EtherCATスレーブ

EtherCATスレーブの種類

ハードウェア構成による区別

EtherCATスレーブにはマイコンを使用していないものがあります。ベッコフ製のEtherCATカプラ・分岐スレーブ(Junction Box) や基本機能だけのデジタル入力デジタル出力スレーブ が該当します。このようなデバイスはシンプルデバイスと呼ばれ、機能設定を行う項目はありません。

マイコンを使用したスレーブはコンプレックスデバイスと呼ばれます。コンプレックスデバイスはプロセスデータの選択や動作のためのパラメータなど、スレーブの機能を設定する項目があります。

アプリケーション機能による区別

EtherCATスレーブは、以下のようなアプリケーション機能が採用されています。

CoE (CAN application over EtherCAT): CANopenに準じる通信サービスやパラメータ構造をもち、このパラメータ構造のことをオブジェクトディクショナリと呼びます。EtherCATスレーブでは主流のアプリケーション層プロトコルです。

SoE (Servo drive profile over EtherCAT): SERCOSに準じる通信サービス式やパラメータ構造をもちます。ベッコフオートメーションのAX5000シリーズで採用されています。

EoE (Ethernet over EtherCAT): EtherCATのネットワークには直接TCP/IPの通信を行うことはできませんが、EtherCAT通信の仕組みを介してスレーブのアプリケーション機能でTCP/IPデータの送受信を可能にします。

FSoE (Safety over EtherCAT): 機能安全のための機能を提供するスレーブです。ベッコフ製品ではTwinSAFEと呼ばれ、セーフティPLC・セーフティI/Oセーフティドライブを実現するオプションカードがあります。

シリーズラインアップ

ELシリーズ

スライスI/O型のターミナルです。各スライスI/OがEtherCATスレーブとして動作します。カプラ接続型独自バスのスライスI/Oに比べてEtherCATの高精度時刻同期 (DC) だけでなく設定・診断機能に対応します。ネットワーク通信にEBUSを使用し低コストでありながら高機能を実現しているEtherCATターミナルです。

ESシリーズ

前面の端子台部分の取り外しが可能なターミナルです。機能はELシリーズと同じです。保守・メンテナンスの効率アップに貢献します。

EP/EQ/ERシリーズ

保護等級IP67に対応したEtherCATボックスです。コネクタ形状はM8, M12をラインアップし、ステンレスケースの製品も用意しています。

EPPシリーズ

保護等級IP67に対応したEtherCAT Pボックスです。EtherCAT通信と電源供給を同一線で行い、省配線化を実現できます。

XFC (eXtreme Fast Control)

XFCはEtherCATの高精度時刻同期 (DC) を使用して高速かつ高時刻精度なI/O入出力を実現しています。

タイムスタンプ機能: 入力データのラッチ時刻をDCから取得し、プロセスデータとしてマスタに通知します。サイクルタイム内の入力変化の正確な時間取得による高精度な制御を実現します。また、出力データの場合は指定したタイミングを指定できます。

オーバーサンプリング機能: DCの時刻を利用してサイクルタイムを等分し、1サイクルで複数の入出力を行います。デジタルI/Oで最大128等分、アナログI/Oで最大100等分できます。プロセスデータは1サイクルで入出力を行う個数分通信することになります。例えば1msのサイクルタイムでアナログ入力を100等分でデータ取得をすると100kHz (分解能10μs) のオシロスコープに相当する機能をフィールドバスI/Oシステムで実現します。

スレーブ機能による区別

ベッコフ製EtherCATスレーブは型番から簡単に機能を区別できるようになっています。

EL1xxy: デジタル入力ターミナルです。カウンタ等のデジタル信号入力を処理するスレーブのこの型番になります。

EL2xxy: デジタル出力ターミナルです。PWM等のデジタル出力信号もこの型番になります。

EL3xxy: アナログ入力ターミナルです。電流、電圧の計測や、熱電対、ロードセルなどのセンサ接続のようターミナルです。

EL4xxy: アナログ出力ターミナルです。電流、電圧の出力を行います。

EL5xxy: エンコーダインタフェースターミナルです。

EL6xxy: 通信系のターミナルです。RS232C/422/485などのシリアル通信やDeviceNetなどのフィールドバスへのゲートウェイがあります。

EL7xxy: モーション系ターミナルです。テッピングモータやサーボモータのドライバをスライスI/Oのサイズで実現しています。

EL9xxy: 電源接続などのシステムターミナルです。電源の追加供給、サージフィルタ付き電源入力、電圧変更を行う際に使用します。

ELx9xy: 機能安全に対応したTwinSAFEターミナルです。セーフティPLC、セーフティI/Oがあります。

y: 末尾の数字はCh数を表します。1, 2, 4, 8 はその数のCh数です。9 は 16Chになります。

ES/EP/EQ/ER/EPPも上記と同じ型番構成です。