日本の美
【電車と山】
旅をすると電車やバス、乗用車を利用するが、車窓から眺める景色で山、海、川などが旅情を一層引き立ててくれる。今回は電車から見る日本の山で、最も印象に残るところををあげてみた。
【立山連峰】
富山地方電鉄と立山連峰。
富山平野を走る列車の見どころは海側ではなく山の側。空気の澄んだ好天の日には車窓の遠くには立山連峰の山並みがくっきりと見え、この上のない絶景を存分に楽しめる。
ルート図
登山愛好家には、この富山地鉄と聞くと山登りの血が騒ぐらしい。
日本アルプスの立山連峰が終始目に飛び込んでくるし、「立山黒部アルペンルート」 は電気バス、ケーブルカー、ロープウェイ、トロリーバス、高原バスを乗り継いで、標高3000m級の山々が連なる北アルプス を一気に2,450mまで行く天空の乗り物、これも富山地鉄が運営している。
100名山の立山、剣岳、薬師岳、黒部五郎岳、水晶岳、鷲羽岳が至近距離である。
富山駅、宇奈月温泉、黒部ダム、扇沢駅、美女平、有峰口から見る山の景色は絶景である。
【北アルプス】
【南アルプス】
南アルプスと梅の花が咲き乱れる甲府盆地の桃源郷
東京、山梨、長野の3都県の駅を結ぶJR東日本の「特急列車スーパーあずさ」は新宿から桃の花が咲き乱れる桃源郷の山梨・甲府盆地を走る。その先には南アルプスが控えている。
日本アルプスに行くたびに新宿から「あずさ」に乗る。山梨につく頃は左手に南アルプス、そして甲府を出ると右側には中央アルプス、過ぎると今度は左手に北アルプスである。否が応でも心は山へと導かれる。電車に乗るたびに狩人の「あずさ2号」が口ずさんでいた。
【八ケ岳】
【富士山】
東京都心からでも見られる富士山
(大山)
【白山】
【早池峰山】
早池峰山と蒸気機関車
「ハヤチネ」と言う美しい名前に惹かれる人が多いという。山名は祈願すれば清水が湧出するという意味から早池の泉と名付けられた山頂の霊池に由来するという。
多くの登山者に慕われる「ハヤチネウスユキソウ」の可憐な白い高山植物、柳田国男の「遠野物語」、河童伝説、神楽などなど、ロマンを与える岩手県の山域である。
気品ある日本版「エーデルワイス」
河童が現れるという河童淵
この地域に多い神楽
【岩手山】
【鳥海山】
日本海からそびえ立つ孤高の秀峰
鳥海山は様々な恵みを人々に与えてくれる。きれいな風景と景観、日本海からの湿った空気がぶつかってたくさんの雨や雪が降り田畑を潤す。また海の底に湧き出た水は、おいしい岩ガキをも育てる。
鳥海山の地下にある水(地下水)が、マグマの熱で温められると温泉 が湧き名湯が点在している。
何より出羽富士「鳥海山」系の清冽な雪解け水と、肥沃な大地の恵み、日本海からの涼しいそよ風で育った庄内米がこの地の自慢である。
【安達太良山】
詩人高村光太郎の心を魅了した景観
高村光太郎は「安達太良山の山の上に、毎日出ている青い空が、智恵子のほんとの空だといふ」と詠み、安達太良山の名を全国に知らしめた。
山の中腹にある山小屋
二階建ての小屋は人気
温泉があり人気の所以
日本一うまいと評判のカレー
【岩木山】
男はつらいよ 第7作 奮闘編
おなじみの口上
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
青森県の岩木山の自然に抱かれて育った少女・花子に榊原るみと寅さんの会話が面白い。
花子「とらちゃん、岩木山知ってるか?」
寅「イワキさん?って誰だ」
花子「人じゃねえ、山の名前だ」
その山容から津軽富士とも呼ばれるほか、しばしば「お」をつけて「お岩木(山)」あるいは「お岩木様」とも呼ばれる。 その麓の青森県はリンゴ生産NO1の地である。
【会津磐梯山】
♪ エンヤー会津磐梯山は 宝の山よ 笹に黄金が エーマタなり下がる
【小原庄助さん 何で身上潰した 朝寝朝酒朝湯が大好きで
それで身上潰した ハァモットモダーモットモダ】
会津地方民謡 金銀財宝が至る所に埋まっている宝の山 ではない。それはこの地の豊かな水と土、温泉、酒、農作物そして優しさに満ちた人々が宝そのものと言う 。
会津の「津」というのは、水の豊かな土地をさし、豊かな水は肥沃の大地を生み、夏、高温の盆地性の気候は米作りに最適だという。コシヒカリの産地として新潟魚沼群とは県境の山を挟んだ反対側で、気候風土も似ており産する米の美味しさは引けを取らないといわれているという。
山の由来は、磐梯山の磐は「いわ」、梯は「はしご」であるから、「天に届く磐の梯子」を意味しているそうだ。会津といい、磐梯山といい何と目出度い地方の文化であろうか。
【しなの鉄道と妙高山】
豪雪地帯を走る「しなの鉄道」は長野県軽井沢を起点に、百名山の妙高山・火打山を見上げながら走る。その山々には可憐な「ハクサンコザクラ」の群生地で知られる。
ハクサンコザクラの群生地と池塘
【男体山】
徳川家康を祀っている日光東照宮の神社から登山する男体山
男体山の西にある戦場ケ原では、男体山に住む大蛇と、赤城山の大ムカデが争った場所として有名
