焙煎と甘味成分

コーヒーの甘味の元となると考えられている糖類のうち、ショ糖に代表されるような、生豆の段階から含まれている低分子糖類は、焙煎の過程でそのほとんどが消失してしまいます。これまでに述べてきた酸味物質や色素、苦味物質などに変化してしまうからです。特に、アラビカ種におけるショ糖含量の高さは、さまざまな酸味物質を大量に生成することで、アラビカの酸味の豊かさを生み出している最大の理由だと考えられています。東南アジアなどでは、ロブスタコーヒーを焙煎するときに砂糖を添加することがありますが、これはロブスタに不足する糖度を補充することで、少しでもアラビカの豊かな酸味に近づけようとする工夫の一つだと考えることができるでしょう。焙煎の過程で生じる単糖類などもショ糖と同様、一旦は多糖類から生成してくるものの、比較的短い間のうちに消失してしまいます。ただし、これらの単糖類の一部は浅煎り、中煎りなどの段階でまだ残っており、これが甘味を生じさせる元になっていると言われています。