1
「お客さん、このへんですか」
天羽聖治は運転手の声で目覚め、眠気をこらえて薄目を開けた。現場の近くまで車で進入できるはずだったが、路地の入口に立入り禁止のロープが張られていたので、天羽は料金を支払ってタクシーから降りて、新宿区富久町の路地に立った。
刺すような冷気をはらんだ晩秋の雨が、強くなったり弱くなったりしていた。ここ数日、前線を頭の上に載せているような天気だ。昨日までの大雨で、ジャケットも替えのスラックスも全部濡らしてしまったので、今日はチノパンとセーターの上に黒のコートを着込んで、足元はスニーカーという恰好だった。妹のゆかりから「研究室にいる冴えない院生みたいよ」と笑われた。
天羽は傘を開いて走り出す。現場は、タクシーを降りた場所からさらに10メートルほど入った4階建てのアパートだった。
周囲は制服警官や腕章をつけた刑事たちがうろうろしていたが、誰も天羽の姿に気を留めなかった。公安総務課の庶務係である天羽の顔は、本庁はおろか、公安部内でも最も知られていない顔の一つだった。
303号室で、貫井悦士が独りで待っていた。ボタンを襟元まできっちりとめた濃紺のコート姿はその端正な顔立ちを合わせ、まるでファッション誌のモデルのようだった。上品に髪を整え、かすかにオーデコロンが香る。男盛りの40歳で、公安部参事官。階級は警視正。
「非番のところ、すまなかったな」
貫井が右手を差し出した。天羽は短く握り返し、無残に破壊された2DKの室内の様子に眼をみはった。
「ここで、いったい何が・・・?」
「犯人グループがサブマシンガンで掃射したんだ」貫井は手をひと振りした。「概略を説明しよう。まず目撃証言。証言者は205号室に住む64歳の女性。事件発生直前に、アパートの入口で階段に上がる男2、3人を見ている。年齢および人相特徴については不明」
天羽は慌てて手帳を開き、メモを取り始めた。
「住人は安斎英道と瑤子の夫妻。まぁ偽名だろう」
「偽名?」
「後で分かる」貫井は話を続けた。「この部屋を借り始めたのは2か月くらい前。英道は40歳前後で、歌舞伎町のクラブの従業員。そこで、通訳をしてる。瑤子は30歳ぐらいで、仕事はしてなかったようだ。昨夜、英道の帰宅が午前2時半ごろ。最初の銃声がその約10分後だから、犯人たちは英道の帰宅を待って襲撃したと思われる」
貫井は破壊された食器棚を指で示した。
「捜査員の見方では、男の1人が被害者の顔見知りを装ってドアを開けさせ、サブマシンガンで安斎瑤子を殺害した」
木屑や食器片に混じって、洋室の床に飛び散った血はすでに黒ずみ、床に死体の輪郭がチョークで示してある。ドアの近くで撃たれたとすると、安斎瑤子は2メートルほど背後へ吹き飛ばされたことになる。
「男ひとりがここで倒れてた」貫井はドアを入ってすぐ左のチョークの跡を示した。「腹に2発食らってる。使用した銃は見つかってないが、着ていたコートのポケットにはサブマシンガンの予備の弾倉がひとつ。手、顎、衣服からは硝煙反応がたっぷり。つまり、この男が瑤子を撃ったと見て間違いないだろう。この男を撃ったのは安斎英道。使用したのはグロック」
貫井は部屋の奥へ進み、洋室の隣にある和室に入った。
「安斎は男と応戦した後、そこの窓から飛び出した。その際、拳銃を地面に落としたようだ。下の路上でグロックが発見されてる。硝煙反応あり。英道の指紋も出ている」
東に面した窓ガラスはすべて砕け散っている。天羽は窓辺に寄り、路地を見下ろした。階下のベランダの手すりが壊れている。
「英道は運よく203号室のベランダに引っかかり、窓から部屋に侵入して、廊下へ逃げ出した。およそ8分後、現場近くに戻ってきたところを背中から1発。とどめに、眉間にもう1発」
2
貫井と天羽は303号室を出た。薄暗い廊下で、天羽はささやく声で聞いた。
「ぼくを呼んだ理由はなんです・・・?」
「捜査一課は面白くないだろうな」
「参事官がなぜ?」
天羽の問いには多少とも意味があった。殺人現場に、公安部参事官が部下を呼び出して、自ら事情説明に努めるなど前代未聞だ。何よりも天羽は2年前にある事件にからんで現場から退いており、かつての上司からの呼び出しに未だ戸惑っていた。
貫井は天羽の問いには答えず、薄暗い階段を降り始め、アパートの前の路地で含みのある回答をした。
「とりあえず初動捜査で成果を上げることが大事だ。捜査一課を経由したのでは、立ち遅れる可能性がある」
今こうして説明する時間も惜しいという口ぶりだった。細い路地へ出た。貫井がチョーク跡を示して、安斎英道の死体があった場所だと言った。死体の輪郭を記したチョークを隠すように、ヴァンが駐車してある。
