しかし、この問題に関しては、今日最も困難な試練に直面している先進国が、この50年間、社会として最もうまく機能してきた日本である。
終身雇用制のもとでは、個々の人間をマネジメントするのは明らかに組織の方である。個々の人間は動かないことを前提としている。
私は、日本が、終身雇用制によって実現してきた社会的な安定、コミュニティ、調和を維持しつつ、かつ、知識労働と知識労働者に必要な移動の自由を実現することを願っている。(p233)
「この問題」とは、働く人が組織より長命になって、知識労働者が移動する存在になったという問題です。
日本は終身雇用制(lifetime employment)によって、自分で人生設計をせずとも社会、組織が面倒を見てくれる(マネジメントする)ような環境を作り、仕事に集中させて、成果を挙げてきました。もちろんそこには、列島改造だったり、人口増加だったりという追い風の影響も大きかったと思います。
派遣労働者、パートタイム労働者、非正規雇用者など、かつては少数だった働き方が徐々に増えてきている現在、ドラッカーが願っていた「労働者は移動するが、社会、コミュニティが安定し調和がとれている」状態になるように、それぞれの働く人、組織、会社が考え、行動することが求められています。
私たちは「日本の解決が、他の国のモデルになるのだから、頑張りなさい」とドラッカーに応援されているのです。
The developed society that faces the greatest challenge and will have to make the most difficult changes is the society that has been most successful in the last fifty years: Japan.
In lifetime employment it is the organization that manages the individual. And it does so, of course, on the assumption that the individual has no choice.
I very much hope that Japan will find a solution that preserves the social stability, the community—and the social harmony—that lifetime employment provided, and yet creates the mobility that knowledge work and knowledge workers must have.
2014/9/17