言えたガラか、飯もろくに食わんやつが」
「びじんですよね」
「もちろん」
「昼飯付きですアジフライ弁当」
「ああ」
「美人ですね」
「ああ、世界一だ」
「宇宙じゃあないんだ」
「まあな、億万分の一御美人だ」
「そんなんおるんか、わしの好みかどうかが大事じゃ」
「いいと思うよ」
「なら見せてみい」
「呼ぶで」
「ああ」
「サトコ」
「え」
「わたし」
「いや、お嬢さんじゃあない」
「オーたまげた、デブの美人じゃ」
「ようこそ、食べてね」
「はい」
ガブ。
「たまげた」
「どうじゃ」
「考えて、いいよ」
「まあ」
「しょうがない。美人なら行ってやるか」
「漸く決めたか」
「いってやるよ」
「美人とアジフライ弁当だからな」
「お前の自由は安いもんだな」
「ああ100円玉20個だ、どうだ」
「1000円札2枚か、わつぃお自由は1000兆円だぞ」
「100円玉いくつだ」
「100兆枚だ」
「ポケットに入らないものはいらん」
「わしは入るよ、小切手一枚で済む」
「安いもんだな。切手一枚か」
「ああ」
「会長行ったら100円玉2身だぞ、無いと詐欺だ」
「あそれに美人と味降り弁当な」
「ああ、神輿修繕と、ベンチ御修繕だろ」
「ああ、それに工場の清掃だ」
「それは詐欺だ、仕事が一気に増えた」
「私は工場の手伝いに来いといったろ、その分だ」
「ああ、確かい聞いたが清掃とは言わなんだよ」
「生巣は嫌か、お前お仲間がごみ拾いしているじゃろ」
「ゴミと塵取りは全然違うよ、ごみは捨てても役に立つがチリは積もらんと役位立たん」
「よういうた、そのちりじゃ、お前の脳みその塵を掃き集めて、積み上げたら少し位はましな人間になれるんじゃ」
「ましな人間か、何を増すんじゃ」
「そりゃあ、人徳よ」
「知らん人徳とやら」
「お前寺に行ったことがるか」
「ああ」
「小僧が毎朝箒掛けと雑巾がけをしとるじゃろ、あれはお経を読んどるのと同じじゃ」
「何で、小僧も文字は読めるじゃろ」
「お教ぐらいわしも読める、清掃は嫌だ、お経を読む」
「例えの話がわからんか」
「例えば、政治家、会長の事という例えか」
「そんなも尾だがそれは例えではない」
「基調を例えると、火事場の、消火栓みたいなもの、というのが例えだ」
「会長又とぼけて分からんことを言う」
「分からんか、良平さん、まともな仕事をする前に腫瘍をして辛抱を学べ」
「学ぶ、わしは社長のところの学校に行くんか」
「嫌、働け」
「また、分からんことを言う」
「とにかくこい、お前を野放しにしとくわけにはいかん」
「行くゆうとるのに何で怒られるんかの」
「とにかく来い」
「へい」
「静かね、みんな寝ちゃったね」
良平は外を眺めました。
ビジネスバックを肩から掛けた人達が、駅に向かっています。
「雨すっかり止んだね」
「雪でした」
「おや」
「富士の麓の街です。
一反木綿はゆっくりとみそ汁を飲みました。
「賑やかね」
「あれ」
「いいですか」
「ごめんなさい。しもう終わりです」
「エー残念、朝飯がくえるとおもったのに」
「食べてないの」
「ええ」
「家は、おでんでやってるの」
「へー、気づかなかったんです。毎日この道をとおっていたんです」
「家は見える人だけに見えて入ってこられるみたいです」
「へー」
「おなかすいてるか」
会長は聞きました。
「ええ夕べから水も飲んでなくて」
「何やってたんだ」
「あのー、街の予算編成の資料と計画書案の作成で机で寝ていました」
「二人か」
「はい」
「おい、良平君」
「はい」
「立って席を譲ろう」
「え」
「立てよ」
「はい」
「あら、空いたわ」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
女将は祖お握りに二個づつとみそ汁にお茶を出しました」
「おいいしい」
「あったまっていってね」
「はい」
「会長―、………」
「まあいい」
「ゆっくり食って塩と頑張ってくれ」
「はい」
良平は、おい切りを持って呆然と立っていました。
「良平さん、僕はもう一度ごみ拾いに行ってくるよ」
「ああ」
「わーい、げほ」
「キイをつけてしっかり飲み込んで」
娘は河童の背中をさすりました。
「干からびちゃうよ」
娘はさらに水を差しました。
「行くー」
「何処へ」
「井戸―」
「あったっけ」
「東の広場」
「またね」
河童は井戸に飛んでいきました。
「おい、今の」
「河童だ」
「おい、やれるぞ」
「河童を宣伝して名所にして財政をたて直すんだ」
「君たち、今度の秋祭りに神輿を出して、妖怪祭りにするんだよ」
「えー」
「ああ」
「大変だ、予算をくみなおすぞ、やっと名物が出来た」
「ああ」
「顔のない、のっぺらぼうの街に、ようやく色がついた」
「会長、何を言っているんでしょうか。そろそろ座って食べたいんですが」
「まあ、少し待て」
「犬じゃない」
「待て、彼らはワクワクしてるんだ、見守ってやろう」
「それわたしに得がありますか」
「損にはならん」
「徳は」
「そのうちだ」
「嫌だ」
「やっぱり修行だな」
「ああ行くよ」
「まあそうしろ」
「ありがとうございます」
「おうゆっくり食べたか」
