モーション制御基礎

TwinCAT モーションソフトウェア


TwinCAT PLCとEtherCATだけでもパルスを発生させたり、アナログの波形を作ったりしてモーターを動作することは可能です。

但し、ドライブごとにインターフェイスが異なる場合、インターフェイスの数だけPLCプログラムが増えることにより、開発者の負担は大きくなります

(アナログ速度指令のドライバ、EtherCA T同期制御のドライバ、パルス制御のドライバなど、インターフェイスの種類はさまざまです)。

そのような場合に便利なのが、TwinCATモーションソフトウェアです。


上位PLCからコマンドをパラメータとして設定し、位置、速度、トルクなどのパラメータをサーボドライブが受け取ります。この指令を通信周期に基づいて分割、送信する一連のプロセスをモーション制御が担っています。






従来のモーション制御システムは、PLCと数値制御装置(モーションユニットやモーション制御カードなど)の2つのハードウェアCPUで構成されるのが一般的です。数値制御装置の指令がメーカーごとに異なるため、開発者は異なる指令ごとにプログラムを作成する必要があります。また、サーボアンプ側でも対応している指令が異なり、数値制御装置とサーボアンプの指令がマッチしない場合は、ハードウェアを変更する必要があります。このように従来のモーション制御システムは、ハードウェアに大きく依存するシステムであると言えます。


TwinCATによるモーション制御システムの場合、産業用PC(IPC)にTwinCATソフトウェアでモーション機能を実装した1つのハードウェアを、EtherCATなどのネットワークによりサーボアンプと接続して使用します。TwinCATモーションは、位置、速度、トルク、パルス、アナログ指令など、さまざまなサーボアンプに対応しており、ハードウェアに依存しない極めて柔軟なシステム構成が可能です。



TwinCATの構造を詳しく見てみましょう。モーションの場合でもTwinCAT PLCでプログラムを作成します。PLCOpenの標準化されたモーションファンクションブロックを使用できます。TwinCATでモーションと呼ばれる部分は、MOTION(SVB)とMOTION(SAF)で構成され、指令プロファイルと分割指令を担っています。分割された指令は周期的にEtherCATドライバに送信され、サーボを経由してモーターを駆動します。





TwinCATの主要なモーション機能:

モーションは大きく分けて単軸補間と多軸補間の2つに分類できます。

単軸補間:

NC PTP

  • ポイントツーポイント基本動作のためのライセンス

  • 電子ギア:複数のモーターをソフト的にカップリング(連結)して動作

  • 電子カム:カムテーブルを定義、テーブルを参照してマスターとの位置関係で動作(別途、追加ライセンスが必要)

  • スーパーポジション:包装機械用の機能でマスター/スレーブを同期、先に走っているものに追いついて同期する追従動作

  • フライングソー:木工加工用の機能


多軸補間:

工作機械やロボットなど多次元空間で軌跡制御が必要な場合に使用します。

モーションファンクションブロックだけでなく、Gコード(ツールの先端やロボットのエンドエフェクターの位置を多次元空間で座標指定して動作するためのスクリプト)に対応しています。主要なライセンスは以下の3種類です。それぞれ対応軸数が異なることに加え、Roboticsライセンスは、デルタ、スカラ、垂直多関節などロボットの様々なキネマティクスをサポートしています。


NC I

  • 3軸+付加5軸の多軸補間動作のためのライセンス

  • NC Interpolation=NC補間なので、補間する場合はNC Iのライセンスを使用(NC PTPでは補間できない)

  • Gコード対応

  • PLCから各種ファンクションブロックを呼び出し可能


CNC

  • 充実したCNC機能

  • 1系統あたり最大32軸までの補間動作

  • Gコード対応(NC Iよりも豊富な機能)

  • 各種座標変換機能


Robotics

  • デルタ、スカラ、垂直多関節など様々なキネマティクスをサポート

  • Gコード対応

  • Roboticsライセンスの使用には、NC Iライセンスが必要



※論理軸数には、実際のモーターの軸数に加えて、仮想軸数も含まれます。

※補間軸数は、Gコードの補間コマンド(直線補間、円弧補間など)で動作できる軸数を示しています。

※系統数はGコードグループやチャンネルとも呼ばれます。

※上の表の対応軸数は、あくまでライセンスがサポートする軸数です。実際の対応可能軸数はCPU性能により異なります。



モーションの階層(抽象層)

ベッコフのモーションの内部構成はIEC61131に即した考え方によって構成されています。

重要なのは「階層化」という考え方で、それぞれの異なる階層の間をつなぐ構成になっています。

PLCに対してはソフトPLC層、モーションに対してはソフトモーション層、各種フィールドバスに対しては通信層が存在します(右図参照)。ソフトモーション層でハードウェアの差異や、ネットワークの差異を抽象化することにより、ハードウェアを入れ替える場合や、国内拠点と海外拠点で使用するドライブが異なる場合にも、ソフトモーション層に紐付けたプログラムを再利用できることが大きなメリットです。

インターフェースを揃えておくことで、ロジックを変更することなく、つなぎ替えができることがIECの基本的な考え方です。