1
ジョージは帝国の北部に広がるシビウ山脈にある集落の関門にさしかかっていた。
町の関門は花々で飾られたまま開かれており、その向こう側の沈黙がなにやら不穏である。音と言えば、昆虫の弱弱しい鳴き声、木を叩いているような奇妙な音、そして小さな鐘の響きしか聞こえてこない。また、関門にからみつかせた花々は萎れて久しい。
ジョージの両膝の間で、栗粕毛の2歳馬が大きく虚ろなくしゃみをして、横にぐらりと揺れた。1週間かけて、急峻な山道を歩いてきたためか、山の麓の農夫から譲り受けたグスタフという名のその馬は今や疲労困憊の状態にあった。
霧深く冷えた空気の下、ジョージは土にまみれたブーツと黒い聖職服という身なりで地面に立つと、グスタフの栗粕毛のもつれた首を撫で、時おりたてがみに絡まった指を引き抜き、その両眼に群れ集う小さな蠅を追い払った。
出来る限りグスタフに敬意を表しながら、ジョージは相変わらず町から聞こえてくる幻想的な鐘の音と木を叩く奇妙な音に耳を澄ませていた。しばらくして、放心状態で行っていたグスタフの手入れを止め、関門を思慮深く見つめた。
その関門は桃色の干乾しレンガ塀の間に立っていた。壁は道の左右に6メートルほど伸び、岩屑の間で途切れていた。向こう側に、これまで通っていった村と全く同じメイン・ストリートを望むことができる。宿場、酒場、商店、鍛冶屋、集会所、そして教会が並んでいる。人の気配は全く感じられない。
ジョージの脳裏に、数週間前の光景がよみがえった。ノスフェラトゥを退治したその日の深夜、教皇府の一室で、エドガー・ピジクス枢機卿が言った。
「北部の山岳地帯で、神隠しが起こったという報告があるのだが」
「神隠し、ですか?」
「そう。しかも、2か月前に陸軍の山岳猟兵連隊が集団失踪した場所に近い」
「300余名の山岳猟兵が、冬のシビウ山脈で行軍訓練中だったんでしたね。その日は快晴だったが、山の上には複数の奇妙な雲の塊が漂っていた。その雲はどれも形が似通っており、風に流されることもなく1か所に固まっていたという地元住民の証言があります。山の上へと行軍を続ける山岳猟兵連隊の将兵は次々に雲の中へと消えていき、やがて最後の1人も姿を消したという事件でしたね」
ピジクスがうなづいた。
「山岳地域を管轄するシビウ州政府が、教皇に嘆願書を提出した。それを受けて、教皇の命により、君をルゴシという村に派遣することにした。一刻も早い事態の解決を教皇は望んでおられる」
ジョージはグスタフを引いて、枯れた花々で飾られた関門を通り抜け、町のメイン・ストリートを下った。店先のポーチは、揺り椅子が列をなしているだけだった。酒場の前にある馬草棚には何もなく、窓は真っ暗である。扉のひとつは引き抜かれ、建物の端に立てかけてある。もう一方の扉は半開きになっていて、その霞んだ緑色の横木に海老茶色のものが飛び散っている。貸し馬屋の店先は無傷だが、その店の背後に建つ2階建ての納屋は黒焦げの骸骨と化している。
町の広場へと開けている通りの半ばに教会があった。両側は草深い植え込みになっている。片側は集会所、もう一方の側は小さな家屋との境になっている。雑草の茂った細長い植え込みには花があり、多くの花がまだ咲いていた。この町に何が起きて人けが無くなったのかは分からないが、それはせいぜい1週間か2週間の内に起きたと、ジョージは脳裏で考えた。
グスタフが再びくしゃみをして、弱弱しく頭を下げた。
ジョージは、幻想的な鐘の音源を見た。教会の扉の十字架の上に、長く浅い弧を描いて紐が垂れていた。その紐に、小さな銀の鐘がいくつも吊り下げられている。