「味噌汁が最高です」
「ここによくこらえるんですか」
「ああ、もう60年以上の付き合いだ」
「へー、まったくしりませでした。向こうの道はいつも通っているのにここ五路地があるのは知りませんでした」
「バスを使ってるんだな」
「ええ」
「今なら電車の駅があるから使えるよ」
「え、それは無いはず、鉄道関係の予算はまったく記録にありません」
「ここお住人10000人はいるんだよ」
「えーそれだけの税収あれば余裕ができるのに」
「まあ、ここはまほろば横丁だから、見える人にだけある街なんだ」
「えー」
「見えたからこの店にいるんだ」
「ではここは幻の世界んんですか」
「あ実在する、幻だ」
「えー、市長は」
「知っているよ、松本君だ。どうきゅうせいだよ」
「それh60円前」
「今は松山です」
「そうかわしは60年市長室に言ってないのか」
「あ、ごちそうさまでした,御代は」
「ごめんね、高くなったの、150円、ちょっと前まで100円でできたけどいろいろ高くなって」
「立ち食いそばが、高い,おにぎり、一個で150円、古今値は2個とみそ汁付きで150円、みえるからきていいんだな」
「お客さん、お茶」
「はい」
「うまい、自部らの淹れる御tyとレベルが100倍高い」
「ゆっくり飲んでね」
「それじゃあ、行くよ」
一反木綿が席を立ちました。
「ダメ―」
娘は腕を掴んで鳴きました。
「良くできたかぶりもんだな」
「おい、飛んだぞ、ひらりと」
「ゴミ取りに行ったんだよ」
「まさか」
「真の坂」
「清掃回収車がそろそろ動く頃だ」
「ああ」
「どうする」
「今晩市長と相談だ」
「会長、秋祭りと春祭りもやりますね」
「ああ、仁王様がいいと言ったら」
「茂呂神社ですか」
「ああ、今朝お参りに行って機嫌がよかったので秋は丈夫そうなんだ」
「会長まほろば横丁をかいがいいまでしらせるかんこうちいしませんか」
「会長は嫌とは言わないですね」
良平は困った顔の会長を見て、ニヤッと笑いました。
「わしは、守るよ」
「えー」
「まほろば横丁お平穏を」
「大勢来てもいいが、守るよ」
「ええ」
「会長エッシャーの階段ですね」
「ああ、知っていたか、良平さん」
「ええ、竹藪の迷路ですよ」
「ああ」
「分かるか」
「わからんがやぶさかでもなさそうだ」
「相談住民説明化で早めにはなしてもらおう」
「わしの仕事は変わらんですね、会長」
「うん、まあ」
「はっきりせんの」
「良平さん祭りふえそうじゃ」
「わしには関係ない」
「そうdが、囃子てをyってくれ」
「いくらくれる」
「出来るのか」
「林に手を付けるくらいの細工は出来るよ」
「鳴り物の演奏だ」
「手拍子うらいやるわ」
「トコトン」
パチパチパチチ
「トントン」
「パパパパーン」
「それでいい」
「いくらだ」
100円玉一枚だ」
「もう一枚」
「うまくやったらな」
「卑怯者」
「良平さん」
「腹黒い政治屋め」
「おい、今なんて言った」
「腹黒いやつ」
「お前、修行期間が一生になったぞ」
「知るか」
「お前は天狗だ」
「やっぱり招待を見せたな、閻魔大王」
「分かったか」
「工場だろ」
「ああ」
「床から天井に便所に風呂場とキッチンとダストにエアコンの清掃か、火に一回絵全部済ませていくのか」
「そういうことだ」
「嫌だ」
「奈良血の池地獄で湯につかるか」
「吞気でいな」
「一遍で鼻が溶けるぞ」
「かなわん」
「閻魔大王を見限るなよ」
「まほろばの主、黒い雲を切ってください」
「ウォー」
「大国主命」
「キターーーーーー」
基調は椅子の下に潜り込みました。
「天狗、いい加減わがままはよせ」
まほろばの街は消えていきました。
太陽が、明るくなった。幻想の街は消えてしまったが。
良平は店の中にいました。
「そろそろ、じゃあなくて本当閉まっているのよ、いつまでいるの、大国主が来たのに失礼ね」
「100円玉20枚おいておきます」
「はい、ありがとう」
「おい、こっちはつけだ」
「ダメよ、次は現金よ」
「億万回聞いたわ」
「またな」
会長は西の国道に向かいました。
良平は東の、坂の上の広場に向かいました。
柿の木の実がたわわに実っていました。
シジュウカラの鳴き声が、朝日をついて、飛んでいきました。
ゴミ回収の清掃者が、大きな音を立ててってきました。
振り返ると太った美人の秘書がたっていました。
「あれ、ずっと後ろにいたの」
「ええ、迎えに行きますのでお宅を確認しておこうと思いました」
「本当に毎日」
「ええ」
「雨と風の嵐の日も大雪お日も、灼熱の太陽がぎらぎらの日も、雷が鳴って、雹が降る日も」
「ええ」
表情が全くない美人です。
「オケラが起きたらオーけらけら」
「何ですか、ふふ」
やっと笑った。
「仕事中ですので」
「困ったな、喫茶店に行って、お茶でもしません」
「いえ、仕事中ですので」
「なる程仕事中はお茶も飲めないんですね」
「ええ、誰もそんな人はいません」
「僕は気が付いたらコーヒーを飲んでるんです」
「一杯、100円のコーヒーサーバーはありますよ、常備のお菓子も一袋50円で置いてあります」
「工場にはそんなものがあるんですね」
