Brown1990

Brown SR, Cann PA, Read NW.

Effect of coffee on distal colon function.

Gut. 1990 Apr;31(4):450-3.

コーヒー飲用に、緩やかな便通を促す作用(緩下作用)があることをヒトで確認した研究報告。

大学生ボランティアを対象に行った調査から、男女のうち29%(女性では63%)の人が、コーヒー飲用後に便意を催すことがあることを示し、さらにこれが大腸のぜん動運動の亢進によるものであることを実験的に証明した。この作用はデカフェでも見られたことから、カフェイン以外の何らかの成分によるものと考えられたが、その活性本体は不明である。

我々の身近にも「コーヒーを飲むとトイレに行きたくなる」とか「多く飲むと下痢をする」と訴える人がいるが、それはこの作用によるものと考えられる。飲用者全員に見られるという現象ではなく、作用が現れるかどうかには個人差がある点は興味深い。一般に瀉下作用を持つ薬剤には、大腸運動のみを亢進するものと小腸にも作用するものがあるが、小腸に作用するものには栄養吸収が阻害されるという副作用があり、また一般に効き目が強い傾向がある。これに対して大腸にのみ作用するものはマイルドに作用することが多く緩下剤とも呼ばれ、栄養吸収の阻害を起こさないため、便秘解消などの目的においては、より望ましいと言われている。

活性本体は現在も不明であるが、コーヒーには、食物繊維に分類されるヘミセルロース、特にアラビノガラクタンやアラビノマンナンが多く含まれている。これらが難消化性繊維として作用する可能性があるとともに、アラビノガラクタンや、焙煎過程でこれらのヘミセルロースが分解して生じるオリゴ糖(俗にコーヒーオリゴ糖と呼ばれる)などは、一部の腸内細菌の栄養源として増殖を促すことで腸内環境の変化をもたらす可能性も考えられる。