コーヒーの脂質

コーヒー豆を焙煎した後で保管していると、表面に油、すなわち脂質が浮いてくることがあります。この傾向は深煎りの豆ほど顕著です。抽出されたコーヒーにも脂質が入り込み、抽出量が多いときには、液面に油滴が見えるほどになりますが、脂質はもともと水に溶けにくい疎水性の成分であるため、コーヒーに抽出されてくる量は脂質全体からみると、わずかな量にとどまります。しかし、脂質にはコーヒーの味成分や香り成分を舌表面に止める役割があると考えられ、コーヒーの味わいにも影響すると考えられています28

ナタネ(含油率40%)やダイズ(20%)、ゴマ(50%以上)などの搾油作物には及びませんが、コーヒー豆は植物としては比較的多くの脂質を含んでおり 、その含量は生豆中の約10〜16%にのぼります29。その大部分は豆の内部に含まれており、トリグリセリドと呼ばれる、他の食品にも見られる一般的な油脂分がもっとも多く、この他、コーヒーに特有の脂質としてカフェストールなどのジテルペン化合物なども含まれます。また、脂質の一部は豆の表面にもワックスとして存在します。ロブスタよりもアラビカの方が多くの脂質を含んでおり、このこともアラビカの品質の高さの一因を担っているといわれています。