その猫の足跡
「カカシ先生」
「なんだナルト喉が渇いたか?」
ベッドの端に腰掛けるカカシは水差しを取ろうと腰を浮かしかけて止まった。
ナルトのいつもよりも細く見える手が彼の腕を掴んでいた。薬は抜けたものの体力は回復しておらず顔色も余り好くない。
しかし微かに頬が上気している。
その目に僅かな余韻を感じてカカシは視線を止めた。
「カカシせんせい」
「ナルト―――」
言いたい事は分かったが苦しげにゆるく首を振る。
「駄目だよ、まだ安静にしてなきゃいけないだろ?・・・・第一綱手様が怒る」
「・・・ぃいってば、そんなの・・・ばあちゃんが怒ったって」
「駄目だナルト」
カカシの制止が聞こえないのかナルトは切ない目の色でカカシをみつめる。
「それより・・・この体が熱くて・・・オレってばもう・・・」
自らシャツに手を掛ける腕にはまだ点滴が刺さっていた。だがこんな事は普段無くカカシは目を瞠り息を呑む。
「もう我慢できねェんだってば―――」
ぷつぷつとボタンが外れカカシの目は釘付けに、ナルトの手は更に彼を引き寄せ靡(なび)く空気に思わず理性は埋もれた。
「ずっと、ずっと体中が疼いてて・・・・んでもどーしよーもなくって・・・早く解放してくっればセンセッ!」
切実に訴えるナルトの願いをカカシは振り払えなかった。
薬は確かに綱手の対処法で取り除かれた。けれど一度覚えた快楽の波と放出を許されなかった長い期間の疼きは不燃焼のままナルトの体内に留まっている。
幾ら処置を終えたと言ってもけじめをつけなければ良くならない。
理解しながらカカシは罪悪感の残る手でナルトに触れた。長く触れていなかった肌はそれを知らなかった頃の様に少し余所余所しくカカシを迎える。
外の喧騒からは遠い角部屋だが、用心してカーテンを引き入口には封印術を施した。
「先生ってば!」
急かすナルトは早く弄って欲しいが為に体を捩るがその部分は固く閉じている筈で無闇に抉(こ)じ開けるのは躊躇われる。
「はいはいちょっと待ちなさいって」
「いっつも・・そー余裕ぶって!」
「これでも精一杯なんだって」
その言葉は嘘ではなかった。もう一週間どころかそれ以上は触れ合っていないのだからカカシの下腹部も大きく盛り上がっている。
「点滴外した方がいいか」
「だからっそんなの良いってばっ」
「いつもこれくらい積極的ならいーのにね」
カカシは目を細めて組み敷いたナルトの首筋や肩口、脇の下まで唇を落とした。
「っ・・・」
些細な快感がさざ波の様に体のあちこちから起こり、ナルトは益々強請る仕草で腰を揺らす。
「アッ・・・」
不意に二つの胸に舌が絡んで思わず息が上がった。カカシは執拗に嬲りナルトの意識を追い込む。こんな事ができるのはこの男の特権だった。
ほの暗い思いでそれを実感しながら少しずつ脱ぎ、脱がせてゆく。
左手はナルトの腰をなぞり右の細長い指は二人の下肢のモノを包んだ。
その手は緊張のためか冷たく一瞬体が強張る。だがすぐに温かくなり期待に息が震えた。
「あぁっ」
「ふ・・・一緒に擦ろうか」
先走りで僅かに濡れているだけでは痛みが多い。カカシは病室の棚にあった適当なクリーム(誰かの忘れ物か)で二人を濡らしぬちぬちと擦り始めた。
「んんっんぅっ―――」
自分で擦る事も儘ならず長く待ち侘びていた快楽が恋人の手によって漸く齎された。
ナルトは喜びの息を絶え絶えに吐きながらカカシの背中に手を回した。
「くっ・・・はっ、はっ・・・」
カカシも久し振りに本気になって没頭し随分丁寧に時間をかけて互いを擦り合わせ愛撫した。
「あっあっせんせっ!」
「ナルトッ」
カカシは限界を迎えたナルトを先にいかせ、自分は寸止めで彼の体を多少手荒くひっくり返し、先程のクリームを後ろに塗りたくった。
