コーヒーの甘味の謎

甘味はコーヒーの味の中で、もっとも謎の多いものの一つです。一般的に、甘味の元となることがわかっている甘味成分は、コーヒー中にそれほど多くはなく、実際に甘味を感じさせているかどうかは不明です。このような低濃度では、甘味を感じるか感じないかのギリギリの濃度、すなわち閾値に近いため、甘味の感じ方に対する個人差の影響も大きくなります。また、コーヒーの主要な味である苦味には、甘味の知覚を抑制する作用もあると言われていますし、またクロロゲン酸類は、その後に飲む水を甘くする効果があるとも言われていることから、甘味物質とは異なる他の物質が甘味の知覚に与えている影響も無視できません。

このように、科学的な解明を進める上での「悪条件」が積み重なっているため、コーヒーの甘味に関する研究はほとんど進んでいないのが現状です。今後の進展に期待したいところですが、一方ではやはり、なかなか難しいことも予想されます。もしかしたらコーヒーの味の中で、甘味は「最後の謎」になるものなのかもしれません。