「ええ」
「あのー、後ろにいられると気持ち悪いので、横に並んで歩きませんか」
「秘書とボディーガードは後ろが定位置ですので」
仕方ない、良平は前を向いて歩き始めました。
「あー此処北向きの階段だ。良平は手すりを頼って上っていきました。着いた、鍵、鍵穴に通らない。鍵変えていないはず、5階ためしたがダメでインターホンを2回鳴らした。っ誰も応答なし。
「はいれませんね、ここじゃあなんでしょ」
「まあついてきてたんですね」
「ええ、だまそうとしましたね。入れないと自宅でないでしょ」
糞、良平は表札を確認しました。
良かったここは空き家だ。良平は、気を取り直してもう一階上に上って鍵を開けました。
「入れましたね」
「え」
「分かりました」
「一度上がってお休みになりますか」
「いいえ、仕事中です」
「あー、そうですか」
こいつ探偵か。
「いいえ秘書です」
え、しゃべってないのに聞いたな。
「今日は午後4時に迎えにまいります」
あれ、それではお昼のアジフライ弁当がない。
「夜食が5品、牛丼、かつ丼、豚丼、天丼,天津丼、あります。サラダ、みそ汁付きです。補器何かご用意しますか」
「何、すき屋か、焼き魚定食がいい」
「はい、牛皿はつけますか」
「ええそれにおしんこと,納豆」
「卵は」
「いりません」
「承知しました、焼き魚定食、牛皿御新香、納豆付きですね、みそ汁もつけます、ご用意しておきます。夕食の時間は、18時です」
「なる程、よく分かりました。お疲れ様です。」
「では」
良平は靴を脱いで、リビングに向かった。
テーブルに飲みかけのコーヒーカップに、食べ残した板チョコ。
窓から見える街は霧雨の中。登校している女子中学生の素足が同じ方向に向かって動いていて寒々しい。
住宅の屋根からは白い蒸気が、湧いている。空には一反木綿の飛行した軌跡が、白くはっきりっと細い線で綱会っています。バス停にはまだ多くの人が奈良でいます。国道御交差点は、渋滞した自動車が、徐行するか乙列車の用意ならんでいます。良平は少しガラス窓を開けまあした。自動車の夫電車の音と、鳥のさえずりに、風が、飛んでいく音が、遠くで響いています。
良平は、コーヒーを淹れ直して、テーブルの上に置いた描きかけのスケッチを手に取りました。24時間前の私だ。
午後4時亜デイはずいぶん時間がある。散歩に出かけて、落ち葉を拾ってくることもできるし、ベッドに横になって、ヘッセの本を読むこともできる。
良平は使い慣れた椅子に腰かけて、街を眺めています。そこに、ものっ語りがある。そして、突然消えて、歴史が、書き換えられていく。道には自動車無くなって、凧のような乗り物に乗った人が宙に浮かんで歩いている。百年前の貴族たちが、川べりの木立で、談笑している。
それらが同じ街の中にいる。
又、朝です。
良平さんは、起きてもう一御コーヒーをテーブルをゆっくり飲みました。
そういえば、まあいい。夕べ焼き魚定食だった。
良平さんは、もう一度テーブルの上のスケッチを見ました。
少し手ををいれてもいいか。
そろそろ手書きで、物語を書いてもいいか。
今日はあさから、便所掃除だ。昼はアジフライ弁当があるはずだ。
真央の下に広がるまほろばの街は、
無い。
おおきなグランドと森が広がっている。
良平さんは、今日来るのか太った美人の秘書。
断ろう、行く理由がない。百円玉2枚持った唐子熱はアンとかなる。
会長はやっぱり詐欺だ。腹黒い政治屋だ。
行くか。行かんよ。
足り前だ。
祖お前は、
当たり。
もう一度くじを引いたら、
大外れ。
ハズレか。
ああ。
どうする。
少し手を入れているうちに一日が消えていく。
まあな。そうするか。
ああ。
10時だったか。
顔ぐらい洗うか。便所臭いの。
まあ、いいで。
匂うとったの。
ダンスクローズじゃろ。
ああレモングラス付きじゃ。
来るんかの。あと15分じゃが、追い返すか。
ああ。
昼は。
まだ、腹が空いてないから、空いたころ来てくれと言えばいい。
まあの。
それじゃあ、鉛筆でも削るか。
ああ。
新聞は。
採ってきて目を通そう。
今日は長そうじゃの。
ああ,流そう。排泄物は泡にして下水処理場に流すのが、当たり前だ。
そろそろ用意しておこう。
ピンポーン。
聞いたよ。
「どちら様ですか」
「お迎えです」
「あの夕べの飯お陰で、今日はいけません」
「お加減は」
「とても立っていけません」
「お医者様は」
「いりません」
「今日のお昼は牛のステーキ丹生内のかば焼き付きの雄氏にお吸い物です」
「あーそうなんですか」
「ええ」
「いりません」
「ドアの横に、水と薬を置いておきます、後で飲んでください」
「いりません」
「のんでください」
「嫌です」
「私は好きです」
「何」
「好きです」
「何がだ」
「仕事です」
「勝手にしろ」
「明日又お迎えに参ります」
「どうぞ、早くいけ」
階段を下りるハイヒールの音が聞こえてきました。
やっといった。
この手を三日に一度使うか。
良平は、便所を出て、シャワーを浴びることにしました。団地銭湯に後で行くか。
それにしてもミッションは大変だな。
太った美人秘書、俺を迎える仕事で痩せるぞ。
