Lepelley2007

Lepelley M, Cheminade G, Tremillon N, Simkin A, Caillet V, McCarthy J

Chlorogenic acid synthesis in coffee: An analysis of CGA content and real-time RT-PCR expression of HCT, HQT, C3H1, and CCoAOMT1 genes during grain development in C. canephora

Plant Sci: 172, 978-996 (2007)

カネフォーラ種でのクロロゲン酸類生合成経路を解析した論文。種子形成後期のクロロゲン酸類プロファイルの解析結果から、種子のクロロゲン酸レベルは成熟末期にも維持されているが、イソクロロゲン酸類(diCQAs)のレベルやキナ酸の含量は成熟に伴って減少していた。また本研究では、コーヒーノキから初めてクロロゲン酸類の合成に関わる酵素のうち、HCT(hydroxycinnamoyl-CoA shikimate/quinate hydroxycinnamoyl transferase: コーヒー酸などとキナ酸/シキミ酸からのクロロゲン酸類の合成を触媒)、HQT(hydroxycinnamoyl-CoA quinate hydroxycinnamoyl transferase: コーヒー酸などとキナ酸からのクロロゲン酸類の合成を触媒)、C3H (p-coumarate 3-hydroxylase:クマル酸からコーヒー酸への反応を触媒)、CCoAOMT (caffeoyl-CoA O-methyltransferase:カフェオイルCoAからフェルロイルCoAへの反応を触媒)をクローニングしている。またHCT, HQT, CCoAOMTの発現が枝組織に多く、リグニン合成と関連していることを明らかにした。

クロロゲン酸類の生合成経路については、まだ研究が少ないこともあって、どのような経路で進行しているかについてはいくつかの説がある。大筋としては、フェニルプロパノイド経路の産物であるコーヒー酸やフェルラ酸などとキナ酸から合成されるが、この両者がどのタイミングで結合するのか(先にクマル酸がキナ酸と結合した後でコーヒー酸やフェルラ酸になるのか、それとも先にコーヒー酸やフェルラ酸を生じるのか、そのとき遊離酸の状態で変わるのかCoAに結合した状態で変わるのか)などの細かい点についてはまだ統一された見解が得られていない。芦原教授らが同年の秋に発表した研究成果(Koshiro2007)なども、これを解明する上で有用なものである。これらの研究をさらに進めていく上で、この研究で行われた酵素のクローニングが重要な基盤になる。

ただしコーヒー酸とキナ酸からクロロゲン酸の合成を触媒するHCTについて、本研究では5-CQAについての活性のみが検討されている。コーヒーには、5-CQA以外のクロロゲン酸類、3-CQAや4-CQA、あるいはイソクロロゲン酸類などが含まれており、これらのクロロゲン酸類プロファイルが香味に影響することが示唆されているため、今後、これらがどのようにして合成されているかについての研究が期待される。