コーヒーの脂質と味

コーヒーの脂質そのものに「味」そのものがあるかどうかについては、よく判っていないというのが現状です。しかし一般に、脂質は他の味物質と共存して、コクを生み出すと言われており、コーヒーの脂質もこのような役割を担っているかもしれません。

また、脂質は味成分だけではなく、コーヒーの香り成分の保持にも影響すると考えられています28。香りの元となる揮発性の成分には、「精油」とも呼ばれるように、油脂に近く脂溶性の高いものが多く存在します。コーヒーの香り成分は、カップの表面から揮発して、直接鼻に届くものだけでなく、コーヒーの液体の中に保持されていて、それが飲んだ後、口腔から鼻腔に到達して、いわば「鼻に抜ける香り」を感じさせるものもあり、コーヒーの広義の「味」の形成に重要な役割を果たしています。コーヒーの脂質は、このような香り成分を舌の表面に一旦保持し、そこから徐々に放出することによって、鼻に抜ける香りが長時間持続して感じられるようにするという効果があると言われています。