会長め腹黒い。
あの秘書痩せたら、トップモデルになるな。
良平はベッドに横になって、積みあげた、本から一冊とって読み始めました。
銭湯いいって、まほろば横丁で、コロッケを食おう。200円あるから。
良平はズボンのポケットに手を突っ込んで、コインが2枚あるのを確認しました。
破れてなかったな。
100円玉か。
取り出して確認していいか。
取り出して確認するまでに、落としてしまったら、面倒だ。
良平は本を置いて立ちがって、ズボンからコインをだして確認しました。
ぴかぴかの銀色の100円玉2枚。
けちだな、同じ銀色のコイン500円玉でいいのに。
会長億万もつけがって、わしにコイン二つで自由を奪って、生きていけると思っているのか。
良平はもう一度テーブルに座ってスケッチを見ました。
ダメだな、印象が消えている。
良平は紙を丸めて捨てて、鉛筆を削り始めました。
捨てる。
捨て猫が5匹、キクの家の庭で、鳴いて、婦人は眠れないらしい。
猫しか捨てれんのか。
ゴミなら、役に立つのに。
眠れん夜を作るのは犯罪だ。
猫を捨てたやつは、神も捨てるんか。
たぶんかっこうつけてすてたな、西の山脈の一高い岡で、自撮りをして、ピースサインしたな。
老婆はやってきた猫を胸に抱えて煙草に火をつけて、ガラスのオブジェが並んだ窓を眺めていました。
タバコを吸い終わると、灰皿で火を消して、抱えていた猫をそっと床におろして、鍵盤委向かいました。
広くて静かな部屋にピアノの音が響きます。豊かで、力強い繊細な音が音楽になっていました。ショパンの練習曲でした。
老婆は、ピアノの上に置いた楽譜を愛おしそうに見て演奏を続けています。
多分老婆は歓迎してくれたのでしょう。
午後の事でした。
晴れたら、書ける。
風景は、道を描く、花も見えてくる。
太った美人はおい返した。描くのは止めた。
良平は鉛筆を削り終えると、紙を用意した。
ステーキ、ウナギ、すし、
いるか、ハンバーガーとコーンスープにサラダでいいわ。
良平はまほろばの路地を描いてみようと思いました。
青い空に、白いごみと茶色くなった葉っぱが飛んでいました。
竹箒で、履いて捨てる。
吐いて、捨てる。
脳みそのなかのごみを吐いて捨てる。
ピアノの音は静かになりやみました。
庭の植木の山茶花の販がバサッと落ちました。
侘助の白い花弁が飛んでいきました。
一反木綿は、
「おっと」
と言って口でとりました。
「良平、また、さぼってるな」
「晴れ、寝。雨寝だ。いい人生だなあ」
「呑気だな、死ぬぞ」
「いつ頃」
「1000年後だ」
「たっぷり寝れるの」
そういえば、小川が流れていたはずだ。今頃紅葉の棚が、できていたはずだ。
良平は仕方ないので、紙を用意して、まどから見えるグランドの森をスケッチしました。
良平はそこで再会したのです。右からきた彼女とT字路で。
「帰っていたの」
「うん、裏汁の父のところで3年すごしたわ」
「うん」
「不思議ね、通じたわ」
「あーあの電話」
「うん」
「もしもし」
「あ」
「やあ」
「うん」
「それで」
「また」
1年前これくらいの時間にここで受けた電話。
「やっぱり、君だった」
「うん」
良平はようやくスケッチを仕上げました。
大きな樹の幹夫根元にメス猫の妖怪が、立っていました。
スマートな美人でした。
良平は、
行くもんか、デブはダメじゃ。
また、追い返す。
寝てても悪く西本を読むのも悪くないいし、
めしは適当に何とかかなりそうだ。
寝てると痩せた美が出て来るしいいレストランにも行けるし、悪くない。
そもそも宿題があったのは忘れて好きなドリルだけやってんとか本が読めていくようなった。
「どうですか」
「え」
「やってみませんか」
「え」
「無料で貸し出しますよ」
「それは危ない、只より高い物はない」
「わたしのを使いますか」
「気持ち悪い親切ほどきけんなものはない」
「文明開化ですよ、ビリヤードです」
「玉突きか」
「ええ、蹴鞠は、もう時代遅れです」
「なる程」
「では、少しって上の階のレストランで食事しましょう」
「ええ、缶詰料理ですね」
「ええ文明開化ですから」
みんななマントを羽織って、山高帽。
「此処は西の端の出口のレストハウスです。ごゆっくり」
いつの間に歩いてきたんだ。
良平はコインを確かめて、コンビニにこうと北側の階段を下りたのでした。
確か東に向かったと思ったのに、美人の猫の後をついているうちにここに来たんだ。
「アンパン」
「ええアンパンは文明開化です」
「カステーラ」
「ええ、ようやく最近なっておいしく焼けました」
「鹿鳴館は」
「知ってるんですか、それはまだ、議案にのせてない最重要課題です」
「まだ、出来ていないんですか」
「ええ、資金繰りが」
「そうですか」
「東の島で、砂金が取れるそうですよ」
「それも国家機密です」
「え、常識ですよ」
「逮捕」
「え」
「そこの怪しい男、名を名乗れ」
「良平です」
「また、お前か」
「はい」
「此処はレスチフスだ、余計な口をたたくな」
「え、私はまだどこもたたいてないです。
「たたくつもりだったんだな」
「いえ」
「絵はなぜここに来た」