大ムカデは負けて負傷して帰ったので、真っ赤な血に染まり、赤い血がなまりアカギ(赤城)と命名されたと言う。
赤城山には大ムカデ、男体山には大蛇が住んでいた。
戦いで勝ったので、勝利の大蛇として神社に祀られている。
【浅間山】
小諸なる古城のほとり 島崎藤村
小諸(こもろ)なる古城のほとり 雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
緑なす蘩蔞(はこべ)は萌(も)えず 若草も藉(し)くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺 日に溶(と)けて淡雪(あわゆき)流る
暮れ行けば浅間(あさま)も見えず 歌哀(かな)し佐久の草笛
千曲川(ちくまがわ)いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ
濁(にご)り酒(ざけ)濁れる飲みて 草枕しばし慰む
島崎藤村は浅間山が見える小諸で教師として過ごし、朝に夕に浅間山を見ていたそうである。
【筑波山】
百名山で一番低い筑波山(876m) そして有名なのが麓での「がまの油売り」
「ガマの油」とは、もともとは江戸時代に傷薬として用いられていた軟膏。客寄せのために侍の格好をした行商人が口上を言いながら薬を売っていた。現在、薬は売っていないが、茨城県筑波山を中心に、その口上が芸として残っている。
演者が侍の格好で刀を持って行うが、あくまで大道芸なのでとてもコミカル。よく知られた「一枚が二枚、二枚が四枚…」と紙を刀で切っていくのも、実はこの油売りの口上の一部である。切った紙を紙吹雪にして飛ばす場面は華やかで観客の拍手を誘う。最後に腕に怪我をしたふりをして傷口に薬を塗って効果をアピールする、というのが流れである。
この伝統芸能を守る団体の一つが「筑波山ガマ口上保存会」。
【羊蹄山】
完全な円錐形であり、富士山によく似たその整った姿から、蝦夷富士 と呼ばれる羊蹄山
秋の季節、雑木林やカラマツ林が茶色に染まるころ、北海道を代表するSL機関車が白い煙をたなびかせながら走る姿は何とも言えぬ風情である。
有島記念館入口からは羊蹄山の美しい姿を見ることができる。
スキーリゾートと温泉で有名なニセコ町は、「カインの末裔」「或る女」などで知られる作家、有島武郎にゆかりの深い町である。有島武郎は自身の所有する農場を無償で農民に分ける「農場解放」を行い、また農業の安定のために灌漑溝の整備を行つた。
【大雪山】
大雪山連峰と電車
上は旭川市と大雪山、下は美瑛町と大雪山
大雪山は花の百名山、そして約二百数十種の植物が自生するといわれる高山植物の宝庫。
大雪高原温泉沼めぐり 日本一綺麗な紅葉
「日本の美」とは「日本の自然」にも連なる
日本が世界に誇れる自然には以下のものがある。
山、川、沼、渓流、林、森林、海、里山、湖、水、温泉、多様な農業、林業、漁業・・・・・等々
・世界で、そのまま飲める安全な水の国は9カ国
アジア ~ 日本、アラブ首長国連邦
ヨーロッパ ~ アイスランド アイルランド ノルウェー フィンランド ドイツ オーストリア スロベニア
(アフリカや砂漠地帯の多くの国では水が不足し、水汲みに何時間も要す国さえある。)
・日本は島国
日本は海に囲まれた島国で、その国土の80パーセント以上が森林におおわれた山地で占められている。森林率を「国別」にすると、トップがフィンランド:73.9%、2位は日本で68.2%、3位がスウェーデン:66.9% である。
日本には山が沢山ある分、それに応じて川も沢山ある。この豊富な水源は水質が良く、とてもきれいな事でも知られていて、古くから稲作や酒造り、あるいは染め物といった、日本の生活や伝統文化を支えてきた。
また、日本には沢山の火山があり、火山のお陰で日本には沢山の天然温泉がある。その数は世界一ともいわれ、全国各地に3000以上もあると言われている。そしてどの地域もその恩恵にあずかっている。
美しい自然の景観を見ると素直に感動して「美しい」と思える。それが人間の幸福度を高めてくれるのである。
昨今、「日本のおもてなし」や「日本料理」が話題になっている。
レストランや食堂での水飲み放題、おしぼり、醤油や調味料、トイレもきれい、洗面所の石鹸・タオルが充実、大浴場が綺麗。ホテルや旅館の接客、電車の正確なダイヤと車内の清潔、自動販売機の充実、コンビニの多さ、本屋のブックカバー、メニュー表に写真、タクシーの自動ドア・・・
言葉が丁寧・・・お食事、お車、お布団、おビール、お料理
目配り、気配り、心配り
温泉が入り放題、食事でバイキングの食べ放題、飲食店でのご飯やみそ汁のサービスやおかわり自由など。そして何より日本の治安が良いことである。
海外旅行をすると日本のありがたさがしみじみ感じる。
日本国内を旅行するとき、山や街並みを見てそこをカラフルな電車が走る。
乗り鉄、撮り鉄、飲み鉄と言う言葉に代表される今日、何と日本は平和なのであろうか。