登山は体重移動で上る~疲れない登山の歩きかた

2015年1月からスタートしました。

ご訪問ありがとうございます

<(_ _*)>

【このページの目次】

山登りツーリングの勧め

疲れない登山の上りかた

何故疲れにくいか

登りよりも下りの方が筋肉が疲れる理由

大腿四頭筋を傷めない下りの歩き方

がに股で上る

呼吸の仕方

腕の振り方

【関連ページ】

登山靴の慣らしの為に檜原村の滝めぐり

疲れない登山の歩き方でつづら岩まで実証実験

【山登りツーリングの勧め】

愛車のバイクで山のふもとまで出かけて、そのままの靴で登山を楽しむなんて素敵だとおもいませんか?

今回も「CB1100で行く山登り」シリーズです。

ライディングに最適化された本格的な登山靴ガエルネFUGAを手に入れてから、本革靴の慣らしを目的にたびたび短時間の登山をするためにバイクを走らせています。

足が痛くならず、無駄な体力を消耗しない登山での歩きかたを調べていると「バイクは体重移動で曲がる」で述べたように「登山は体重移動で登る」のだそうです。

登山歴というほどの物はないに等しいですが若いころに中国地方の大山に上ったことが有ります。

ここ数年はハイキングに少し毛の生えた程度の登山、例えば高尾山~陣馬山、景信山、宝登山、奥日光、箱根金時山、丹沢山など毎回決まったメンバーに混ぜて参加させてもらっています。

そして今年の夏はいよいよ北アルプスの燕岳(つばくろだけ)に上るというのが大目標です。

バイクのライディングにも様々なコツがあるように「登山の歩き方」「登山靴の履きかた」などで検索すると実にたくさんサイトが存在します。

悲しいかな理屈がわからないと覚えられないというタチなのでサイト上でいろいろ矛盾もあるご意見のなかでナルホド!と納得したものをまとめておきたいと思います。

まだ実践が伴わず体で覚えていないことも多いですが何かの参考になれば幸いです。

ページトップに戻る

【疲れない登山の上りかた】

登山の経験が少なくても疲れにくい歩き方として以下のことはおおよそ理解できると思います。

ゆっくり歩く・・・エネルギーの時間当たり消費量を小さくし疲れないようにする

小さい歩幅で歩く・・・一歩で大きく前進・上昇(登る)とエネルギーの消費が大きい

膝をしっかり上げて歩く・・・平地と違い木の根っこや石などにつまずかないようにする

足の裏全体で着地する・・・部分的な平面のある階段だけとは限らず斜度のある道を歩くので

しかしベテランの登山家が口をそろえて言うのは普段平地を歩くのとは全く別の歩きかたをするべきだということです。

彼らの説明によれば普段の歩き方は登山の歩きと比べると後ろ脚で地面を蹴って進んでいることとなります。

登山独特の登りの歩き方ワルツのようなゆっくりしたテンポで3つの段階を連続させるようなイメージです。

階段での練習をイメージして説明します。

まずはワンでは歩幅を小さくするためになるべく階段に近づいてまっすぐに立ち前足を階段(坂)の上に乗せます。

次にツーでは頭から後ろ脚までを一直線に保ったまま前傾していき体重を前足に移動させます。

膝の先つま先の真上あたりにくるまで前傾するのが理想です。

後ろ足はまっすぐに保つだけですので骨で体重を支えますから後ろ足の筋肉はほとんど使わずに休むことができます。

そしてスリーで登るという位置エネルギーの上昇の為に前足の筋肉だけを使って身体を持ち上げます。

特に重心が前足に乗っているので主に使われるのは膝をまっすぐに伸ばそうとする太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)です。