「なぜと言われても、コロッケを買いに出かけたら此処にいたんです」
「精肉店は東のエリアだ」
「お前また、付け回したな」
「いえ、付け回されてるんです」
「何」
「ええ、会長の秘書に」
「えらいのに目をつけられたな」
「ええ」
「少しは修行をしろ」
「逮捕は」
「お前のために牢を使うほど、もったいないことはない」
良平は
行くもんか。
会長のけち。
わしは寝てる。
寝てると食える。
何処にでもける。
働きたい時に働く。
行くか。
便所掃除うらいやるわ。
デブはいらん。
来るな。
逮捕だ。
良平は、ちょっと待て。
怒っても仕方ない。
マシな人生もあるだろ。
北の端南の端にも行く。
鏡の部屋だ。
画家がこちらを向いている。
奥の階段から商人が入ってきている。
赤の右隣に小太りの王女がたってこちらをにらんでいる。
天上から床に至るまで、壁にびっしりと絵画が額に飾られている。
北の天井近くにとられた、窓から、曇天の光が差している。
良平はレストハウスから出ていくことにした。
良平は東にある扉を開けました。
ゴー、
風が、もの凄い、勢いでふいています。
太陽は雲の向こうに隠れてしまいました。
雹も落ちてきます。
良平は、いいや、ともって扉をでました。
あれ、なんか通り過ぎた。
やばい、影が消えた。
良平はあわてて扉にもどってドアノブを掴んだのですが、ツル、スー。
あれ、出れないぞ、向こうに部屋が見えるのに。
風も止んだみたいだ、雹も止んだ。
えい。
バリ、
ひびだ。
ガラスか。
「ようこそ」
「え」
男の声が響きました。
森は消えましたか。
団地銭湯はどうですか。
まほろばの路地は、
おでん屋の女将は、
イラン会長と、太った美人秘書は。
あなた壊さないでください。
鏡が壊れると世界が消えます。
えー、壊せ。このー。
バリ、大きなひびが天上から床まで、できました。
ガオー、真っ黒な毛むくじゃらのおおきな獣が出てきました。
「おはようございます。」
「おはよう」
「どちらへ」
「森にどんぐり拾いに行きます」
「森はどこですか」
「行くのですか」
「そう思っています」
「ダメです。あそこのドングリは私のご飯です。行ったらあなたを食べますよ」
良平は頭の中で静か森を見ました。
森の中央には、銀色に輝く大きな泉がありました。
そこに白い馬と白いゾウがやって来ました。
良平は伊豆井の水を手で掬って飲みました。
「おい、なてこった、バキバキじゃ」
「大国主様、鏡を」
泉は、平。
仕方ない仕事をするか。
おう来るか。
嫌だ。会って行ってやる。
まあいいだろう。
しばらくここでスケッチする。
良平は、鉛筆を削りました。
まだ自動車も自転車もバイクも電車の音も聞こえません。
もうすぐ街はめざめそうです。
良平は窓から森を眺めました。
鳥が飛んでいます。
一反木綿が帰ってきました。
「おおーい」
「ああ」
「夜明けだ」
「ああ」
「街は起きるぞ」
「ああ」
雲一つない青空に白い布がふわふわと飛んでいましたが、ビュー、急に右にスピードを上げて飛んでいきました。森の枝はおとなしく揺れています。
良平さんは、鏡の世界にいることを思いだしました。
夜は開けたんだな。
良かった、今日だ、昨日はもう消えた。
まほろばの路地に行こう。開くドアを頭のなかで作りました。
おあの部を握って、扉を開けました。
「おい、採るなよ」
黒い毛で毛むくじゃらの獣がこちらをにらんでいます。
「いた」
「何処までですか」
白い象がやって来ました。
「図書館まで」
「ええ、背中にどうぞ」
象は鼻を良平さんの足まで伸ばしました。
「いい道だ」
良平さんは、そこを歩いて登っていきました。
良平さんが背中に座ると
「出発」
象は、ゆっくりと、あるきはじめました。
「ああ、外の空気はうまいな」
良平さんは、ドカッと、象の背中に横になりました。
象は、パヲーンと言って、背中を揺らしました。
良平さん、やっパリ塩とはさぼるべきだと思いました。
ハンモックよりもいい揺れです。
あー空は抜けるように青い空だ。やっぱり天国だな。
閻魔大王は、イラン、100円玉2枚で腹を痛めたんじゃあたまったもんじゃあない。
500円玉4枚だろ。
菩薩様、蜘蛛の糸はいりません。
ハンモックを。
「お前に蜘蛛の糸を使うほど馬鹿げたことはない。もったいない」
「時速50キロで回転するハンモックをこの雲とこっちの雲に繋いでやる。
「オー、ヒュー」
「いいぞ遊園地」
「怖くないのか」
「楽しい」
「殺すぞ」
菩薩さまー。
やっぱり、閻魔大王か。
正体が見えたぞ。
飛んでいけ。
でていけ、
殺すぞ。
やっぱり殺されてしまうんか。
日に一回死んだら次の朝になる。
新しい花が咲いてくる。
金木犀はもう落ちた。山茶花はもう散った。
侘助ももういない。梅がしてくるには、まだまだ、早い。
桜は、もうとうに散って、落ち葉も消えた。ポプラの葉と楓気の葉が紅葉して行くだけだ。
生垣には、菊の花が揺れている。猫がその根元をはっている。
そして、夜中中、
「めざし」
「めざし」
と鳴いている。
「うるさい」
「出ていけ」
女将が怒鳴りました。
ようやくまほろば横丁だ。