「おーい!」
ジョージは通りの向かいにある宿場の表看板を見ながら叫んだ。
「誰かいませんか!」
返事はなく、何の動きもない。だが、明かりの消えた窓からそこに潜んでいる何かの視線を背中に感じる。敵意と脅えの混じった、凍るような不信の眼。ジョージは自分が監視されていると思った。うなじの産毛がこわだつ。
2
ジョージはグスタフを町の中央へ引っ張りながら、前進した。しばらく進むと、平屋の前で足を止めた。その保安官事務所は、教会と似た造りになっていた。石の礎に壁板が張られ、その板がいささか不気味なこげ茶色に染められている。
背後の鐘が、かすかに鳴った。
通りの真ん中にグスタフを立たせておき、ジョージは保安官事務所の階段を上がった。扉は閉まっていたが、鍵はかかっていない。扉を開けると、室内の冷気が一気に襲ってきた。首元の紫色のストーラをさらにきつく巻き、両手に白い息を吹きかける。
ジョージは冷気を啜りながら、室内に踏み込んだ。途端に、蠅の飛ぶ音が聞こえた。
誰もいない広い監房がひとつ。入口の格子扉は開き放しになっている。縫い目のほころびかけている汚らしい革靴が、造り付けのベッドの上に転がっていた。ベッドも海老茶色の乾いたシミがびっしり付着している。蠅は変色した染みの上を這い回っていた。
机の上に日誌があった。ジョージは日誌を自分の方へ向け、黒い表紙に浮出しになっている文字を読んだ。
『悪行および矯正処置の記録簿 ルゴシ』
これで、少なくとも目的地には着いたわけだと、ジョージは思った。どこか不吉な名前だ。しかし、このような状況下では、どんな名前でも不吉に感じただろうと、ジョージは考え直した。立ち去ろうとして振り向くと、木の閂でしっかりと閉じられた扉が奥に見えた。
ジョージはその扉の前に行き、しばらくして腰に吊るしてあるホルスターから、くすんだ黄金色の回転式拳銃を抜いた。一瞬立ちつくしたが、すぐに閂を引いた。扉を開くと、ジョージは拳銃を構えながら、素早く背後に退いた。
扉の向こうは、収納戸棚だった。
おそらく長期の囚人が着るものと思われる汚れたジャンパーが6着、2本の弓と矢筒、古くて埃を被ったライフル銃などが収められている。
ジョージは机に戻ると、記録簿を開き、パラパラとページをめくった。神隠しに関する出来事が記されていないかと期待したが、ここにそれを何ひとつも見出せなかったからといって驚きもしなかった。
記録簿に書かれていたのは、取るに足らない犯罪ばかりだったが、わずかに重罪もあった。殺人、放火、強姦である。殺人者は絞首刑に処せられるために、マラムレシュに移動させられていた。
エメリア帝国北部を管轄するシビウ州の州都マラムレシュに着いたのは、ピジクス枢機卿の命を受けて首都エリアスバーグを発ってから、5日後だった。駅舎の前で行きつ戻りつし、長旅にこたえた腰に手をやって、ジョージは痛みに呻いた。
ホテルのカフェで腹ごしらえをすると、ジョージは3人の農夫がコーヒーを飲んでいるテーブルに近づいた。聖職服を着たジョージに、農夫たちは「神が共にあらんことを」と会釈した。ジョージがルゴシ村への行き方を訊ねると、1人が怪訝そうな顔をした。
「ルゴシ、ですかい?あんな辺鄙な村に?」
「最近、神隠しにあったという話を聞いて」
2人目が「あの辺じゃ、何が起こっても不思議じゃねぇな」と呟くと、3人目が「んだな」とうなづき、コーヒーの入ったカップに眼を落とす。
「なぜ?」ジョージが言った。