後ろ足は地面を蹴るのではなく腰からぶら下がって引き上げられるだけです。

こうして分析してみると筋肉を使うのは前足で身体を持ち上げるスリーの工程だけであとは筋肉が休んでいることがわかります。

地面を蹴らないので斜面の石を蹴って小さな落石を起こす心配もありません。

完全に前足に体重を乗せて垂直に立てたら次の一歩では今まで後ろ脚だった方を階段(坂)の上に状せて上記を繰り返します。

【何故疲れにくいか】

このような登山特有の歩き方が疲れないという理由は2つに絞られると思います。

一つ目は人間の足の筋肉の中でもっとも大きな力を出せる太ももの筋肉を中心に使い、攣りやすいふくらはぎの筋肉をなるべく使わないということです。

後ろ脚で地面を蹴る普段の歩きかたは最終的にはつま先立ちになることからふくらはぎの筋肉を酷使します。

ふくらはぎは水泳でも陸上でも攣りやすい筋肉で単発的な力はあっても長時間使いつづけるには適していない筋肉です。

筋肉の名称を示す図です。

いろいろな筋肉が複雑に存在していることがわかります。

ちなみにハムストリングスとは太もも裏側の筋肉の総称で豚のハムを作るときにこれらの筋の腱をつかってぶら下げるところからきています。

カエルも馬もチーターも大きく跳躍する時には太ももの筋肉を使って力強くジャンプしていることから最強の筋肉であることは容易に想像できます。

二つめの理由は常に力を出すのではなく左右の足を交互に使うことで使っていない側の足の筋肉を休めることができるからです。

激しいスポーツをした時の筋肉の疲労は酸素供給が追い付かない為に筋収縮のエネルギー原動力のブドウ糖の化学反応が不十分となり乳酸などが蓄積していく為という説があります。

したがって常に力を出し続けるのではなくたとえ短い時間であっても周期的に筋肉を休ませることにより血液から充分な酸素を筋肉に供給できると考えられます。

実際に散歩中に急な階段を選んでゆっくりと試してみると、なるほど!登山は体重移動で登るの意味がようやく実感できました。

最近は老犬ジャック(ヨークシャテリア)の散歩に急な階段道ばかり選ぶのでジャックは階段に近づくのを時々嫌がるようになりました。

【登りよりも下りの方が筋肉が疲れる理由】

ところで登山で使う筋肉は登りと下りでほぼ同じ筋肉です。

ご存じのように関節を「伸ばす」場合でも筋肉自体は縮む方向の力を出します。

登る時に使う筋肉(前足)は

膝を伸ばす=大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)

・股関節を伸ばす=臀筋(おしりの筋肉)

普段歩きではこれに

・後ろ足の足首を伸ばす=下腿三筋(ふくらはぎの筋肉)

が加わります。

次に下りる時に使う筋肉(後ろ足)は

膝を曲げる=太腿前面(が力を込めつつ伸びる。)

・股関節を曲げる=おしり(が力を込めつつ伸びる。)

・足首を曲げる=ふくらはぎ(が力を込めつつ伸びる。)

上りも下りも最も力を使っているのは太もも前側の大腿四頭筋です。

お尻の筋肉が痛くなるのは正しい歩き方という話を聞いたことが有りますが、主に前傾した上半身をまっすぐにするときに使われるのが大臀筋です。

筋肉トレーニングの空気椅子のように背中を壁につけて角度を固定した状態では大殿筋(だいでんきん お尻の筋肉)で体を上に持ち上げることができますが、上半身を固定していないと上半身を後ろに反らすことになります。

荷物を背負わずに上半身が軽い状態では上る時に太ももを下に動かして身体を持ち上げようとしても尻の大腿筋はあまり役立ちません。

なぜなら太ももを基準に考えると大腿筋は背筋を後ろに傾けるという力を発生します。

重い荷物を特に上の方に背負った場合には上半身の慣性マスが増えるので傾きにくくなった上半身を基準大殿筋で太ももを押し下げて上る力に利用しやすくなります。

また上半身を前傾させることにより重力が働いて後ろに反らす抵抗力が増すので大殿筋を上りに利用しやすくなります。

ちょっと違和感を持たれるかもしれませんが、登る時と下りる時に関節が動く方向(伸ばすVS.曲げる)は逆ですが使う筋肉は同じです。

下りる時は重力による落下をゆっくりと制御する為に筋力を使うからです。

人により違うかもしれませんが私の場合は登山翌日から痛むのは太もも前側の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)です。

登る時には体重を前足に乗せた状態で膝をまっすぐに伸ばしますし、降りるときには前足に衝撃がかからないように後ろ足に体重をのせてゆっくりと膝を曲げる時に使われるからです。

