Farah2006b

Farah A, Monteiro MC, Calado V, Franca AS, Trugo LC

Correlation between cup quality and chemical attributes of Brazilian coffee

Food Chem: 98, 373-380 (2006)

ブラジルのアラビカコーヒーの品質と、それぞれに含まれる代表的な成分量との相関を検討した論文。その結果、生豆または焙煎豆中のトリゴネリンおよび3,4-ジカフェオイルキナ酸(イソクロロゲン酸類の一つ)の含量が多いほど品質が高く、カフェインでも若干同様の傾向が見られた。一方でカフェオイルキナ酸(クロロゲン酸)やフェルロイルキナ酸、およびその酸化体の量が多いほど、いわゆるリオ臭とよばれるオフフレイバーが強く、品質が低かった。

興味深い報告ではあるものの、統計処理上の問題があり、解釈および応用範囲は限定的に捉えなければならない。特に問題なのは、複数の因子を用いておきながら多変量解析として行っていない点である。つまり、本来であればイソクロロゲン酸類の量とクロロゲン酸類の量には何らかの相関が生じていると判断するのが妥当なのにも関わらず、それぞれ個別に相関係数を見るに止めている点。このため、例えば「3,4-ジカフェオイルキナ酸の量の多さが品質の善さにつながる」等の解釈をすることはミスリーディングに当たる。せいぜい「現在ブラジルコーヒーとして集荷されてる中で、工学的に品質評価をするときの評価パラメーターの候補になる」程度のことしか言えない。このような解析手法を用いたことについて、考察の中に著者のエクスキューズは一応はあるものの、オーバースペキュレーションな主張がなされている点で、読者側で注意しなければならない論文である。サンプル数を増やした上で、多変量解析を行うことが要求される。

ただし、それぞれの成分濃度とカップクオリティの関係を明らかにするという研究の方向性自体は素晴らしいものである。特にこのためにはカップ評価の手法が確立していることが大前提になるため、認定士制度の歴史が長いブラジルで行われたことは有意義だと言える。また多変量解析を行ってはいないといえ、ある程度の傾向として知る上では役に立つ部分もあり、その意味では興味深い論文だといえる。