「だって、あの村の近くには『串刺し王』の居城があったんですぜ」
エメリア帝国の歴史において、『暗黒の中世』と呼ばれる時代があった。当時、北部のシビウ地方を治めた君主のラヨーシュⅢ世は敵国のみならず、自国の貴族や民をも粛清し、裏切り者への見せしめに串刺しにして処刑した。また、命を永らえるため処刑した人間の生き血を啜ったとも伝えられ、『串刺し王』との異名を持つ残虐な君主だった。
『串刺し王』の陰湿なイメージに、ジョージは部屋の気温がさらに低くなったように思えた。記録簿の最後の方に、覚書があった。
「洞穴より《灰色の民》が送られる」
ジョージには何のことか皆目わからなかった。
3
ジョージは冷気と弱弱しい鐘の音の中へ出た。グスタフが物憂げにジョージを見ると、道の土の中に何か食えるものがあるとでもいうように、再び頭を下げた。
手綱を取ると、ジョージは銃を手にしたまま、通りを歩き続けた。進むにつれて、木を打ちつける音が大きくなっていく。町の広場に近づくと、ジョージはついに動くものを眼にした。
広場の向こう側に、見たところセコイアで作られた家畜用の水桶があり、その上に錆びついた鋼のパイプが乾いた状態で突き出ている。水桶の片側にだらりと半分ほど外向きに垂れ下がっているのは、褪せた黒いパンツに包まれ、よく噛まれたブーツで終わっている脚だった。
ブーツを噛んでいるのは、濃い灰色の大きなオオカミだった。オオカミはブーツに喰らいつき、それを前後に振っている。時おり、踵が水桶の木製の部分に当たって虚ろなノック音を出している。ジョージはようやく木のノック音がする理由が分かった。
グスタフがまた虚ろな疲れたくしゃみをし、そしてオオカミがそれに反応してよろめいた時、ジョージはオオカミの片方の前脚が骨折してあらぬ方向に曲がって治癒していたことに気づいた。胸の部分が薄汚れた白い毛の斑になっており、黒い毛が大雑把な十字架をかたどっている。
オオカミは歯を剥き出しながら、せせら笑うように上唇をめくりあげた。
「さっさと逃げるんだ」ジョージは言った。
オオカミは自分が齧っていたブーツに後ろ足が押しつけられるまで退いた。ジョージが再び逃げるよう促したが、一向に動こうとしない。
ジョージは銃から弾丸を抜くと、オオカミのまっとうな方の前脚近くの地面に空砲を撃った。射撃音が冷気の中に炸裂し、一時的に虫の鳴き声が止んだ。
オオカミは千鳥足で広場の奥に引っくり返っているトラックのそばに止まり、ちらりとこちらを振り返ると、絶望的な吠え声を上げ、ジョージのうなじの毛をさらに逆立てた。それからオオカミは前を向いて、転覆したトラックの周囲をめぐってから、足をひきずって2軒の馬屋の間の路地に入っていった。その道は町の裏門へと通じているのだろうと、ジョージは推測した。
疲れ果てているグスタフを引きながら、ジョージは広場を横切ってセコイア製の水桶に向かい、その中を覗きこんだ。
齧られたブーツの持ち主は、成長途上にある少年だった。その眼球は今や単なる白濁した玉と化し、さながら彫像の眼のように、あらぬ方向を凝視していた。桶に溜まった水のせいで、髪は老人の白髪のように見えたが、おそらく亜麻色の髪だろう。服装からして、牧童のようだ。首の周りに水中できらめいている、黄金色の何かがあった。
ジョージはある種の義務感を覚えて、銃を腰のホルスターに戻した。水の中に手を伸ばし、少年の両脇を抱えると、水を含んでかなり重量が増した体を地面に横たえる。目立った外傷や、服装に乱れはなかった。鼻に手をかざすが、息をしている感じはない。ジョージは少年の首からシャツの胸元に伸びた黄金色の鎖をたぐり寄せる。雫を垂らした鎖の先に、小さなメダルがぶら下がっていた。純金のようだ。