「アーッ・・・・」
ビュクッビュクッと白いシーツに放出し快楽を解放しながらもまだ後ろをひくつかせるナルトを舌なめずり見下ろしカカシが腰に手をかける。
「すぐにお楽しみを挿れてやるよ」
豹変した様な乱暴な扱いにもナルトは朦朧としながら頷く。
「あ、ひゃ・・・ッ」
ぬっと双丘を割り入った先端がぐりぐりと焦らしなぞる。
「ああっあァッ・・・」
ナルトは頭を振り早くと願うが、先程の言葉とは反対にカカシはゆっくり唇を嘗め、同じ仕草で後ろをなぞる。
それによりカカシのそれはいっそう大きく膨らみ、ここまでの我慢も手伝って挿入してしまえば最後ナルトの体を壊してしまうのではないかと思う様な迫力ぶりだ。
「挿れるぞ」
返事を聞かず問答無用に熱り(いきり)立ち血管の浮いた一物を押し込んだ。
「アーーーッ」
「ぐっ・・・」
待ち侘びたとはいえかなりきつい所作に二人が同時に唸る。
それでもぐりぐり押し入れば内側の肉はカカシの姿形を思い出した様に飲み込む。
「ぁっぁっ」
他の言葉を忘れてしまったナルトは、はあはあと喘ぎ引いては押し引いては強く突き上げるカカシに精一杯ついていこうとする。
「まーだまだ、長いから覚悟しなさいね」
そう言うカカシも額に汗を浮かべて限界ギリギリの表情だ。
「ヤッ・・・」
ずるんと抜きかけるカカシに追い縋るが、すぐにズッと付き上がってくる。
「あああっ」
外に出て冷えたカカシのそれが一瞬で熱くなる。奥を衝きじゅぶっじゅぶっと音を立てながらこんな悦楽を与えられるのは己だけなのだと主張する。
「ひゃああっひゃああっはくんっぅくっ」
意味のないセリフと涎がナルトの口から溢れ出る。
「あーあ、顎が汚れちゃってるよ」
カカシは笑って奥まで突き上げた状態でナルトの唇を奪う。そして予告なく突然弾けさせた。
「んんんっ!?」
「ん・・・く、・・ハッっ!・・・・ごちそーさま」
カカシは相手が理解する間を与えないままに再び体をひっくり返して下肢をずらした。
「ん、今日のナルトは顔も汚れちゃうねぇ」
言いながら確信的にナルトの顔に今放ったばかりの己を擦り付ける。
「!?カカシせんせっ」
「できるよな?教えた通り」
カカシが過去に教育したお蔭でナルトは立派にその一物を愛撫できるようになっている。
それを暗示させて彼はナルトの口に自らを押し付け喉の奥まで銜えさせた。
「はふぁしふぇんふぇぇー・・・」
泣きそうな顔に逆に興奮したカカシは首を振る。
「お前が誘ったんだから最後までお片付けしなきゃでしょ」
こうなったらこの男は退かない。
夜の顔を承知しているナルトは頷いて丁寧に嘗め上げ時に吸い上げ、決して噛まない様に愛した。それからそろりそろり根元に指を絡ませ玉の方も刺激した。
「いいよ、とても」
褒める顔は冷静さの欠片もなく興奮して息を上げている。
ちゅっちゅっとキスをする音も良く、カカシは呆気なく二度目の白濁をナルトの食道に流し込んだ。
「クッ・・・最後まで、飲むんだ」
ナルトの後ろに挿れていた時の如く腰を揺らして一滴も残さない様に強要する。
「ん、ごくっごくん・・・・はぁ・・・」
疲れきったナルトはだらり落ちかける両手を何とかもたせ、カカシのそれを綺麗に嘗め上げて全身虚脱した。
「はい、よーく出来ました」
最後は沢山褒めて頭を撫でまくり、カカシはナルトを抱き締めてベッドに沈んだ。
「フゥ」
溜め息を吐きたいのはナルトの方だろうが、カカシも恋人を壊さずに済んだ事、何より彼が無事に戻って来たことに安堵して目を閉じた。
当然ながらこの後綱手の強烈な雷が落ちるのだが、それまではまだ少しの休息。
END