天羽は後部座席へ貫井と一緒に乗り込むと、すでに黒いスーツ姿の男が2人乗っていた。貫井が空いていた公安一課の係員だと紹介した。馬面の若い男が大河原、髪の薄い男が藤岡と名乗った。
大河原が運転席と仕切っている壁を叩くと、ヴァンが動き出した。
「昔、安斎英道を取り調べたことがある」
貫井の唐突な言葉に、天羽は驚きながらそっと聞いた。
「いつですか?」
「公総で管理官だった頃に。今朝、解剖室で10年ぶりに再会した」
「人定は?」
「取調の時、奴は完默だったんだ。国選弁護士にも完默だったらしい。結局、4か月ぐらいで結審したはずだ」
「罪状は?」
「たしか公妨(公務執行妨害)。その時、現場の公安捜査員が1人、安斎との事件で顔をバラされて、前線に立てなくなった。だから、よく覚えてたんだ」
「安斎英道を殺害しようした男の素性は?」
「それを探るのが君の仕事だ。この事件の背景を明らかにさせろ」
窓を流れる景色は、閑静な住宅街から新宿御苑の緑地へ変わっていた。天羽はふと見知らぬ街に迷い込んだような錯覚を覚えた。貫井が座席の下から分厚い黒表紙のファイルを出して、天羽の膝の上に置いた。
「早朝、捜査一課の管理官から問い合わせがあった」貫井が言った。
捜査一課に十数名いる管理官のうち1名は、公安参事官と同じ警察庁キャリアが配属される。キャリア同士のつながりは地下水脈のように桜田門の中を渦巻いている。
貫井は天羽の膝の上のファイルを開いて、何枚か書類を取り出した。
「君の卒配は、麻生署だったな?」
「ええ」
「麻布署の生活安全課で、麻薬捜査を担当している武田紀介という警部補は?」
「いえ、知りません」
「問い合わせは、その武田が個人的に作成したファイルの内容に関するものだ。一課の管理官にファイルのコピーを1部つくるよう依頼して、さっきの現場で落ち合った」
天羽が今ながめている書類がそのコピーらしかった。住民票が2通。日本海新報の一面記事。『繁華街で銃撃 死者2名』とある。
「今回の事件とのつながりは不明だが、武田に会ってみる価値はある。私はこれから目白の屋敷を開けてくるから、君は武田を抑えてこい」
貫井は新宿2丁目の交差点でヴァンから降りると、地下鉄の通路へと消えて行った。
3
JR目白駅から西南へ徒歩で十数分の場所に、和洋折衷の古い屋敷がある。現職の参議院議員が、さる銀行頭取から格安の賃貸料金で借り受けている物件だった。午前10時半、敷地の傾斜を利用して地下に設けられた車庫に、1台のヴァンが滑り込んだ。
武田は大河原と藤岡に両脇を支えられてヴァンを降り、コンクリートの階段を上がって行った。3人の背後に、天羽が続いた。
広大な庭を望むリビングはパソコンやコピー機などが置かれ、雑然とした事務所のようだった。奥のダイニングに入ると、武田は大理石の大きなテーブルに座らされた。大河原と藤岡は立ったままだ。
天羽がテーブルの上に封筒とファイルを置くと、向かい側に腰を下ろした。
「何か飲みますか?」天羽が言った。
「いいえ」
「紹介する。公安部参事官の貫井警視正だ」
天羽が背後に手を向けると、武田はバネ仕掛けの玩具のようにパッと立ち上がり、貫井へ頭を下げた。貫井は返事の代わりに、片手をひょいと挙げてみせた。武田はおずおずと頷き、値踏みする視線をちらと天羽に投げて、椅子に尻を落とした。
「富久町で発生した殺人事件のことです」
天羽は手帳を開き、ICレコーダーのスイッチを押した。
「今朝の午前4時14分、牛込署から富久町の殺人現場にあなたの名刺が残されていた旨の電話を自宅で受けましたね」
「はい」
「あなたの名刺がなぜそこにあったのか、捜査員が説明を求めたそうですが、あなたはどんな返事を?」
「事情が混み入ってまして」
「分かるように」
武田は天羽の口調に苛立ちがないか、耳を澄ませるような眼差しになった。短い沈黙を置いて言った。
「一昨日の午後2時ごろ、安斎英道を麻薬捜査の協力者として獲得する目的で、303号室を訪問し、その際に妻の瑤子に名刺を渡したと捜査員に回答しました」
「あなたは安斎夫妻の情報を収集していたようですが」天羽が黒いビニール表紙のファイルを示す。「電話ではそのことに触れなかったのですか?」
「お互い様ですよ」武田は愛想笑いを天羽と貫井へ交互に投げた。「捜査一課に情報を隠されて歯ぎしりしたことは何度もあります。悪弊かもしれませんが、要するにカードを1枚ずつ切りながら、情報交換する。分かります?」