良平さんは、ズボンのポケットに手を突っ込んで、
コインがあるのを確認しました。
大きいな、ようやく500円玉だ。
良平さんは、びっくりして、目が覚めました。象の背中の上でした。
「腹減ったよー」
良平さんは、大声で叫びました。
良平さんは、
明日は、痩せたら美人の秘書に500円玉2枚じゃないといかん、と言ってみるか、仮病は2日連続じゃあ狼少年になっても仕方ない。
「おーい、降りるぞ」
パウォーン。象は前脚の膝を折って、鼻を伸ばしました。
良平さんはじめに降りて、ズボンのポケットが破れていなあい尾を王一度確認しました。無くしてないな。帰るか。
「ありがとう、いい夢を見たよ」
「早く食事が、出来るといいですね」
「オレの夢をのぞき見したな」
「ええ、その時ペリカンが魚を嘴からこぼしたんです」
「へー」
「はい」
「魚を食べる夢ですね」
「メザシだ」
「私は、魚は食べませんが、海に行った仲間は好物のようです」
「それは億年前に海に行ったやつか」
「はい」
「確かに、まほろば横丁のメザシを食う夢だった」
「ペリカンが誘ったんですよ」
「そうか」
「ええ」
「お腹空いた」
良平さんは、むくっと立って、帰ることにしました。
「今日は9時ですよ」
「痩せた」
「ええ」
「美人だ」
「もうブスではありません、100円玉2枚以上はありません」
「今日も休みます」
「いいですよ。仕事が終わるまで。辞められません。毎日来ますよ。
「かなわん、いやだ」
「いですよ。哲夫ロープで縛って、連れていきます。仕事は必ず、完了させてください」
「嫌だ」
「そうですか」
「ああ」
「おうしても」
「ああ」
「死んでも」
「ああそのほうが楽だ」
「さぼってては、人生も完了できません」
「なら、結婚してください」
「いいですよ、さぼるなよ」
「嫌だ」
「じゃあダメ」
「でも少しは、いいんだ」
「無いよ、だらしない人生を選択する奴は、死ね」
「だらしなくていいんだ。美学の問題だ」
「バイバイ、来ただけ損した」
山茶花の花が、ぼとっと落ちました。
菩提樹の木が高揚しました。
あー人生だな」
一番楽な道を歩いているだけなのに、
この道は私の足跡しかない。
砂浜に立っている。
風は北から南に吹いている。
メノウの、石がことのような音を出しています。
良平さんは、家の帰る前に、銭湯によって、まほろば横丁のおでん屋に行くことにしました。
「こんちわ」
「あんたか、カラオケを用意しておいたよ」
「風呂を借りるよ、便所掃除を機能お夜じゅうにやったから臭いぞ」
「ゆっくり浴びてください、一番湯ですよ」
「彫れ三位、さぼると一番じゃ」
「いい、湯だな」
「ハハハハン」
「いい湯だな」
良平さんの歌声が、銭湯の天井に響きました。
「いい湯だな」
「ハハハハン」
良平さん、顔を上げると富士山は真っ白でした。
海岸の白い砂浜に広がる松はどこまでも深い緑の林が続いていました。
海の波は海岸に白い荷を寄せては返していました。
男性御老人が、大型犬を連れて散歩していました。
犬は男性が投げた木片を追って走っていきます。
西の水平線に沈みかけた太陽が輝いています。
良平さんは足を伸ばしてゆっくり湯船に浸かっています。
天国だな。
子おあとまほろば横丁だ。
ゆっくり浸かろう。
わしは二度も女を追い返したぞ。
なかなか、上出来の一日だ。
帰りにゴミ袋を拾って帰るか。
いい日だな。
良平さんは
「わおー」
と叫びました。
一軒目はおもちゃ屋、ガチャガチャが、20円、
二軒目が駄菓子屋、麩菓子が、10円
三件目に精肉店、コロッケ100円
四軒目に、煎餅屋、一枚100円
五件目が、和菓子屋、大福一個、50円
六軒目が、パン屋さん、アンパン一個、30円
310円、足りん。
会長から、500円もらわんと。
行くしいかないか。夕方に行ってやれ、
それまで、億署にスケッチをやって、めしを食ってコーヒーを飲むか。
路地の石畳はまだ濡れています。
蹴るがぴょこん。
かたつうりがのそのそ。
牡丹の葉の上を這っています。
蟻が、飴玉に群がっています。
がきが捨てたな。
チクショー。
静かな路地です。
牡丹の葉っぱから、水の雫がぱたりと落ちました。
俺があれか、いや血会うわしは泥水じゃ。
真水はいいの、500円になる。
そうじゃが、わしの腹にはいろんな、ばい菌やごみが混ざっているから、味わい深いはずじゃ。
「一個」
「はい」
美人じゃ。朝から目が覚める頬の美人じゃ。
「おでん屋の娘の友達か」
「ええ」
「豆でいいですか」
「おお、それで」
「彼女は繊細ですが、楽しい子ですよ」
「うん、まあそうじゃ」
「杯おまめさんお大福一つ」
娘は、葉っぱにくるんで大福を渡してくれました。
「はい」
良平さんは娘が差し出した手に、50円玉を置きました。いい匂いの手じゃ。わしが汚すもんじゃあない。
「ありがとう」
良平さんは精肉店にもどりました。
止めとくか。
「お兄さん」
無視だ。
「ポテトコロッケ揚げたてだよ」
きつね色のいい匂いだ。
これでお金が消える。
「一つ」
「いいね、あんた会長のとこのひとでしょ、つけとくから払いはいいよ」
