Huang2005

Huang ZL, Qu WM, Eguchi N, Chen JF, Schwarzschild MA, Fredholm BB, Urade Y, Hayaishi O.

Adenosine A(2A), but not A(1), receptors mediate the arousal effect of caffeine.

Nat Neurosci.:2005 Jul;8(7):858-9.

現在、カフェインによる覚醒作用は、脳のアデノシン受容体の阻害によるものであると考えられている。脳にはA1とA2Aという2つの種類(サブタイブ)のアデノシン受容体が存在し、それぞれドパミン受容体D1、D2と作用(それぞれアデノシンがドパミンの作用を負に調節)していることが判っていた。これまでにもカフェインは主にA2A受容体の阻害作用を介して、D2神経系を亢進させることによって覚醒作用を生むと考えられていたが、その証拠は得られていなかった。今回、大阪バイオサイエンス研究所のグループは遺伝子工学の技術であるノックアウトマウス作製によって、それぞれA1受容体、A2A受容体を持たないマウスを作製して、それぞれカフェインによる覚醒作用の影響を検討し、その結果A2A受容体を欠損したマウスでは覚醒作用が現れないが、 A1受容体欠損マウスでは正常と変わらず作用が現れることを見出した。この結果から、カフェインによる覚醒作用はA2A受容体を介するものであることが確証されたと言える。

カフェインはA1、A2Aのそれぞれに作用しうるが、このうちA1受容体への作用は、近年増加しているパニック症候群などの疾患を増悪する効果が高いとされる(D1神経系の活性化により幻覚などを生じることもある)。本研究の成果は、直接コーヒーの作用云々に影響するものではないが、コーヒーの覚醒作用を正しく理解するための基礎的研究として重要であり、また医学的には睡眠と覚醒のメカニズムを明らかにした点で重要な研究である。またカフェインに代わるA2A特異的な阻害剤の探索が、D1神経系への副作用の少ない中枢作用薬の開発につながる可能性を示している点でも興味深いと言えよう。

医学/神経科学:ノックアウトマウスの解析:カフェインの覚醒作用は中枢A2A受容体阻害による(重要度★★★★★)