天羽は関心を示さず、早口で先へすすめた。
「あなたがそもそも安斎夫妻に関心を懐いた経緯は?」
「私の個人的な情報源から、安斎英道に関する情報が入りまして」
「情報源とは?」
「それはちょっと勘弁していただきたい」
天羽は穏やかな口調になった。
「記録は消します。名前と身元を」
「情報源として確保するプロセスに、差し障りのある点がいくつかありましてね」
ここで、貫井が口をはさんだ。
「私たちが盗聴法に違反しなかった日はない」
武田は小さな笑みをこぼした。
「でも、あなたには権力がある。私は無力な一警官です。自分の身は自分で守らないと」
「もっともな意見だ」
貫井はそう言うなり、指をパチンと鳴らした。大河原が背後から静かに武田に近寄ると、武田が「ひぃ」と叫んだと同時に椅子が倒れる音がし、武田の姿がテーブルの下に消えた。
武田がのろのろと立ち上がり、自分で椅子を起こした。苦痛にゆがんだ顔を手で半分隠して、憐憫を請う視線を天羽へちらと投げた。天羽は質問を再開した。
「情報源の名前は?」
「呉徳聖(ウー・ダーション)。百人町の天主教会の神父で、小児性愛者」
貫井が藤岡に「確認してこい」と命じたそばで、天羽はある疑問を口にした。
「あなたは麻薬担当でしょう」
「ジャンキーのモデルがいまして、男です。ご存じないと思います。安物のセーターなんかを着てチラシに載ってるのを見かけた程度ですから。その三流モデルは呉と同じ小児性愛者で、海外で一緒に子どもを買ったりする仲なんです。そのモデルを通じて、4年ほど前に呉を知りました。呉も大麻ぐらいは嗜むようで、新大久保や歌舞伎町にも近いものですから、売人の情報なんかもそこそこ入ってきます」
「なるほど、小児性愛で脅して呉を情報源にした。手法は私たちと同じだ」
何も問題は無いとでも言う鷹揚な口ぶりで、貫井が言った。
「それで、呉の情報とは何だ?」
4
「先月の中旬でした」
話している内に多少とも自信を回復したのか、武田はもったいぶった手つきで上着の内ポケットから手帳を出した。
「14日です。四谷で呉と一杯飲んだときに、信者の1人の旦那が殺しをやってるらしいという話が出ました。呉はまがりなりにも神父でして、信者の懺悔を聞いてます。瑤子は毎週、金曜日に教会に来ます。そこで、瑤子が英道の秘密を話したわけです」
天羽は黒表紙のファイルを開き、留めてある書類を外して、テーブルに並べた。
「懺悔があったのはいつです?」
「一杯飲んだ時点から、2週間ほど前です」
「内容は?」
「拳銃で人を撃って死なせたと。年月日、被害者、動機といった肝心な点は分かりません。場所は呉が推測するに、日本海側の都市のようです。それだけではどうにもならないので、年月日と殺しのあった地名を聞き出せと、呉に指示しました。呉が23日に、瑤子にそれとなく英道の話に触れると、瑤子は教会に現れなくなりました」
「女の本名は最後まで分からなかったですか?」
「ええ」
天羽はコピーされた住民票2通を指でつまんだ。
「呉の言動が瑤子に怪しまれたその日、あなたはアパートの賃貸主の事務所を訪れて、保管されていた安斎夫妻の住民票のコピーを取った。そうですね?」
武田はしぶしぶ頷いた。
「それで?」
「翌日、新宿区役所で確認したところ、住民票は偽造でした。安斎英道の過去に何かあるなと思い、英道の身辺を探ると、歌舞伎町のあるクラブで開かれる闇カジノの警備員として雇われてることが分かりました。クラブにしろカジノにしろ、麻薬を扱う輩が集まるところですから、英道は何かと興味深い情報を耳にするのではないかと」
「あなたが安斎英道に興味を持った経緯は分かりました。それで、英道の身辺調査は進みましたか?」
「いえ、まったく。本名、出身地ともに不明です」
「あなたのロッカーにあった資料のコピーがここにあります」天羽は指先で黒いファイルを軽く叩いた。「この記事について、説明してください」
「地方紙で拳銃による殺人を検索しました。条件は日本海に面した港町。とりあえず10年前から始めましたが、男が拳銃を撃って人を死なせた案件はそれだけでした」
天羽は3年前の新聞記事に眼を落とした。
日付は平成2×年4月9日。午後8時近く、新潟市中央区古町通のスナックで、飲食中だった3人の男が、30歳前後の男に銃撃された。男は2発を発射し、2発とも2人の男に命中し、その間に1人の男は現場から逃走。取り押さえようとした店員も撃ち、犯人の男は現場から逃走。撃たれた2人は救急車で市内の病院に搬送されたが、翌日に大量出血のために死亡。県警は男の行方を追っていると記事にある。
