小括:コーヒーの苦味物質と焙煎

以上の結果をまとめた「コーヒーの苦味の概要」について考えられる図式を右23に示しました。ただし、これらの苦味物質のうち、(1)抽出液中の濃度、(2)苦味の強さ、(3)焙煎による経時変化、がすべて判明しているものはごく少なく、カフェインと、最近報告があったクロロゲン酸ラクトン類くらいです。これ以外の苦味物質が、実際にどの程度までコーヒー全体の苦味に寄与しているかについてはまだはっきりとしていません。クロロゲン酸ラクトン類についても、その構造の違いによる量比や呈味の違いなど、まだ謎の残っている部分が存在します。またクロロゲン酸ラクトンは、その化学構造から見ると、抽出液中でラクトン構造が加水分解してクロロゲン酸に戻る可能性も考えられますので、その水溶液中での安定性についても解析が待たれるところです。コーヒーの苦味に関する研究は、この数年で飛躍的な進歩を遂げましたが、まだまだ未解決な部分も残っています。今後の研究の進展によって、これまでに見つかった苦味物質がそれぞれどのくらい全体の味に寄与しているか、またこれ以外の苦味物質が存在するのではないか(メイラード反応生成物などに苦味物質がないか)という疑問への答え、さらにはコクとキレとの関係なども、徐々に明らかにされていくことが期待されます。前(余談:代用コーヒーの苦味)<