これからは、ますます多くの人たち、とくに高年まで生きることが確実と思われる人たちにとって老後の保証は、自らの投資に対する見返り、すなわち企業の所有者としての所得に依存することになる。したがって、株主にとって利益につながる形での業績の重要性が減ずることはない。しかし彼らは配当にせよ株価にせよ、短期的な利得は必要としない。問題は20年後、30年後の利得である。
これに加えあらゆる組織にとって、知識労働者としての従業員のニーズを満足させることが必要となる。少なくとも彼らを惹きつけ、とどめ、生産的な存在とするために、彼らのニーズを重視することが不可欠となる。(p68)
従来は、ステークホルダー(顧客、取引先、従業員、株主)間のバランスある利益のために経営すべきと考えられており、最近ではこのバランスが株主に傾いてきているという分析をしたのが前のセクションでした。
これに対し、これからは時間的なバランスが必要になる、すなわち短期的な利益と長期的繁栄のバランスを図ることがより重要になるという予測です。
日本においては、「損して得とれ」「三方良しの経営」などという言葉があるように、昔から長期と短期のバランスをとろうとして経営してきた土壌があるように思います。
もう一つの「知識労働者である従業員のニーズ」については、まだまだ工夫する余地があるでしょう。「ブラック企業」という言葉をよく聞くようになりましたが、働いている人を大切にしない態度を象徴的に表現した言葉だと思います。
もっとも、人が成長するのは、辛い・苦しい時間を経てそれを克服する自らの努力によることが大きいので、辛い時間から逃げ出したり、その環境を批判する姿勢でいたのでは成長の機会を逃しているという見方もできます。
とはいえ、長期的繁栄を目指す企業であれば、知識労働者からその強みを引き出し、やる気を持って働く環境を維持することを、組織の仕事としておこなうべきだということだと思います。
The future economic security of more and more people—that is, of the people who can expect to live into old age—is increasingly dependent on their economic investments—that is, on their income as owners. The emphasis on performance as that which most benefits the shareholders will therefore not go away. Immediate gains, whether in earnings or in share price, are, however, not what they need. They need economic returns twenty or thirty years hence.
But at the same time businesses will increasingly have to satisfy the interests of their knowledge work employees—or at least put these interests high enough to attract and to hold the knowledge workers they need, and to make them productive.
2014/7/1