「続報は?」天羽が言った。
「ありませんでした」
「この事件について、安斎英道と話したことは?」
「一昨日、英道が働いているクラブに行きました。3年前、新潟駅前で起こった銃撃事件を知ってるかと聞きましたら、顔色を変えました。あの男は否定しましたが、間違いありません。その事件の犯人は安斎英道と名乗っていた男です」
5
天羽は新潟県警から送られてきた実況見分調書と殺害された2名の死体検案書、供述調書に眼を通した。犯人像を示唆するような文面は皆無だった。
「4日前、あなたは新潟県警に調書を請求。その後、新潟県警から問い合わせは無かったんですか?」
「ありました。その日の夜です」武田は上着から手帳を出して開いた。「午後8時半ごろ、継続捜査班の松山という男から。調書の請求理由についてでした」
「あなたは何と?」
「麻薬所持の容疑で捜索中の住所不詳、安斎英道が事件に関与していると」
「実際に麻薬所持容疑があったんですか?」
「いいえ。私が麻薬担当ですから、そう言えば説得力があると思いまして」
「住所不詳にしたのは?」
「簡単に手柄を奪われたくはないので」
「あなたの回答は?」
「今までお話ししたのと同様です。神父が安斎瑤子という信者の懺悔を受けて、夫の英道が拳銃で人を殺した。日本海に面した港町。それだけです」
天羽はテーブルの上の供述調書を示した。
「供述調書はこれだけですか?」
「松山に確認しました。まともなやつはその1通だけだそうで。その事件に関しては、公安の秘密主義に県警捜査一課が嫌気を差したとでも言いますか」
天羽は調書をざっと読み直した。供述日は事件から1か月以上も経過した5月26日。聴取を記録したのは、県警捜査一課の神田祥市警部補。供述者は森谷繁、県警公安課巡査部長。スナックの個室で飲食中に銃撃され、現場から逃げた男性客だった。森谷はこう述べている。
『事件当日、私は元衆議院議員の島村武彦氏、県議会議員の斉藤渉氏と古町通のスナックで飲食中に襲撃にあいました。3人で店に入ったのは午後7時半ごろです。最初、ホステスが接客していましたが、島村氏がすぐに席を外すよう頼みました。3人で何を話したかは職務上、話せません。襲撃した男の顔は見えませんでした。2人が狙われた理由はわかりません』
その場で、天羽は新潟県警本部に電話をかけた。いくつか部署をたらい回しにされ、ようやく神田が受話器に出たのは数十分後だった。神田はすでに継続捜査班から外れ、今は新潟市内の所轄にいるという。
「事件の前後で、何か気になったことはありませんでしたか?」天羽は言った。
「事件があったスナックで、島崎の接客をした中国人のホステスが消えてる。オーナーに無断でだ」
「そのホステスは、いつからその店で?」
神田の話によると、店に入ったのは事件の2か月前。ホステスは中国のパスポートを所持していたが、日本語は問題なかったという話だった。名前は楊瑞丹(ヤン・ルイタン)。
「ホステスには何か身体的特徴、特徴的な個癖、それから交流可能性のある人物はいませんか?」
「カトリックだという話があった。日曜の朝、必ず教会に通ってたそうだ」
天羽は神田の話を手早くメモにまとめ、神田に「ホステスを雇ったスナックについて、背景調査を」と依頼して電話を切ると、藤岡がリビングに戻ってきた。
藤岡が貫井の耳元に何かささやいた後、貫井が武田に言った。
「あなたはしばらく家に帰らないように」
「どうしてです?」武田が言った。
「あなたの情報源である呉神父に関して、教会から新宿署に失踪人届が出されてる。あなたの身に危険が及ぶ可能性が考えられる」
呆然とした武田をよそに、貫井は天羽を玄関に誘った。
「武田をどうしますか?」天羽は言った。
「上野にビジネスホテルを経営する知り合いがいる。そこに泊まってもらう。君は?」
「本庁の事件指導班に行きます。安斎のファイルがあるかもしれません」
「新潟の事件については?」
「当時、県警公安課にいた森谷繁、殺された元衆議院議員の島村武彦、県議会議員の斉藤渉の3名の背景調査が必要です」
貫井が不敵な笑みを浮かべた。
「安心したよ」
「えっ?」
「君がまだ現役だと分かってね」
6
天羽は目白の屋敷から警視庁に入ると、14階に居を構える公安部のオフィスで、事件指導班を訪ねた。ここは、所轄の公安係に事件や各種作業を指導するセクションだった。
「青柳キャップ。ちょっとご相談が」
「おお、アモッちゃんじゃないか。珍しいね、このシマに来るのは」