「いいのか」
「名前だけくれ」
え、名前をやってただか。わしは名前を変えるのかの。
「いや、名前を教えてくれ」
「良平です」
「はい、これ」
「どうも」
良平さんは袋に入ったポテトコロッケを一つ受け取りました。
煎餅も行けるな。
「一枚」
「醤油」
「はい」
こいつデブの美人だ。
これ。
良平さんは、100円玉一枚、菓子だなの上に置きました。
「はい」
娘は、着行った新聞紙の袋にせんべいを一枚入れて、棚の上に置きました。
「ただのシステムはないのか」
「ええ、会長は塩せんべいだけですから」
「そうか」
デブか。まあいい。
これで使い果たしたな。無くすものはないから安心だ。
持っているから不安になるんだ。
それじゃあ、森のベンチで食うか。
おお、木の枝が丁度コップいなっている。
良平さんは、公園の水道の蛇口をひねって、水を汲んで、公園のベンチに座りました。
良平さんはようやく大福と、コロッケと、煎餅を食べました。おや、野菜がないの。
良平さんは、公園に生えているヨモギを摘んで、水で洗って、たべました。水を飲んで、
「うまいの、天国じゃ」
良平さんは、青空に向かって
「やっほー」
大声で叫んで、笑いました。
「いい人生じゃ」
良平さんは、しょうがないの、明日工場に行ってけちな会長と話すか。
「やっちゃたの」
とうとう、食事ができた。
会長のところはわし一人で行こう。
美人の秘書は、恐ろしい。
そもそも、何処の惑星の生物か分からん。
「良平さーん」
「おお、一反木綿」
「いい雪だよ」
「ああ」
「ゴミも拾った」
「ゴミ袋が必要なんだ」
「何を捨てる」
「わし」
「わしか」
「ああ」
「それは仕方ないな」
「ああ」
星空がきれいだ。虹がかかっている。
「本当か」
「ああ」
朝だ。
良平さんは、今日も一日が始まるな。
田らしい物語が生まれて来るな。
良平さんは、本棚から、モディリアーニの伝記の洋書を取り出しました。
もう20年ほど前に神保町の古書店棚で見つけて、ようやく会えたと思って買った一冊です。
英語とイタリア語で描かれた本です。私は20年かけて、まだ、2行目を読んでいるところです。
良平さんは、また諦めて、図版のページをめくりました。
カラーのページをめくって。モノクロページのデッサンを時間をかけて、見ていきました。
しなやかな線で枯れた女性の裸体が、ゆっくり話してくれました。
「良平さん」
「はい」
「おはよう」
「おはよう」
「朝食は」
「うん」
「りんごとミルクがいいわ」
「ああ」
「さあ、起きて」
「ああ」
ブルーの瞳の、桃青色をした、透けるような白い肌をした、少女がこちらを見ています。
良平さんは、昨日の残りの御煎餅の袋を手の平に口を向けてさすってみました。
ポトン。
一かけら音を立て掌に落ちて転がりました。
良平さんは、それを口に放り込んで、カップに水を少し入れて飲みました。
良平さんは、テーブルに座って、グランドのクヌギの樹が、黄色く色づいているのを眺めました。
「そうか」
これから行って、社長と話したら最低でも100円玉2枚は手に入る、りんごは無理でも、レモン一個ぐらいはいけるだろう。
いってみるか。
「そうね、良平さん、頑張って」
え、
良平さんは、本のページをめくって、
「まあ、そこそこ」
「今日は来てくれて、ありがとう」
「ああ、昨夜、とても信じられない星空が来たんだよ」
「まあ」
「窓から見えたかな」
「そうだね」
「いいな」
「今夜」
「いいの」
「うん」
「ね」
「そろそろ行くよ」
「はい」
工場への道は、急な坂を上って下っていく、住宅街のコンクリートのブロック塀を抜けたところにあります。今日もいい天気です青い空が広がっています。ブロック塀の上の広場の奥には神社があります。松の木が一本、寒々しい姿で、空に向かって立っています。
そこを抜けて歩いた坂の下の三差路の正目の突き当り、いかにも貧乏臭い場所に貧乏くさいトタンの壁と屋根でできた建物が会長の自宅兼工場でした。そこは花形の、自動車のボディーを打ちだす板金工場ですが何故か拾い集めたガラス瓶を手作業で一本ずつ洗う作業場が半分を占める貧乏くさい工場でした。火でもついて丸焼けになりそうな工場です。
良平さんは決心を固めて、建ても多い階にある事務所兼社長室に向かいました。錆びた鉄板の階段が、ミシミシと音を立てました。二階の鳥場に立って左を向くと、社長室と、時代遅れの院長体で書かれたプレートが目の位置にある上のほうに、安っぽい杉色の枠のある、凸凹の板ガラスが付いた、おばあさんのおしろいのようなドアに、金メッキとすぐ分かる、竜と虎のドアノブの下には、五寸釘浦井の、鍵を使っていそうな、鍵穴がありました。
蹴ったら簡単に外れそうなドアだな。
良平さんは、おもいっきり、蹴ってドアノブを引きました。
「誰だ、壊すな」
「おはようございます」
「オー良平さんか」
部屋の奥に置かれた古風な思い机に座って、パイプをくわえた、会長がいました。
「会長、全然合いません。足らないんです。なんせ腹は減るし、臭くて仕方ないのでコインランドリーで全部着ていた服を洗濯して、さらに銭湯に行かなければ生きていけないんです」
