50年前の1950年頃、現代の奇跡として登場したコンピュータは、軍事、天文学など科学計算が主たる市場になるものと考えられた。
私を含めわずかの者たちは、コンピュータは企業において、賃金計算や電話料金計算などの事務処理のための高速計算機以上の役割を果たすと見た。コンピュータは、トップ経営陣の仕事を一新するとみた。経営戦略と意思決定に大きな影響をもたらすと考えた。
これほど間違ったことはなかった。コンピュータが一新したのは、誰も考えていなかった分野、すなわち現場の仕事だった。(p111)
第4章では「情報が仕事を変える(Information Challenges)」と題して、仕事と情報の関係の変化について論じられています。
最初は、情報技術が世の中を変えるといわれていた時代の予測が見事にはずれているという事例からの記述です。
上記のように、経営者の仕事を変えると予測されていたが、実際に変わったのは現場の仕事だったとし、その実例として次のようなソフトウェアの登場を挙げています。
CAD(設計作業にかかる時間を大きく削減した)、医療用ソフトウェア(インターンが手術のシミュレーションを行い、技術を習得する)、銀行業務です。
本書が出版された1999年からすでに20年も経過していますので、ドラッカーが列挙した以外にも、今や事務仕事、生産業務、販売業務などほとんどの仕事でコンピュータが使われています。
逆に、予測がはずれた経営戦略や意思決定に関する経営者の仕事は、情報技術によっても変わることはなかったということを暗に示しています。
A half century ago, around 1950, prevailing opinion overwhelmingly held that the market for that new “miracle,” the computer, would be in the military and in scientific calculations, for example, astronomy.
A few of us foresaw that in business the computer would be more than a very fast adding machine doing clerical chores such as payroll or telephone bills.The computer would, in short order, revolutionize the work of top management. It would, we all agreed, have its greatest and earliest impacts on business policy, business strategy and business decisions.
We could not have been more wrong. The revolutionary impacts so far have been where none of us then anticipated them: on OPERATIONS.
2014/7/22