青柳勇次はあと3年で定年を迎える警部補だったが、公安部の中でも数少ない生き字引のような存在だった。
「実は参事官に呼ばれまして、新宿の件なんですが」
「あのヤマって、ウチが絡むようなややこしい筋があるの?」
「そうかも知れないんです。この写真を見てくれますか?」
天羽はそう言って、病院で撮影された安斎英道の顔写真を差し出した。最古参の青柳は写真を見るなり、何か考え込むような仕草を見せると、思わぬ話を口にし始めた。
「うーん、10年くらい前にウチがあった『向島一号』に似てるかなぁ」
「何ですか?『向島一号』というのは?」
「何だ、知らないのか?」
「僕はまだ学生でした」
「なら、仕方ないな。向島署で公安の私服警官が公妨(公務執行妨害)にあってね。現場で逮捕したんだが、こいつが完黙でさ。結局、『向島一号』で起訴され、結審したんだ」
貫井の証言との一致を確認しながら、天羽は言った。
「へぇ、それでどうなったんですか?」
「7年くらい前に刑期満了で出獄して、3年の間は公総が行確してたんだけど、結局、飛ばれたという話だったな」
「飛ばれた?」
「四課に行けば資料が残ってるんじゃない?気になるの?」
公安四課は、警視庁だけでなく全国の公安情報の集積地でもある。
「分かりました。ありがとうございます。四課に行ってみます」
天羽はその場で電話を入れ、四課に『向島一号』のデータ閲覧の申し入れをし、階段を上がって四課のある15階に向かった。庶務で身分確認を終えると、係官が立ち上がって天羽に頭を下げているのが分かった。
「どうも申し訳ありません。公総の天羽です」
「話は聞いております。ちょっと資料が膨大なものですから、こちらの閲覧室を用意しておきました」
天羽は指定された閲覧室に入った。中には1台のPCと、その横に厚さ10センチほどの捜査資料簿冊が十数冊積み重なっていた。PCの検索目次に、『向島一号』と打ち込むと、事案概要が表示された。
『被疑者は平成1×年6月3日午後2時43分ごろ、東京都墨田区立花7丁目の荒川河川敷において開催されていた極左ブント系集会を視察中の警視庁向島警察署警備課警察官Xに対して、Xが公務に従事する警察官であることを認識しながら、「犬」と一言告げるやXの顔面を1発殴打し、同人に全治1週間の負傷を負わせる傷害を与え、もっと同人の公務の執行を妨害したものである』
捜査記録を見ると、『向島一号』が当日のデモ集会の参加者であったかどうかは明らかになっていない。また当時現場に応援で派遣された機動隊員が被疑者を制圧し、現行犯逮捕した際にも、左翼の連中がこれを阻止しようとした形跡もない。現場では逮捕に素直に応じている。しかし、その後は完全黙秘を公判終了まで続け、黙秘は国選弁護士にさえ同様だったとなっている。
東京地裁は被告人に対して懲役3年を言い渡し、『向島一号』は平成1×年10月20日に栃木県の刑務所を出所している。入所中にも文書の受発はなく、最後まで氏名等は称さなかったという。出所時から、警視庁公安部公安総務課が視察を開始している。
『向島一号』は懲役刑で得た現金約30万円を持って東京に戻ると、その足で台東区の山谷にある簡易宿泊施設に入った。そこで1か月間、日雇いの仕事をしていたが、仕事仲間とはほとんど会話をしていない。2回ほど公衆電話から架電しているが、相手の特定には至っていない。
日雇いの仕事から1か月後、『向島一号』は「寺田正司」という偽名を使って、浅草にある北朝鮮系のパチンコ屋に住み込みで働くようになった。2年間そこで働いた後、韓国に出国し、その後の行方は不明。
天羽は必要な箇所をメモし、『向島一号』の指紋番号を確認して14階に戻った。
7
天羽は公安総務課で自分のデスクに座ると、人事二課に電話を入れた。『向島一号』が出所した後に行動確認を行った当時の公安総務課係員3名の現所属を確認するためだった。答えは1人がすでに定年で退官していたが、2人は所轄の課長代理になっているとのことだった。
警察電話帳でデスク番号を調べ、直接電話を掛けて確認したところ、1人は四部制の交替勤務で当日は非番だったが、もう1人は在籍していた。
「『向島一号』?ずいぶんと懐かしい話だなぁ」
「『向島一号』は半島に出てますが、そちらに縁故があるんでしょうか?」
「いや・・・これはおれの勘なんだが、奴さんは華僑やキョッポじゃないね。間違いなく日本人だよ」
「それには何か理由でも?」
