今日の世界的な規模の構造変化と乱気流の時代にあって、経営戦略の前提とすべきもう一つの新しい現実が、政治の論理との乖離の増大である。
経済活動にとっては、国は障害であって、コスト・センターにすぎない。企業はもちろん、その他の組織にとっても、もはや国民経済や国家に視野を限定することはできない。
しかるに、政治的な国境はなくならない。EU、NAFTA、南米のメルコスールなどの地域経済共同体の成立が、国境の意味を減ずることはとうてい考えられない。国境を超越することはさらにありえない。(p72)
国がコストセンターにすぎないというのは第1章で論じられたとおりです。
国が企業やその他の組織の成長の足かせになっているからといって、国内企業の成長のために国は自らを解体するなどということはちょっと考えられません。そうすると、企業の論理と政治の論理は離れていく一方だということになります。
また、同じセクションでドラッカーは、第1次大戦が始まって以降、世界の趨勢は国家の分裂に向かっており、とくに1950年以降は小国でさえ自立できるようになってきたためにミニ国家が次々と成立していると分析しています。
政治的な国境がなくなるということは国が合併するということを意味しており、東西ドイツの統一の例はありますが、それよりも分離独立して国が生まれるほうが数が多く、ドラッカーのいう国家の分裂が趨勢だと言うのは正しいと思います。
The final fundamental on which to base strategy in the period of worldwide structural change and uncertainty is the growing incongruence between economic reality and political reality.
National boundaries are impediments and cost centers. Business—and increasingly many other institutions as well—can no longer define their scope in terms of national economies and national boundaries.
But at the same time, political boundaries are not going to go away. In fact, it is doubtful that even the new regional economic units, the European Economic Community, the North American Free Trade Zone (NAFTA) or Mercosur, the proposed economic community in South America, will actually weaken political boundaries, let alone overcome them.
2014/7/4