まもなく、コーポレート・ガバナンスについては、もう一つ新しい波がやってくる。
すなわち、法的な所有者の利益とともに、知識労働者すなわち組織に富の創出能力を与える存在としての人的資源の利益の観点から、雇用主として組織とその経営を見直さなければならなくなる。
なぜならば、企業、さらにはあらゆる種類の組織にとって、自らの存在は、知識労働者の生産性によって左右されるようになるからである。まさに、最高の知識労働者を惹きつけ、とどめる能力こそ、最も基礎的な生存の条件となる。(p188)
ナレッジワーカーは生産手段を所有しているためマニュアルワーカーよりも流動性が高いという話と重複する記述です。
従業員の多くがマニュアルワーカーであった時は、仕事の目的はすでに決まっていて、組織が生産手段を用意し、マニュアルのとおり仕事をさせるという方法でマネジメントしており、人は代わりがいくらでもいるという管理でも良かったわけです。
しかし、ナレッジワーカーの管理はそれと同じでは済まなくなる、上意下達の指揮命令で組織を統治するのではなく、ワーカー一人ひとりの能力を企業の成果にいかに結びつけるかを考え、環境を整えることが必要になっているというわけです。
組織で働く人たちの多くがマニュアルワークとナレッジワークの両方を担当するテクノロジストであるという話と結びつけて考えると、ますます複雑になっています。
本章の最後には、「これらの問題は、私の能力を越えることはもちろん、本書の領域をも越える」という記述があり、ドラッカーでさえ答えを見つけるのを諦めたようです。
Within a fairly short period of time, we will face the problem of the governance of corporations again.
We will have to redefine the purpose of the employing organization and of its management as both, satisfying the legal owners, such as shareholders,, and satisfying the owners of the human capital that gives the organization its wealth-producing power, that is, satisfying the knowledge workers.
For increasingly the ability of organizations—and not only of businesses—to survive will come to depend on their “comparative advantage” in making the knowledge worker productive. And the ability to attract and hold the best of the knowledge workers is the first and most fundamental precondition.
2014/8/29