Yamauchi2010
Yamauchi R, Kobayashi M, Matsuda Y, Ojika M, Shigeoka S, Yamamoto Y, Tou Y, Inoue T, Katagiri T, Murai A, Horio F.
J Agric Food Chem. 2010 Apr 21. (Epub)
名古屋大、近畿大、ポッカの共同研究による、糖尿病モデルマウスを用いたコーヒーおよびカフェインの糖尿病予防作用について検討した論文。自発的に2型糖尿病を高頻度で発症するKK-Ayマウスに、飲み水の代わりに(2倍に薄めた)コーヒーを5週間自由摂取させた場合、血中グルコース濃度の上昇、インスリン感受性、脂肪肝の発生などが改善された。カフェイン単独でも同様の効果は見られたが、やや弱く、カフェイン以外の活性成分については現在探索中であるとのこと。
コーヒーを飲む人で、2型糖尿病の発症リスクが低下していることについては、Huxleyらが複数の疫学調査の結果をまとめたメタアナリシス/総説などから、かなり信憑性が高いといってよい状況にある。このような分析疫学の結果からは、実際のヒトにおける効果を見ている点で信頼性が高い一方、相関関係は見れても因果関係の立証が出来ない点に問題がある。因果関係を直接的に立証するためには、ヒトにおける介入試験が必要になるが、(タバコと発がんの関係のように)被験者にとって有害な可能性があるものについては倫理上実施が困難であるし(コーヒーについても、従前は有害性を主張された経緯などから倫理的に可能だと判断されるかどうか、まだ若干怪しい)、コーヒーのように「ありふれた」飲み物では長期間に亘って摂取量をコントロールした実験を行うことは現実的に難しい。このため、分析疫学の結果についてメタアナリシス等で、医学的根拠としての蓋然性を追求すると共に、比較的短期間に、ヒトと類似の疾患を自然発症するようなモデル動物を用いた実験によって、因果関係を間接的に調べるというアプローチが非常に重要なものだと言える。この論文は、現在世界的にも注目されている、コーヒーの糖尿病予防効果について、まさにこのような手法でのアプローチを行ったものだと言える。
同じモデルマウスでもKK-Ayの方が高発だとは言え、KKで発症頻度が減るかどうかを見る実験の方が、ヒトでの糖尿病のモデルとしては近そうな気もするのだけど、糖尿病モデルマウスについてはあまり詳しくないので、その辺りはよく判らない。ただし活性成分の検索については、もちろんKK-Ayの方が有用だろう。この研究グループが世界に先駆けて、より有用な成分を見つけることを大いに期待する。