二人が長い間抱えていた冬のように冷たく寒い心は溶解し、今はカカシの部屋で何を言うでもなく少し緊張した互いの顔を見ている。
カカシは久しぶりのナルトの笑みを感慨深く見つめる。多大な決心と共にもたらされた告白を断ってからはナルトを正面から捉える事はおろか、姿さえ見られない日々が続いていた。
「へへっ・・・なんか今になって面と向かい合うってのは恥ずかしいってばよ」
「オレは嬉しいよ」
そう微笑むカカシは自分が持っている温かいカップとナルトのカップを静かに窓際の棚に置いて相手の身体を抱き締める。
「ずっとこうしたかった」
二人の体重が僅かに移動してカカシのベッドがギシッと小さく軋む。
「カカシ先生」
ナルトは両脇に垂れていた手をそっとカカシの背中に回し両肩に掛けて身体を密着させた。
「なあ、オレとカカシ先生って両想いなんだよな?」
静かな声音は心の拠り所を確かめるようにカカシに問い掛ける。
「そうだよ。さっきそう言ったろ?」
カカシは安心させる仕草でナルトの背を撫でた。しかし己が長らく嘘を吐いて待たせた所為で心細いのだろうと思った上忍の見解は外れていたらしく、気を抜いていた彼の身体は派手にベッドに押し倒された。
「カカシ先生大好きだってばよ!」
チュッと唇にキスをされて漸く我に返る。
「こらっ重いだろ!」
「あははっ大好き大好き、すっげー好きだってばよ!」
ナルトはカカシに跨ったまま次々と唇から頬、首筋にキスを落としていく。
それに不吉なものを感じたカカシは慌てて起き上がろうとするが、青年の力は細い腕に反して意外と力強く押さえ付けていた。
「ナルトッ!どういうつもりだ?やめろって」
自分はする方であって男にされる方じゃない。
カカシはナルトの頭を引き剥がそうと必死だ。けれどドキッとする程の余裕を見せるナルトは悪戯小僧の笑顔で、
「オレの方から告白したんだからオレが上だってばよ!」
高らかに言い切った。
「は・・・」
面食らったカカシはぶんぶんと激しく首を横に振る。
「何言ってんの!オレの方が先にお前に目を付けてたんだよ!」
まったく、まったく、この子は何を言い出すのか。オレが上に決まってんデショ!
カカシは目一杯拒否したが相手もつわものだ。一瞬むくれた表情を見せたものの、すぐに元の顔に戻ってカカシを見下ろした。
「順番なんか関係ねーってばよ!」
あのな、お前が言い出したんだろ?
カカシは伸し掛かる年下の男に眩暈がした。
「とにかくどけって」
「やだっ!」
ナルトは意地でも離れてやるものかと押さえ付ける腕に力を込めて、カカシの首筋に唇を寄せた。
「カカシ先生可愛いーってばよ」
吸い付いた唇は熱く、柔い皮膚にじんわりと熱を伝える。それだけではない、息と共に吐き出された舌がねっとりと肌を這い思わずカカシは声を上げた。
「あっ、こらっ、やめろって・・・・っつ!」
更に耳の下の弱い部分に歯を立てられ無意識に息を詰め瞼をきつく瞑った。ナルトはその隙を逃さず噛み締める唇に齧り付き、丸ごと食い尽くすように浅く深く、拒み続けるカカシに何度も何度も音を立てて口付ける。
「んっやめっ・・・んんっ」
カカシは幾度も逃れようとしたがその度にナルトの唇がしつこく追い回しては捕まえる。その繰り返しと息苦しさに堪えかねたカカシはついに唇を僅かに開けてしまった。
「チュッチュッ・・・カカシ先生ー」
「ん!?・・・んふっ・・・・んんんっ」
すかさず入り込んだナルトの舌は奥で縮こまるカカシの舌を絡め取り、淫猥な水音を立てて交わり合う。
「んーーー!んっ・・・・!!!」
