抽出と脂質

抽出の方法の違いによって、コーヒー液中の脂質含量が変わることが報告されています。これは、カフェストールやカーウェオールなどのジテルペン化合物の含量の変化について研究されたものです30

これらのジテルペン系化合物は、浸漬式抽出であるフレンチプレスや、いわゆるボイル式にあたるトルココーヒー(ギリシアコーヒーも同じ抽出法)、また北欧式ボイルコーヒー(煮出して上澄みを飲む)でもっとも多く抽出されます(いずれも3-4mg/cup)。一方、エスプレッソではこの約半分程度(1.5mg/cup)であり、ペーパードリップやパーコレーター、インスタントコーヒーではほとんど抽出されませんでした。これは、いずれもジテルペン化合物についてのみ検討した結果ですが、脂質全体の抽出量もこれと同様に変化することが予測されます。

この結果から総合して考えると、抽出した後のコーヒー液から粉をろ過して除くかどうか(ろ過しないトルココーヒーやボイルで多い)、また除く場合には、抽出液が粉層を通過することになるかどうか(上澄みを取るフレンチプレスで多い)が、油脂の抽出量に大きく影響していると考えられます。またエスプレッソでの油脂の抽出量の多さは、抽出時にかける圧力の高さによって、豆表面から剥離する油脂量の多さによると考えられます。