執筆の動機をジョン・ル・カレの「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」風に書くと、「かねがね背景をロシアに発する作品を書きたいと思い、今日までその実現にいちばん近づいたのが、『闇に向かって撃て』である」となるだろうか。
題名については、すでにお分かりだと思うが、「明日に向って撃て!」から。「明日」を「闇」に代えて、マフィアのみならず犯罪者、街のダーティな部分に果敢に挑んでいく様を表現できていると思う。
これは、さまざまなイメージを含んだ「ごった煮」の小説である。ミステリー、ロマンス、ピカレスク、相棒もの、警察小説・・・一章のある部分を読みながら、いろんな切り取り方が出来ると思う。しかし、この根底にあるのは、舞台となったサンクトペテルブルクであり、ロシアである。
私はロシアに行ったことも無いし、チェスを嗜んだことも無い。この小説は、そのほとんどが資料に基づく絵空事である。執筆当時は「放射能」を真相とした話を書くのに若干の抵抗があったりもしたが、今では「あの災害・事故」を忘れさせないことに少しは役立つのではないかと思ったりもしている。しかし、読者の皆様には作者の思いとは別に、何も思っても構わない。作者の思いは、ただのオマケでしかないからだ。
この長大な作品に最後まで付き合って下さった全ての皆様に、最大級の感謝と祝福を。