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諸君、私は珈琲が好きだ

諸君、私は珈琲が大好きだ

ドリップ珈琲が好きだ

サイフォン珈琲が好きだ

エスプレッソが好きだ

インスタント珈琲が好きだ

缶珈琲が好きだ

ブラック珈琲が好きだ

ブレンド珈琲が好きだ

カフェオレが好きだ

アイス珈琲が好きだ

喫茶店で 自宅で

友人宅で 職場で

客先で レストランで

車中で 屋外で

この地上で提供されるありとあらゆる珈琲が大好きだ

老練な珈琲職人がフランネルの漉布に正対し真剣な眼差しで一滴一滴抽出するのが好きだ

琥珀を思わせる濃厚で澄み切ったその一杯が目の前に運ばれてくる時など心がおどる

バリスタが操るマシンが芸術的な一杯のエスプレッソを抽出するのが好きだ

赤褐色のクレマで覆われたデミタスにたっぷりの砂糖を入れて飲み干す時など胸がすくような気持ちだった

ドリップポットからの湯流がドリッパー内の粉に「の」の字に注がれるのが好きだ

真新しい制服を来たアルバイトの子が震える手つきで慎重に慎重に注いでいる様など感動すら覚える

サイフォンの中の湯がガラスフラスコの上に登っていく様などはもうたまらない

上がり切って湯気を立てていたお湯が私がアルコールランプの火を消すと同時にこぽこぽと落ちていくのも最高だ

たまたま入手できた希少品の生豆を自分の思い通りに煎り上げ、抽出できた時など絶頂すら覚える

一粒の欠点豆に滅茶苦茶にされるのが好きだ

選別時に見逃したたった一粒のカビ豆が一釜分の焙煎豆を台無しにしてしまう様はとてもとても悲しいことだ

長時間加熱したまま置きっぱなしにされた珈琲が好きだ

気合いを込めて焙煎した珈琲がぞんざいに抽出され、ホットプレートの上で酸っぱく苦く変質してしまうのは屈辱の極みだ

諸君 私は珈琲を麻薬のような珈琲を望んでいる

諸君 私に同意する愛好家諸君

君たちは一体何を望んでいる?

更なる珈琲の探求を望むか?

情け容赦のない珈琲の探求を望むか?

悪魔のように黒く地獄のように熱い珈琲を望むか?

……

よろしい ならば珈琲だ

珈琲の探求を!

一心不乱の探求を!

(平野耕太『HELLSING』第4巻、少年画報社、2001を元に改変)

…まぁ、ウチの基本姿勢はこんなもんです。

美味いに超したことはないけど、不味いコーヒーもまた面白い。とりあえず「コーヒー」と名のつくもんなら、何にでも興味は示します。