「ああ。奴さんは必ず神社に行くんだ。それも、二拝二拍手一拝をきちんとやる。別に右翼という訳じゃないと思うが。それから、飯を食う時は手を合わせて『いただきます』とやる。向こうの連中は絶対にやらない。それと奴さんは毎月1日に必ず誰かに電話してた。それから数日のうちに郵便局の奴さんの口座に金が振り込まれる。振込人は特定できなかった。台湾の銀行から為替で送られてくるんだ」
「台湾ですか・・・」
「調べようがなかった」
「協力者がいるようですが」
「そうだ。奴さんが消息を経った時の口座には550万円もの残高があった。それを全て現金化してソウルへ飛んだ。それ以降、消息は分からない」
何とも不思議な事件だった。公務執行妨害罪の現行犯がどこの誰とも分からないまま実刑を受け、刑期満了から2年後、忽然と姿を消している。特に大した仕事をした訳でもないにも関わらず、550万もの資産を抱えていたことから、背後に何らかの組織が関与していることは自ずと感じられた。
「『向島一号』には何か身体的特徴、特徴的な個癖、それから交流可能性のある人物はいませんか?」
数十分後、天羽は歌舞伎町2丁目の風林会館の裏手に立っていた。8階建てのエンゼルクエストビルに入り、7階でエレベーターを降りると、まだ薄暗いホールに出た。1フロアに4軒の店があり、店の看板の1つに「クラブ牡丹江」とあった。安斎英道が通訳として雇われていたクラブだった。
「安斎っスかぁ?あいつは2か月前、求人誌の広告見たって言うんで来たんですよ。中国語も韓国語をイケるんで、ちょうどいいやってことで、その日から店に出しました」
クラブの奥にある狭い事務所で、店長代理が天羽に対して気だるそうに話した。
「言葉はどこで習ったと話していたの?」
「自分は脱北者で、本名は安なんとかって感じで、中国との国境沿いに住んでたことがあるから、どっちもイケるみたいなことを言ってました」
「何か、こう・・・癖みたいのは?」
「そうッスねぇ。右手の肘の裏側って言うんスか、そこをボリボリ掻くんですよ。やめろって言うと、子どもの頃に出来た傷があって、それが疼いてすぐ痒くなるんだって、何回言っても止めなかった」
天羽は確信を得たと思った。『向島一号』を行確していた係員と証言が一致する。
「友だちとかはいなかったの?」
「いなかったみたいッスけど」
「そう。どうもありがとう」
話を聞き終わった天羽は本庁鑑識課に連絡して、『向島一号』の逮捕時の指紋データと、富久町の殺害現場から採取された安斎英道の指紋の照合を依頼した。指紋照合は違ったとしても、掌紋で過去のデータと一致する可能性もある。その旨を貫井に報告すると、思いがけない話が飛びだしてきた。
「有明の十号地埠に、白の乗用車が沈んでいるのが見つかった。さっき上がってきた報告だと、中国人らしき男の遺体があるそうだ。呉徳聖かもしれないから、確認するんだ」
8
深川署の死体安置所で、天羽は呉徳聖の遺体を確認した。
手術台の上に横たわった遺体は鼻孔と口から白い泡沫液を溢れさせ、すでに体内の腐敗ガスの圧力で眼球が飛び出しかけていたが、生前の顔貌はかろうじて見分けられた。
「お探しの人物ですか」深川署の捜査員が声をかけた。
「ええ」天羽はうなづいた。「どういう状況で発見されたんですか?」
捜査員の話によると、某民放テレビ局の報道部が取材のためにたまたま有明4丁目の十号地埠頭西岩壁から潜水夫を潜らせていた時、海底に沈んでいる白の乗用車が見つかったということだった。
いったい自分はどうしたのか。富久町の現場。深川の水死体。ただ自動的に身体が動くだけで、何かしら立ち止まっている自分は。刹那、あの時と同じだと思った。天羽はぼんやりと2年前のことを思い返していた。
日本の民間団体が人権問題の国際セミナーを開催することになった。警視庁公安部内でこのセミナーが問題になったのは開催の5日前、警察庁が韓国の国家情報院からの通報で、北朝鮮から使節団が来日するという情報提供を受けたためだった。
当時、外事二課でアジア情報担当だった天羽は急きょ通訳として、セミナーに送り込まれることになった。通訳は偽装。日本滞在中の使節団の行動を逐一、監視することが任務だった。
成田空港のロビーで、天羽は北朝鮮の使節団3名を出迎えた。黒スーツ姿の男2人に両側を守られるような感じで、濃紺のジャケットとスカートを身につけた女性が言った。
「廖美范(リャオ・メイファン)です」
少し低めの艶のある声。なめらかな日本語だったが、外国人が話すアクセントが微妙に感じられた。天羽が驚いたことに、廖が使節団の団長だった。
セミナーの日程は3日間だった。その間、使節団はセミナーの会場である清正公前のホテルに宿泊し、東京見物にも行かず、部屋と会場を往復するだけだった。
