コーヒーの脂質成分

コーヒーの脂質の大部分(約75%)を占めるトリグリセリドは、多価アルコールであるグリセリン(グリセロール)一分子に、長い炭素鎖を持った脂肪酸が三分子結合したものです。一般に「中性脂肪」と呼ばれる油脂成分で、動物や植物の脂肪分のほとんどがこれにあたります。コーヒーのトリグリセリドに結合している脂肪酸の種類は、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などがその主成分で、他の植物との大きな違いはありません。この他の脂質成分として、コーヒー特有の、カウラン型ジテルペン化合物である、カフェストールやカーウェオールが存在します。これらのジテルペンはそのままの形で存在するほか、大部分は脂肪酸とエステル結合した状態で存在しており、トリグリセリドに次いで多い脂質成分(全脂質の約20%)にあたります。この他、他の植物と同様、植物ステロールの一種であるβシトステロールやその脂肪酸エステル、ビタミンE(トコフェロール)なども、それぞれ少量ではありますが含まれています(全脂質の約5%)。また、生豆の表面にはコーヒーワックスと呼ばれる脂質が少量存在しますが、これには脂肪酸とセロトニンがエステル結合したもの(トリプタミンエステル)が含まれており、これもコーヒーに特有の成分です。