マネジメントの理論では、現在でも企業とそのマネジメントが対象とすべきは、国境によって仕切られた国内経済であると前提している。昔ながらの多国籍企業の考え方がこれだった。
第一次大戦以前においても、金融サービスをはじめとする経済活動は、今日とほとんど同じように国際的に行われていた。
第一次大戦中、イタリアの軍用自動車は、トリノのフィアットが生産していた。同じようにオーストリア=ハンガリー帝国の軍用自動車は、ウィーンのフィアットが生産していた。このオーストリア=ハンガリー帝国とイタリアが敵になったとき、オーストリア・フィアットが行わなければならなかったことは、銀行口座の変更だけだった。
今日では、自動車工業にせよ保険業にせよ、そのような経営をしている企業はほとんどない。(p39)
ここでドラッカーが言う多国籍企業とは、資本関係があり企業の名前こそ共有しているが、それぞれの国内で独立して運営されており、市場もそれぞれの国に限定されているような組織形態を指しています。上記のフィアット・オーストリアは、フィアット・イタリアの子会社でしたが、部品調達から生産、販売まで国内でクローズしていたので、戦争によって親会社の支援を受けられなくとも、経営は継続できたという話です。
ドラッカーは本セクションで、現在のグローバル企業としてGMのヨーロッパ子会社の事例を挙げています。
設計、生産、販売をヨーロッパ各地で行っており、販売先は南米やアジアに及んでいるそうです。成果に向けての活動一つひとつが、国境を軽々と越えていると言えるでしょう。
It is still generally assumed in the discipline of management that the domestic economy, as defined by national boundaries, is the ecology of enterprise and management. This assumption underlies the traditional “multinational.”
As is well known, before WWI, as large a share of the world’s production of manufactured goods and of financial services was multinational as it is now.
The largest supplier of war materiel to the Italian Army during WWI was a young but rapidly growing company called Fiat in Turin. The largest supplier of war matériel to the Austro-Hungarian Army in WWI was also a company called Fiat—in Vienna. Austria and Italy became enemies, all the Austrians had to do, therefore, was to change the bank account of Fiat-Austria
Even traditional industries like the automotive industry or insurance are no longer organized that way.
2014/6/17