ちなみに登るときのように筋肉が収縮する方向に働く時を短縮性収縮といい、比較的筋肉の負担は軽いと言われています。

逆に下りる時のように収縮力を出しながら筋肉自体の長さが伸びる時は伸長性の収縮と言われ、短縮性に比較して高い負荷がかかります。

伸張性収縮の一番の特徴は筋肉に大きな刺激とダメージを与えることができるということです。

これを利用してボディビルのようなムキムキマンになるための筋力トレーニングとしてダメージによる筋肥大、つまり筋肉を太くする刺激に利用されています。

腕立て伏せスクワットダンベルで下ろす時にゆっくり行うのはこの伸張性収縮を効かすためです。

このためボディビルダーや筋肉で体を大きくする事が求められるパワー系のアスリートは、伸張性収縮を重視した筋力トレーニングを積極的に行っています。

一方短所としては筋繊維のダメージによって筋肉痛が強く出るという性質があります。

伸張性収縮ではミクロ的に見ると一部の筋肉をプチプチと切りながら力の加減をし、筋肉を伸ばすスピードを調整するため壊れた筋肉を「治そう」として炎症を起こす為に痛むと言われています。

痛みやダメージが大きければ回復時間も長く必要になります。

登りの方が体重の位置エネルギーを高める為に筋肉は大きな仕事をしますが、下りの時に重力をセーブしながら筋力を使う方が疲れるのはこの短縮性と伸長性の収縮の違いからくるものです。

尚、筋肉の炎症が収まり回復するのにおよそ72時間(3日)かかるといわれていて、ムキムキマンになるには筋肉を酷使したら3日休み、回復したら再びトレーニングで筋繊維にダメージを与えるのを繰り返すそうです。

また登山の筋肉痛をなくすために、普段から太ももの大腿四頭筋を鍛える方法はハーフスクワットと言われています。

やり方は

1.脚を肩幅にひろげる

2.かかとを床につけたまま、膝を90度までゆっくりと曲げていく

3.そのまま10秒キープし元へ戻る

10回連続を3セット程度以上行います。

ポイントは力を掛けながら筋肉を伸ばすという伸長性収縮ゆっくりと行うことです。

【大腿四頭筋を傷めない下りの歩き方】

私の場合に登山の翌日に激しく太ももが痛むことと、その原因は下る時の後ろ足が筋肉のダメージの大きい伸張性収縮を使っていることが分かったので対策を考えてみました。

ベテランの登山家の方たちと違うことも述べますので信じる前に疑ってかかりご自分で確認してください。

・セオリーどおりブレーキを掛ける際に前足の衝撃を避ける為に後ろ足に荷重をかけてゆっくりと前足を下していくのは正しいことに間違いはないが、やり過ぎると良くない

緩やかな坂であれば路面状況にもよるがある程度のスピードで降りても構わない。

・膝の関節を痛めやすい人は別にして、前足を地面に下す時の多少の着地の衝撃を許容してしまう。

ただしほとんど地面と平行に足をつける中でも僅かにつま先を先につけるようにして足首で衝撃を緩和する。

・2本のトレッキングポールを用いて降りる時に腕の力をサポートとして使い、後ろ足の荷重を減らすし前足の着地の衝撃を和らげる。

この時の身体の重心は後ろ足だけでなく腕でも負担するのでいつもよりやや前方に移動し前足も下しやすくなります。

経験者の話ではこれが最も効果があるようです。

【がに股で上る】

足首の曲がりにくい登山靴で階段ではなく斜めの道を上る場合にはがに股で上ります。

このほうが足首を曲げる角度が小さくて済みます。

ただし左右の足の間隔を広げてしまうと体重が左右に大きく振れますので、かかとをなるべく一直線上に置くようにして歩きます。

これも登山特有の歩き方です。

ページトップに戻る

【呼吸の仕方】

登山の場合は筋力を使って体重の位置エネルギーを上げますので、平地と違って大量の酸素が必要になります。

したがってゼイゼイハァハァと呼吸が乱れないように登るには意識して呼吸する必要があります。

【ポイント1】スッスーハッハーと2回吸って2回吐くつもりで深く呼吸する

マラソンなどのときは歩調に合わせて「鼻から2回吸って、口から2回吐く」という呼吸法を聞いたことがあると思います。

成人男性は普通に呼吸すると1回につき500cc程度の空気を吸い込むそうです。

単純に考えれば歩調に合わせて短い呼吸を2回しようが、2回吸って深呼吸のように1000ccを吸い込もうが体内に取り込める酸素量は変わらないように思うかもしれません。

