補記 流産とそのリスク

流産とは「妊娠22週未満で妊娠が終結し胎児が死亡すること」を指します。この「妊娠22週」は、これ以降ならば胎児を体外で生育できる可能性があるということから出される数値(日本での基準値)であり、これ以降37週までに生まれた場合を「早産」と呼びます(それ以降は通常の分娩とされます)。 22週以降に胎内で胎児が死亡した場合には「死産」と呼ばれます。医学の発展に伴って、妊娠期間が短い場合でも胎児を生存させることがどんどん可能になってきたため、以前はもっと遅い時期まで流産に該当しましたし、今後も流産に該当する期間が短縮されていくことも予想されます。

妊娠したケース全体の約15%程度に自然流産が生じると言われています。また妊娠してから診断を受けて判明するまでの間にも自然流産を起こすケースがあることが知られており、このようなケースまで含めると、全妊娠の約50%が自然流産に当たるとも言われます。その原因は、胎児側の要因(染色体異常など)によるものと母体側の要因(子宮や頸管などの異常や外的要因)によるものとがありますが、多くの場合、流産は発達不全を起こした胎児を自然に拒絶するために起きるものだと考えられています。妊娠とは、言わば「ヒト一人分の体を一から作り出す」という大変な仕事ですから、どうしても途中で上手くいかなくなってしまうこともあり、それが全体の15%くらいは存在するのだ、とも言えるかもしれません。流産のリスク因子としては、過去に流産を繰り返していること(習慣性流産)や糖尿病、特定の病原体による感染症、特定の薬剤、高齢出産、喫煙など多くのものが知られており、これらが単独、もしくは複数組み合わさることで流産のリスクが高くなると考えられています。