予想外のナルトの口付けに翻弄されたカカシは力の入らない微かに震える指先で相手の服に触れた。それをナルトは目の端で捉えると、腕の力を緩めてそっと唇を離した。何度も重ねた二人の唇は充血し腫れぼったい。
カカシは唇を半開きにして喘ぎ、呼吸困難の為に潤んだ瞳でナルトを見上げた。
「はあっ・・・はあっ・・・お前っ!・・・・こんなっ、はあっ、キス、どこで覚えたんだよっ!」
この歳になってキスだけで腰砕けになったとはとても言えないが、それ程元教え子のキスは強烈だった。どこぞの誰かが教授してやったのか、そう考えるだけで嫉妬が渦巻くのにそれに翻弄されてしまった自分が悔しいとカカシは思うのだ。
「どこでって・・・ぷっ・・・クスッくくくっ先生ーってば可愛過ぎだってばよ~」
一度は離した体に抱き付き今度はカカシの線を確かめるようになぞり出す。
「あっ」
カカシが声を上げてナルトを見るとその顔はもう笑ってはいなかった。
「ずっと好きだったってばよ」
真剣な瞳からナルトの真摯な気持ちが伝わってくる。
こいつは本当にオレの事が―――。
「いいよナルト」
カカシは体の力を抜き両腕を広げた。
「カカシ先生・・・・」
「お前にならオレをあげられる。全部お前にやるよ」
「カカシ先生ッ」
カカシが許すとナルトはとても嬉しそうに花が綻ぶような笑みを見せた。
それから二人は互いに唇を寄せ、もみくちゃになりながら服を脱がせ合った。
「アッ・・・ナル・・トッ!」
「カカシせんせっ・・・・イイッ?」
息も吐けない程の快楽の中二人は抱き合い、ナルトの問い掛けにカカシは何度も頷いた。お互い裸だというのに照れはなかった。あるのは相手を欲しいと想う気持ち。
「いいっ・・・よ・・・あっああっ」
ナルトが激しく腰を動かす度にカカシは体内のまだ若い雄を感じ背を撓らせて喘ぐ。
「ココが、イイッてば?・・・クッ・・・せんせーすっごい、締め付けてキツ・・・もってかれちゃいそーだってばよっ」
当然といえば当然。過去に使った事が無い訳じゃないが、久しぶりに開いた其処は今迄固く閉じていたのだから。
「くうっ・・・」
ナルトがカカシの胸に体を倒すと背に回されたカカシの指が呻き声と共に爪を立てた。
「っつ・・・」
痛みに思わず眉を寄せるが、己の下で喘ぎ色香を放つカカシが目に入るとそれは甘く変化した。
「くううっカカシ先生っ・・・も、出る、出ちゃうってば」
「はっはっナルトッ・・・オレもッ」
ナルトは目の前の屹立に手を伸ばし上下に強く扱いた。
「あっあっあああ!」
荒々しい波が押し寄せカカシは堪え切れずあられもない高い声を上げて、目の前がチカチカスパークするのを感じながら達した。
「はっ・・・・くっ・・・・オレも、イクってばよっ?」
そして息も整わぬ内に汗で濡れたナルトの両手がしっかりとカカシの腰を掴み直し、ぐちゅぐちゅと激しい抽挿を繰り返し始めた。容赦なく突き上げられ、揺さぶられ、ガンガンと煩い耳鳴りが頭に響く。
「あああっナルトッナルトッ!」
焦点を失った彼の銀の髪がナルトの視界でパサパサと舞う。
「はあっ・・・はあっ・・・カカシ先生!」
ナルトもまた荒い呼吸で恋人の名を呼び、鋭く一度突いた後カカシの奥底にビュルビュルと精を吐き出した。
「はあっはあっはあっ」
全力疾走した後みたいに乱れた呼吸を繰り返し、ナルトの熱い身体は同じく熱を放つカカシの胸に倒れる。そしてカカシの大きな手が頭に触れ、長い指が汗で湿った髪を梳くのを心地良く感じている内にウトウトとした眠気が襲ってきて、ナルトは穏やかな時に包まれて瞼を閉じた。
二つの速い鼓動が重なり、本当に一つになったんだと感じた。
おやすみってばカカシせんせい。