明るい広場
「うちら、男子に見られてる。いやらしくない」
サトミは今日の昼休みに担任の山本と言い争いをしたのを思い出していた。
「そのだんしだれよ。わたし、きあいをいれてやるわ」
「いいけどめんどくさくない」
「まあそうだけど、由美この広場に来たの誰かに教えた」
「エスケープしたのにそんなのあるわけないでしょ」
広場のベンチに座って私は静かに女子中学生の会話を聞いていた。
「ここにいたら干からびますよ」
スケッチをしていた私は、手を止めておどろいてふりむいた。
「ここだったんですね、わたし以前この風景のスケッチをいただきました」
「あー失礼しました」
「おじさんたちうるさい」
「ごめんね、みんなで楽しそうね」
「お姉さん、ごめん私ちょっと、今日うまくいってないから」
「いいのよ。私声が大きいってよく言われるの」
「いいんだけど、わたしちょっと部活のことをどうしようかとおもって、それに最近ちょっと音がきこえずらいの」
「だいじょうぶよ、よく寝てよく運動すればきっとよくなるわ、思春期には、ときどきあるから」
広場の向こうから、大きな破壊音が聞こえた。
「あれ、事故」
「いそいでいってみよう」
女子中学生たちは、音のしたほうに走っていった。
「わたしもいってきます」
「おじさんはまっていてください」
「はい、一応巡査に連絡しておきます」
すぐにバイクの音がして巡査が来たようだ。
「お巡りさん、この人けがをしたみたいだからドアを開けて助けるよ」
女子学生は素早く行動をしていた。
さっき声をかけてくれた女性が走り寄って、
「わたし一応看護の仕事をしてるから、見せて、応急手当てするね」
「駐在さん、ちょくせつ病院にバイクではこんだらどうですか」
「本官はできないんです」
「今、消防にも連絡しておきました」
「おじさん、やるね。私ら変なおじさんと思って無視してたんだ」
「まあ、しかたないね」「これをあげよう」、さっき君たちをスケッチしたものだ」
「なるほど、だから視線がいやらしかったのよ。でもわたしらの記念に取っておくわ」
「ありがとう。君たち明るく頑張るといい神様が見つけてくれるよ」
「おじさん、いまなんていったっけ。メモしとくわ」
「本官もメモをしておきます。敬礼」
緑の梢がなびいていた。救急も来たみたいだ。サイレンは、いつ聞いてもあせってしまう。
わたしはこれに乗りたくないが。
この方は若いからきっと社会復帰するだろう。
「おじさん、わたしら帰るよ」
「よく頑張ったな、元気で」
「本官も処理を続けます、ああもう野次馬が」
「巡査さん、気を付けて」
「おじさんも気を付けてください」
事故を見るなんて、よくない神様が来たな。今日は一日音楽を聴いてゆっくり過ごそう。
やっぱりあまりかくれてスケッチはしないほうがいいな、やっぱりひとこえかけておくべきだった。いやらしいおじさんにみられたんだろうな。
この広場も少し緑がつかれてきた。もうすでに秋になっているんだな。女子学生も悩む季節だよな。
「こんな事故があったんですね。おじさんはだいじょうぶなんですか」
「ええ、さっきまで駐在さんががんばって処理してました。けがにんがひとり病院にはこばれましたが」
「あの車」
「こころあたりのあるかたですか、交番の駐在に聞いたら様子はわかると思います。知人の方の車ですか」
「ええ、今日約束したのに連絡ないまま1時間も待っていたんです」
「駐在を呼びますので落ち着いて待っていてください」
私は交番に連絡して駐在にすぐ来るよういったが、
「本官は昼のラーメンができたばかりなので、・・・・」
「そうですか塩ラーメンですか。うまそうですね。公園のベンチでたべるとうまいですよ」
「おじさん、電話で大丈夫ですよ」
「いいえ。こういうことはきてもらわないと」
「おじさん・・・・」
「お嬢さん、ところで待っている間お嬢さんをスケッチしていいですか」
「おじさん・・・・」
「あっすみません、できたらとおもったので、わすれてください。おしりあいのかたはたぶんだいじょうぶだとおもいますよ」