使節団の人定では、参加者リストにあった名前は二課のデータベースになかった。来日時、成田空港で撮った顔写真を情報提供者に照合しても、ヒットはなかった。
上級官庁である警察庁への義理立てで監視を続けていたが、無駄な線を追っていると感じ始めたとたん、苛立ちや諦めが蔓延するのを感じ、2日目の夜に天羽はホテルのバーで1杯飲むことにした。
ホテルのバーで、天羽は監視対象の廖と一緒になり、たわいもない話を肴にスコッチを飲み交わし、真夜中の白金を散歩した。
数か月後、天羽は公安部が監視拠点に使っている都内の雑居ビルに呼び出され、二課の管理官から事情説明を求められた。
「廖美范について、何か知ってることがあれば全て話せ」
天羽には訳が分からず、「何の話ですか?」と答えた。
「廖が自分は正真正銘、平壌のスパイだと告白した。言ってる意味は分かるな?」
後でわかった話だが、廖は北朝鮮に帰国する途中、トランジットで中国に立ち寄った際、突如として姿を消した。3週間あまり経った頃、廖はマレーシアの日本大使館に現れ、韓国への亡命を申請したというのが真相だった。警察庁外事課が密かに行ったデブリで、廖は自分が朝鮮労働党の対外情報調査部の工作員であることを認め、日本の朝鮮総連に過去2年間赴任した際、ある任務を関わっていたことを告白した。
あの時、自分はどうかしていたのだろうかと思いながら、ホテルのバーでの一件を全て話すと、二課の管理官から「君には何らかの処分が下されるかもしれない」と低い声で告げられた。
自分はもう違う。こんな状態はもう最後だ。今から自分は元の天羽聖治だと、自分を叱咤し続けた。そうでなければ、ぼくは自分がもっと嫌いになる。
9
この日の夜、天羽は稲荷町の交差点でタクシーを降りた。
上野パレスホテルは、清州橋通りの近くの5階建てのビルだった。1フロアの客室数は5つ。貫井課長が経営者と知り合いらしく、たまたま空いていた4階の5部屋をすべて借り切ることができたのだという。
武田は403号室に入れられていた。部屋の前の廊下で、大河原がフロントから借りた椅子に座っていた。天羽の姿を見るなり、さっと立ち上がった。
「武田の様子は?」天羽が言った。
「気楽なもんです。競馬新聞を読んで、テレビを見るぐらいで」
「電話をかけたりは?」
「してません」
「藤岡は?」
「休憩中です」
天羽が部屋に入ると、武田はシングルベッドに横になっていた。ネクタイを緩め、靴下も脱ぎ、表情をくつろがせてコーヒーを口に運びながら、テレビを見ていた。天羽はリモコンを手に取ると、テレビの音量を上げた。武田が力ない視線を向ける。
「調書の請求理由を聞かれた際、継続捜査班の松山に、安斎瑤子の話はしたんですか?」
「男と同棲しているらしい、という程度に」
「男が中国系のカジノで働いてるとか」
「何も。神父が中国人だということは話しましたが」
「安斎瑤子の人相・特徴を教えたんじゃないですか?」
「30歳ぐらいの美人だと」
「住所は?」
「教えませんよ」武田は眉をひそめ、天羽の頭の悪さを指摘する口ぶりになった。「住所不定と書いちゃってますから。そうでしょう?」
「教会には信者の住所録があります。松山はその点を突いてこなかったんですか?」
「松山は何も聞きませんでした。そもそも、さして関心が無い様子で」
武田はタバコを吸いだした。うまそうに吐き出された煙の行方を、天羽はぼんやりと視線で追い、頭では思考に集中した。武田が新潟県警の松山に与えたのは、わずかな情報である。松山がさして関心を示さなかったのもうなづける。
しかし、その情報が漏れたとしたら。例えば松山と同じ時刻、同じ部屋に10人いたら、眼が20、耳が20、口が10ある。その10人からまた漏れていく。そして、どこかで反応があった。中国人の神父が、狙撃事件のあったスナックから失踪したカトリックの中国人ホステスと結びついた。とりもなおさず、狙撃事件の犯人へ。
「15日の夜に、松山からあなたの家に連絡があった。事件発生は19日。その4日間に松山、もしくは県警から再度の問い合わせは無かったんですか?」
「ありません」
天羽はふいに質問を出発点に戻した。
「昨夜、牛込署から名刺に関する問い合わせがあった時点で、なぜファイルの存在を報告しなかったんですか?」
「ですから」
「3人殺されたんだ」天羽は気持ちを奮い立たせて、低い声を出してさえぎった。「お互い様だとか、ゲームだとかという話はなしだ」
「3人?」武田は上体を持ち上げた。
