私はこれまで、「世界史」を生み出したものは日本の明治維新だったと繰り返し言ってきた。それまでの世界史は、西洋の歴史、特にその覇権の歴史だった。そして、今日の「世界経済」を生み出したものが、最近における経済大国としての日本の興隆だった。
日本は、自らの伝統の上に立って、近代社会と近代経済に必要な制度と政策を作り上げた。終身雇用であり、系列であり、輸出振興だった。混乱を避けるための産業と金融の保護だった。日本は戦後50年の間にこれらのものをすべて生み出した。
しかるに、今日の転換期にあって袋小路に入った日本の制度や政策が、まさにそれらのものである。高齢化や少子化をはじめ、本書で取り上げた新しい現実のすべてが、それら日本の制度と政策に疑問を投げかけている。
親日家でもあったドラッカーは、何度も日本を訪れ、日本画にも相当造詣が深かったそうです。明治維新についてはいくつもの著書で取り上げています。
本書では日本版向けに上記のような前書を付け加えてくれました。
直面している課題を解決していってほしい、今後の日本に対して期待することとして、次のように述べています。
「私は、日本が今日の問題に独自の解決策を見出し、近代的ではあっても西洋的ではない日本として、この転換期を乗り越え、再起することを期待している。21世紀の日本が、あの日本に特有の社会的な調和、「和」を発展させていくことを願う。」
これからも日本人として生きていく者として、この期待に応え続けていかなければならないと思います。
この記述から5年後の2004年に日本に向けて書かれているメッセージがアマゾンに載っていたので紹介します。
今日の教育ある日本の若者は、これまでよりもはるかに激しい競争環境、昭和の日本よりむしろ明治の日本によく似た環境で生きていくことになるのである。そのような時代は安定せず、とりわけ雇用の安定性は低い。特に経営者やマネジャーの雇用の安定性は極めて低い時代である。
しかし、このような変化をチャンスに変えることは、1000年前の平安時代から日本に特有の能力であった。
2010年と2020年の日本は、生産性の高い「知識労働」と「知識労働者」を育てなければならない。主要な輸出国であり続けるために、日本は国内市場を開放し、外国製品との競争にさらす必要がある。
2014/5/28