「あの、もしもし、ちょっとかわるから」
「事故があったみたいですけど、この車、私の彼のです。」
「えー、ラーメンどころではなかったすぐにまいります。本官大失態でした。すぐにまいります」
「わかりました。悪いので私がそちらに向かいます」
「待ってください本官すぐに向かいます」
わたしはなんて気の利かない男か。
「お嬢さん、座って落ち着いてください。いっしょに深呼吸しましょう」
「おじさん・・・・1.2.3.4」
「わたしはたまたまここにいたんです。お知り合いの方、女子中学生がすぐにかけつけてすくったんですよ」
「そうでしたか、運がよかったのね」
「遅くなりました。もうしわけありません、本官ここの駐在のもので事故の処理は本署に連絡しましたので」
「あっ、あごにネギと海苔」
「すっ、すみません」
「駐在さん、すみませんでした、たまたまこのお嬢さんが来たので急いで呼んでしまいました」
「ありがとうございました、本署の人間がもうすぐ来るので、本官はここにいなければならないんです」
「お仕事おつかれさまです。けが人がいて女学生が助けたので救急を呼びました」
「後は本官がやりますので」
「ユタカ君、だいじょうぶかな。両親に伝えとかなきゃ」
「それも本官の仕事ですので」
「おじょうさん、おちついてしっかりして。わるいことばかりではないはずだから」
「おじさん・・・・」
「本官に連絡いただき、ありがとうございました」」
「後でおいしいラーメンを。ちなみに私は海鮮ラーメンが好きですが」
やじうまたちは「これはここでスピードを出して自損事故をやってしまったんだ。恐ろしいことだ」と声をあげていました
「何か障害物があったのか。この道はとても安全な道なのに」と口々に驚いていた。
「本官、報告書に上げますので、市民の皆さんご安心ください」
「よくいった」
パチパチパチ。
「皆さん、わたしの彼がしくじったので、すみません」
「お嬢さん、大丈夫ですよ。明日はもっといい日が来ます」
野次馬は野次馬。
相手にしなくていいから。
「本官が守ります」
「ありがとうございます」
「今日はいい天気になった」わたしはつぶやいた。
「おじさんまだいたの。わたしらきめたよ」
「ほう、それはいいことじゃ」
「おどってあげる、おじさんの絵を見て決めたの」
「たくさんひとがいるが、平気か」
「おねえさんもみたいわ、わたし、いちおうダンサーよ」
「へー。やったー」
広場は急ににぎやかになった。
「お嬢さん病院に急いだほうがいいぞ」
「おじさん大丈夫、無事みたいだから、お巡りさんに連れて行ってもらうわ」
広場のやじうまは踊りにやんや、やんや。
「おじさん、わたしたちこれにしたの」
「わたしたちも、お見舞いに行きます」
「おねえさんは、もしかしてか彼女ですか」
「あなたたちは」
「このこたちが彼を助けたんだよ」
「そう、ありがとうございました。ダンスよかったわ、今度私も仲間に入れてね
「おねえさん、やったー」
やじうまも、バンザーイ。まるで、競技場みたいに大騒ぎになった。
わたしはようやくこれでお嬢さんはお見舞いにいけるなとおもうとあんしんした。
それにしてもきょうのわたしはへまをしたもんだ。このびじんのおねえさんにめいわくをかけた。これでわたしはこのじかんをおえよう。
「お嬢さん早く」
「あってそうだ。彼きょうはだめね。せっかくのプロポーズを受ける日だと思ったのに」
「おねえさんがんばって。楽しかった」
「ありがとう。きみたちすごくいいわよ」
「やったー」
「みんな元気で、おじょうさん。おめでとう。きっといいせいかつがはじまるよ」
わたしはそろそろかえろう。
「本官責任もっておおくりいたします」
「おまわりさんがんばって」
「てれるな。こんど学校にいくから、校長先生にお礼を言うよ。実はは本官も卒業生でね。嬉しいよ」
わたしはこれからも静かにこの広場のベンチにいようとおもった。
わたしは女学生が、まぶしくみえる。お嬢さん幸せに。
やっと穏やかな広場に戻ってきた。
2023/9/17