「有明の十号地埠に、白の乗用車が沈んでいるのが見つかった。車の中から男性の遺体が見つかって、呉徳聖と確認された」
武田の視線が泳ぎ、しばし宙をさ迷った。
「もう一度、言います。昨夜、牛込署から名刺に関する問い合わせがあった時点で、なぜファイルの存在を報告しなかったんですか?」
「安斎夫妻が殺されたと聞いて、動揺してしまったのです」
「それなら分かります。素直に話して下さい」
「私たちの知らない何かが、起きたんですよ」
「安斎瑤子は、事件があったスナックのホステスだった。事件があった後、そのホステスは事件の犯人である男と一緒に姿を消して行方不明だったことになる。名前は変えたが、事件の犯人である男とそれを助けた女の住所を知ってた呉が殺されたことがどういう意味か、分かってるのか?」
武田の瞳孔が開き、その灰色がかった眼に脅えが走った。動揺を悟られまいとしてか、武田は顎を上げ、上体をそらして天井を見上げた。おそらく富久町の事件に関して、自分がどんな役割を果たしたのか、今でも正確には理解できていないのだろう。しかし、その役割を担った疑惑については、安斎夫妻の殺害を知った直後から抱いていたはずだ。
武田は耐え切れなかった。声が震えていた。
「報告が遅れたことを内密にしてもらえますか」
「人事考課には、ということですね」
「約束してください」
天羽は自分で訝りつつ言った。
「善処します」
10
「事件の2日前、電話がありました」
「誰から?」
「新潟県警からです。銃撃事件の継続捜査班に所属する主任で、夜の11時すぎに自宅の方へ電話が。安斎英道の情報の詳細を聞きたいということでした。松山に全部話した。あれ以上のことは知らないと答えました」
「相手は納得したんですか?」
「住所不詳とは、どういう意味かと食い下がりまして。結局、神父のタレ込みから洗いざらい喋らされました。しぶとくて、強引な奴なんですよ。明日にでも上京するから、その神父を紹介しろと」
首の後ろがふいに熱くなり、天羽は何という事だと胸の内で呻いた。
「会ったんですか?」
「翌日、つまり昨日の昼に」
「相手は1人ですか?」
「ええ。出張費は自腹だと言ってました」
「いつ、どこで会いました?」天羽の声が熱を帯びた。
「昨日の午前11時半に、宝町のセンターホテルのラウンジで。会う約束をした段階で、私の腹は決まってました。わざわざ出張してくるんではね。そこでまぁ、お互い警官ですから。午前中に情報源をいろいろ当たって突き止めたということにして、安斎英道が富久町のアパートに住んでると教えてやりました」
「別れた時刻は?」
「12時ちょっと前だったと思います。会ったのは10分程度です。私が約束より15分ほど遅れたので」
「相手の人相と特徴を」
天羽は質問しつつメモを取った。年齢は45歳から50歳。175センチぐらい。中肉。短い髪。脂っ気なし。刈り上げではない。特徴のない顔。黒っぽいビジネスコートにスーツ。ネクタイは地味。全体の印象は平凡な事務職ふう。若干の訛りがあるが、声は耳当たりがいい。おしゃべりという感じはない。ホテルのラウンジで注文したのは、アールグレイ。
「その主任の名前は?」
「高村紘一。巡査部・・・」
武田の頭部が砕けた窓ガラスとともに、唐突に弾け飛んだ。四肢を投げ出し、ベッドから床に倒れて動かなくなった。
天羽がその場に立ち尽くした瞬間、夜窓の深淵から赤黒い銃火がきらめく。弾かれたようにベッドの脇に飛び込むと、耳元に轟音が通り過ぎ、火がついたかと思う激痛と自分のものらしい叫び声の中になだれ込んだ。普段よりも不気味に鮮明な意識の中で、天羽はどこかで激しく頭を打った。ガシャンと何かが鳴り、大河原がドアを開けて入ってきた。
「どうしました?いったい何が・・・」
「あぶない!」
再び轟音が響き、大河原の額から鮮血が噴き出した。正体をなくした体が、床に崩れ落ちた。天羽は武田に眼を向ける。側頭部の下からじわじわ血だまりを広げている。廊下へ這いながら、どこを撃たれたのか冷静に考え、致命傷ではないと思った。
かなり離れたところから、靴音が聞こえる。何か怒鳴っている声も聞こえる。
廊下の壁によりかかって、震える手で上着から携帯電話を取り出す。天羽は桜田門に入庁してから初めて、110番の3つの数字ボタンを押した。瞬く間に、流れるように単調な女の声が「はい、110番」と応える。
「公安総務課の天羽です。上野で撃たれました」
「どうしましたか」通話を割り込んだ声は指揮台だった。「撃たれたと聞こえましたが」
「大丈夫です。今から病院へ行きます。関係各部署への連絡、よろしく頼みます」