幼児を抱いた髭の男が刻まれ、2人はともに光輪をつけた絵。聖ヨセフのお守り。ふとジョージは南のアファル大陸に広がる赤茶けた大地を思い出す。裏を返すと、次のような銘が彫られている。
『エミール 家族に愛されし者 神に愛でられし者』
ジョージがこのような状況における神父としての義務と、町から出たいという募りゆく欲求を秤にかけた。考えあぐねている内に、ついにグスタフが死んだ。
4
グスタフは引き具をきしらせ、今わの際の嘶きを上げながら、大地に倒れた。その音にジョージが振り向くと、通りに8人の人影があり、こちらに一列になって歩いて来るのが眼に入った。彼らは蝋を引いたような灰色の皮膚をしていた。そのような皮膚をしている輩は、退魔師の言うところ「悪魔に触れた」連中だった。《灰色の民》は背中を丸めた緩慢な足取りでやってくる。
見たところ、《灰色の民》が手にしているのは棒だ。ほとんどは椅子やテーブルの脚だったが、そうでないものが1本あった。その棒からは何本もの錆びた釘が棘のように突き出している。おそらく、かつては酒場の用心棒の小道具だった代物だろう。
ジョージは銃弾を込め、列の中央にいる相手を狙いながら銃を構えた。いまや、奴らの脚を引きずって歩く音と鼻をぐずつかせた息づかいが聞こえる。まるで、肺炎にかかっているかのようだ。
そのとき、ジョージが見つめていると、列の端にいた溶けた蝋燭のような顔をした生き物が崩れるように倒れた。そいつは両膝を折り、悪魔じみた叫び声を上げ、隣を歩いている瘤だらけの禿げ頭で首にいくつもの裂傷をつけた生き物を手探りした。
「そこから動くな!」ジョージは叫んだ。「おとなしく『審判の日』を待ってればよかったものを、久々に現世の空気を吸ったからって浮かれて動き出すなら・・・」
ジョージは列の中央にいる奴に話しかけた。そいつはボロボロのシャツに年代ものの赤いサスペンダーをして、薄汚れた山高帽を被っている。片目しかなかったが、その眼は橙がかった赤い色で、貪欲にジョージを凝視している。
ジョージは銃のトリガーを引いた。山高帽の足先に銃弾が突き刺さり、土埃が舞う。
《灰色の民》は歩みを止め、鈍く曇って飢えた眼差しでジョージを見つめていた。ルゴシの神隠しの原因はこいつらの仕業なのか。そんなことは信じがたがったが、ジョージは奴らなら人肉を喰らうことに何の躊躇いも見せないだろうと思った。
無意識のうちにジョージは、傍で横たわっている少年から取った聖ヨセフのメダルを壊れた鎖と一緒に自分のズボンのポケットに突っ込んだ。
奴らは背後に自分たちの奇妙に歪んだ影を引きずりながら、ジョージを凝視している。ともあれ、奴らを射程距離に保っておくのが最善だと、ジョージは思った。
「じっとしているんだ」ジョージは後退しながら言った。「最初に動いた奴は・・・」
言い終えないうちに、ヒキガエルのように幾重にも弛んだ贅肉を付けた奴が訳の分からぬことを口走りながら前に進み出た。笑ったのかもしれない。ピアノの脚のように見える棒を振り回した。
ジョージは奴の胸元を撃った。風穴が開いた奴の胸から、青白い炎が上がった。振り回していた棒を落とすと、奴は両手で胸を引っかきながら、バランスを取ろうとして数歩しりぞいた。青白い炎が全身に広がると、奴は奇妙な呻き声を喉から発しながら転倒した。皮膚から白い蒸気が渦巻き状に立ちのぼり始め、急速に灰色が褪せていったと思うと、その体はうず高い灰の山に変貌していた。
