Atanasov2006

Atanasov AG, Dzyakanchuk AA, Schweizer RA, Nashev LG, Maurer EM, Odermatt A.

Coffee inhibits the reactivation of glucocorticoids by 11beta-hydroxysteroid dehydrogenase type 1: A glucocorticoid connection in the anti-diabetic action of coffee?

FEBS Lett.:2006 Jul 24;580(17):4081-5.

コーヒー抽出成分に、ステロイド代謝酵素の一つである、11-β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11βHSD)を阻害する活性を見いだした短報。近年相次いで報告されている、コーヒーによる2型糖尿病の予防効果を説明する理由の一つになると著者らは主張している。

11βHSD は肝臓などに存在し、不活性型の11-ケトグルココルチコイドを、活性型の11β-ヒドロキシグルココルチコイドに変換する酵素であり、これによって体内の糖質コルチコイド濃度を上昇させる方向に働く。糖質コルチコイドは糖新生(アミノ酸から糖を作る)やインスリン分泌を促すことで体内の糖利用をコントロールしている。11βHSDの活性を阻害することでメタボリック症候群や糖尿病の動物実験モデルでは、発症が抑制されることがこれまでに報告されている。今回の短報では、コーヒー粗抽出物を用いて動物培養細胞を用いた実験を行い、耐熱性の極性成分(著者らはポリフェノールまたはフラボノイドを予想している)に11βHSD阻害活性を見いだした。

短報であるため、活性成分本体の決定や、実際に飲用したときに有効か(in vivoの動物実験など)などについては行われていないため、この段階で有用性を問うことはできない。糖尿病予防にはカフェイン、クロロゲン酸類、トリゴネリンなどの成分が、活性本体候補として挙げられてはきたが、実際のところはその作用メカニズムともども未詳である。

コーヒーによる糖尿病予防については、疫学調査の結果からかなりの多量を長期にわたって飲む場合にのみ見られることが明らかになりつつある。一方で、この量の長期飲用についてはまだいくつかの疾患の発生リスク上昇の可能性が排除されていないため、手放しで勧められないのが現状である。今回のアプローチのように活性本体を明らかにすることこそが、コーヒーによる糖尿病予防効果研究の進むべき、正しい方向性の一つであると言える。

薬学/天然物薬理:培養細胞を用いたin vitroでの酵素活性試験:コーヒー抽出物に11βHSD1阻害活性(重要度★★)