しかし深い呼吸の方が酸素の取り入れに有利なのは死腔(しくう)が存在するからです。

死腔とは肺にまで届かずに吐き出してしまう気管部分のことでおよそ150ccと言われています。

したがって500ccの空気を吸っても有効に肺まで届くのは500-150=350ccとなり70%しか酸素の取り込みに利用できません。

一方2回吸い込みにより深く呼吸すると1000-150=850ccの85%が肺まで届きます。

死腔量は両者で同じですので同じ呼吸という動作で酸素取り込みに15%ものロスの違いが出てきます。

出典:登山の呼吸法

運動時の呼吸の基本は体の動きに合わせ、手足の動きに呼吸をシンクロ(同調)させるということです。

ランニングの場合は早いピッチなので2回吸い込みですが、山登りでは歩行のリズムがゆっくりなので歩調に合わせて2回吸い込む必要はなく歩行のリズムに呼吸のリズムを合わせることができます。

この場合でもマラソンと同様に深く大量の空気を一度に吸い込むことが重要です。

【ポイント2】鼻から吸って口から吐く

鼻腔は吸い込んだ空気を加湿および加温する役割も担っているので、口から乾燥した空気を吸い込むんで喉を痛めることを防止できます。

さらに鼻だけを使って空気の出し入れをすると、出すときに鼻腔内に残った酸素の少ない空気を再び吸い込むことになり、深呼吸で説明した死腔と同様に酸素取り込み能力にロスが発生します。

一方空気を出すのは口にして、入れる方は鼻だけの一方通行とすることで鼻からは常に新鮮な空気が吸い込まれます。

鼻腔も死腔の一つです。

呼吸では鼻から吸って口からだす一方通行が原則です。

【ポイント3】坂の斜度に合わせて急なら事前に呼吸を深くしておく

山にもよりますが登山では平坦な道やなだらかな登り坂があったと思うと突然急斜面が現れることもあります。

当然斜度が大きいほどエネルギーの消費が大きく、したがって大量の酸素を体内に取り込む必要があります。

坂を上りきってからゼィゼェと苦しそうに呼吸をするのではなく、坂を上る前から呼吸を整えてしっかりと深呼吸しながら上ります。

【ポイント4】腹式呼吸で吸うよりも吐く方を意識して呼吸する

複式呼吸のいいところは息を吐き終わったときの肺の残りの空気が少なくなることです。

新鮮な空気をたくさん取り込むにはまずは残った古い空気の量を減らしておくことです。

特に急な登りで苦しくなった時には吸う時は意識しなくても大丈夫です。

苦しいときは本能的に勝手に思い切り吸い込んじゃいますから古い空気を完全に吐き出しておくことに意識を集中するのが得策です。

吸うのはゆっくり1回、吐くのは2回でも大丈夫。

足取りと合わせるとやりやすいですね。

息を吐くときは「口すぼめ」をしてフーと音を出した方がしっかりと意識できます。

また肺の中の圧力を少しだけ高めることで空気と肺の血管との交換効率を上げるという説もあります。

過呼吸にならない範囲でしっかり酸素を取り入れましょう。

疲れ方が全く変わってきます。

ページトップに戻る

【腕の振り方】

ストックを使わない場合のことです。

ベテランの方の上りを見ているとなんだか元気がなくしょぼしょぼと登っているように見えます。

これは元気よく腕を振っていないからです。

右足を前に出すときは左手を前にという普段の歩き方は重心が左右にぶれにくいという特長があります。

しかし山登りではゆっくりと片方ずつの前足の力で上りますのでどうしても前足側に体重をかけるため少しだけ重心の左右のブレが発生します。

そこで腕は振らずにだらんと下げたり、ザックの紐を持ったりしながら少しだけ上半身を前足側に移動することになり、結果的にしょぼしょぼと歩いているように見えるのだと思います。

積極的に前足に全体重をかけたい場合の腕の振り方はいわゆるナンバ(難場)歩きです。

もともと歩きにくい場所を歩くというのが語源です。

ご存知のように右足と右手を同時に出すという方法です。

江戸時代までの日本人古来の歩きかたと言われていて、最近ではオリンピックの選手の一部などで注目されるようになりました。

西洋式の現在の歩き方に慣れているので奇妙な気がしますが、浮世絵を注意してみるとナンバ歩きで相撲歌舞伎や武道には今でも昔の名残りが残っています。

平らなところの少ない山国である日本だからこそ昔はナンバ歩きが普通だったのかもしれません。

それにしても登山の世界は奥が深いなと感心している今日この頃です。

ページトップに戻る