「おい、ここでは社長だ。ここの会長はわしが一番怖い家内だ」
「では、社長、100円玉二枚の価値は、もっと、美味しいものだと思いますが、社長はどうですか」
「いや、100円玉の価値はもっと苦いものじゃ、わしの若い時は朝の5時から夜中の2時まで汗まみれで働いて10円玉2枚だった」
「それは、時代が違いすぎます。夕べ新聞を読んだら最低賃金は1000円って書いてありましたよ」
「それは、大都会の話だ」
「ではどうしても、100円玉2枚なんですか」
「良平さん、今日は何をしに来たんだ」
「仕事です。仮病を使って休んでも、面白くないマン腹が減ったので」
「仮病で休んだのか」
「ええ昨日、丸一日仮病で休みました。デブの秘書を追い返して腹減っただけの最悪の一日でした」
「昨日そうだったのか」
「ええ」
「道理で今朝来てから便所が汚れていたから、秘書に注意するよう言おうと思っていたところだ」
「私が掃除したら、舐めても大丈夫な便所に変身しますよ」
「確かに、君の掃除した後は、申し分のないものだった」
「あたり前です」
「そうか、手を抜いたのでなくやってなかったんだな」
「ええ、手を抜く手もありますね」
「なら、10円玉一枚だ」
「では、帰ります」
「せっかくきたんだ、なにかやっていけ」
机の上に100円玉2枚ありました。
「それ、お昼前にもらえますか」
「いや夕方帰る時だ」
「では、帰ります」
「そうか」
「ええ」
「やっていけよ」
会長は、ポケットから100円玉を取りだして、一枚机の上に置きました。
「まほろば横丁はたいていつけがきくから」
「100円玉3間じゃあ、りんごが買えん」
「安売りのバナナはいいぞ」
「ケチ」
「後、7日辛抱したら500円玉一枚にするよ」
「たいくつだからな」
「じゃあ来いよ」
「仕方ないな」
「仕事hyって蹴れよ」
「掃除か」
「ああ」
「神輿の修理も頼む」
「また、増えた」
「支所krの約束だ」
「どうぞ」
「来たか、デブ」
「おい、こちらは私の家内で、会長で秘書だ」
「ヒェー。いい趣味しているな。部屋の北側に金メッキのフレームのガラス窓がありました。
道の向こうには、お身袋が並んで。ガラス瓶が積み上げられていました。勝手に拾ってきているな。東署の、松本さんに通報するぞ。
「ああ。ちょうどい」
「え」
「読んでお茶でお仕様と思っていたところだ」
「えー、警察にまで手を回しているのか」
「聞きづての、悪い」
「く、そー」
「臭いか、このたばこは、最高級の洋ものだ」
「会長、薬」
「ああ、5錠」
「ええ、血圧も」
「ジジイだな」
「そうなんですよ、良平さん」
「何故」
「といわれても」
「500円玉、一枚、即金で」
「祖俺は出禁、蹴れ」
「困っているんですよ」
「そうか、もっと困れ」
「けち」
「ああ」
「ドケチ」
「ああ」
「くれんとここを一歩も動かんぞ」
「そうか」
「まだか」
「松本です」
「おお、来たか」
「この、汚職デカ」
「何だ、汚物」
「わー、わしは糞か」
「ああ十分」
「なんてこった」
「わしとうとう糞になったか、便所掃除ばっかだからな」
「松本というの」
「はい」
「最低賃金言うのはいくらじゃ」
「はい、最新のテレビニュースによると1500円が検討されております」
「1500えんか」
「はい」
「100円玉15枚に違いないな」
「ええ」
「此処は、2枚だ」
「そういうこともあります」
「3枚にしたぞ」
「警察にうそをついたら、明らかに泥棒です」
「いえ、それは泥棒でなく、嘘つきです」
「あー泥棒だ、金庫が消えた」
「落ち着いて、私が、掃除で動かしたの」
「会社の会長か」
「それでは逮捕できません」
「ああ」
「松本いうの、出ていけ」
「会長、会社の社長、どうしましょう」
「せっかく来たので仕事をしていけ」
「はい」
「はいか」
「松本、綿足お仕事お邪魔をするな」
「逮捕します」
「わしか」
「ええ、立派な不法潜入、です」
「そもそもわしも呼ばれて来たんじゃ」
「今日もですか」
「いや、毎日来いというので面倒じゃがきてやったんじゃ」
「良平さん、100円玉5枚にするから、清掃を頼むよ」
「恥絵からそうすればアミコ塩修繕し終わっとるのに」
「ああ」
「しょうがない、朝めし前の日と仕事じゃ、松尾とご苦労」
「では」
「茶を飲んでいけ」
「はい」
「お昼、蕎麦でいいか」
「はい」
「あとでいくから」
「はい」
「13時でいいな」
「わしも」
「お前は働け、良平さん」
「けーち」
「あほう」
「バーカ」
「逮捕だ」
「松本お前を告訴するぞ」
「ああ」
「西署にだ」
「いいよ、署長はわかっているから」
「松本―」
良平遺産は泣きながら叫びました。
「良平さん、つかめ」
一反木綿が手を差し伸べてくれました。
良平さんが手をつかむとふわっと、とんでいきました。
「さらば」
良平さんはは、東の太陽い向かってむ、
「お早う、わしは自由じゃ」
叫びました。
「松本さーん、わしは捕まらんよ、うんちがおちそうじゃ」
「やめろー」
「我慢できん」
「公園の便所にいけ」
2024/11/30