ジョージは他の奴を眺め渡した。
「さあ、他にルシフェルの下に返してほしい奴はいるか?」
《灰色の民》はジョージを見つめたまま、近づこうとせず、ただ立っているだけだった。慎重にジョージは後退し、セコイア製の水桶を回って自分と敵の間の防御壁とした。
山高帽が前に進み出る。ジョージは列の他の者がそいつの後に従うような真似はさせなかった。山高帽の足先数センチの地面に、銃弾を撃ち込んだ。
「これが最後の警告だ」ジョージは言った。相手が理解しているかどうか分からなかったが、ただならぬ口調で威圧した。
「灰は灰に、塵は塵に還るのがこの世の常だ。経緯はどうあれ、その理を外れてしまったものは、還してやるしか・・・」
5
ジョージの背後で荒々しい叫び声が上がった。広場の奥で転覆したトラックから影が伸びるのを、ジョージは眼にした。即座に、そのトラックの下に灰色の化け物の1匹が潜んでいたことに気づいた。
振り向きざま、右肩に棍棒の一撃をくらい、右腕が手首の辺りまで痺れた。ジョージは銃を構えて1発放ったが、銃弾はトラックの車輪のひとつに消えて、タイヤから空気の抜ける音がした。その背後では通りにいる《灰色の民》が前進しながら、耳障りな雄叫びを上げている。
転覆したトラックの下に隠れていた奴は、首から2つの頭を生やした化け物だった。もう一度、棍棒を振るおうとして、そいつの分厚い唇が2つともニヤリと開いた。
ジョージは素早く銃を左手に持ち替え、相手のニヤけた顔に銃弾を撃ち込んだ。すると相手は黒い液体をまき散らし、弛緩した指から棍棒を放り投げながら、後方へ吹き飛んだ。そのとき、他の者どもが棍棒を振り回し、打ち降ろしながら、ジョージに襲いかかった。
最初の何本かの棍棒の襲撃をくぐり抜けたとき、ジョージは一瞬、考えた。転覆したトラックの後方へ転がり込み、態勢を立て直して応戦しよう。
しかし、山高帽が振るった棍棒の強烈な一撃がジョージをとらえた。ジョージは突き飛ばされ、背中がトラックの後輪に激突した。地面に四つん這いになって、雨霰と振るわれる棍棒を避けるために振り向きながら這い進もうとしたとき、ジョージは今や敵が半ダースどころではないことに気づいた。少なくとも30人の《灰色の民》が町の広場に向かって通りをやってくる。
赤いベストを着た奴は女のようだ。薄汚いベストの下でむき出しの乳房が揺れていた。それが、ジョージがはっきりと眼にした最後の光景だった。たちまち灰色の民が群がり、棍棒を激しく振るった。棍棒に打ち付けられていた釘がジョージの右のふくらはぎに打ち降ろされ、その錆びた牙が深々と肉に突き刺さった。
ジョージは今一度、銃を構えようとしたが、銃は殴打されて地面の上に転がった。
奴らの臭いを嗅ぐことができた。傷んだ肉の腐った臭い。あるいは、弱弱しい無駄なあがきとして、自分の頭部を守るために上げた両手の匂いだったのか。少年の皮膚の小片が浮いている水につけた、自分の両手の匂いか。
身体じゅうに、棍棒が打ち降ろされる。まるで、《灰色の民》は単にジョージを打ち殺そうとしているのではなく、奴らの身体がそうであるように、ジョージの肉を叩いて柔らかくしようとしているようだ。
漠然とこれが死なのかと思われる闇の中に下っていくとき、ジョージは虫の鳴き声と逃してやったオオカミの吠え声、そして教会の扉に吊り下げられていた鐘の音を聞いた。それらの音はひとつに溶け合って奇妙にも甘い音楽を奏でていた。やがて、それもまた消えた。
闇が喰い尽くしたのである。