木ノ葉学園物語 先生の足跡
※この話はオフ本『先生の横顔』の後日、補足編。カカシの大学生時代の話です。ナルトは登場しませんがミナトパパが出ています。
白く長い廊下だ。真っ白な空間ではないが全体のイメージとしてはそう感じる。
そのリノリウムの床に落ち着いた足音が響く。呼応するように窓の外の葉が静かに揺れる。
ここは木ノ葉学園、大学部の研究棟だ。
「先生!」
夏を過ぎて暑さ和らぎゆったりとした午後、穏やかな陽の中をゆく、世界でも指折りの学者は若い声に呼び止められて振り返り、素の顔を笑顔に変えてやあ、と軽く右手を挙げた。同時に白衣のポケットに突っ込んでいた左手を出して、学生が追い付いて来るのを待った。
「やっと見つけましたよ先生。急に居なくならないで下さい!リンとオビトなんてまだ四方を探し回ってますよ」
「うん、ごめん。急に思い出した用件があったんでね」
「だからって一言残して行って下さい。心配しますから」
「まだ心配される歳じゃないんだけどね」
そう言う学者の風貌は恐らく二十代後半から三十代前半だろうと推測できる程に若い。しかし教授職に就ける平均年齢が五十四歳である事を考えると、とても奇妙に思う。恐らく異例の措置がなされたのだろう。
「モメド氏が来日しているんだよ。例の物と共にね」
「えっ、あれって国外持ち出し禁止でしたよね・・・もしかして研究許可が下りたんですか!?」
「ん、どうやらそうらしい。で、木ノ葉学園に氏が来るんだ。って事を昨夜知らされてたんだけど、すっかり忘れてた」
師のうっかりを聞いた青年は信じられないという表情を浮かべたが、しかめた顔を元に戻して取り敢えずはおめでとうございます、と祝言を述べた。
「と、もう一つあったんだけど、それはまた後で」
「はぁ、何ですか勿体振って」
ふふっと笑って人差し指を口に当てる姿は実に子供っぽい。
が、非常に珍しい光景だった。
楽しそうな仕種は日頃から目にしているが、こうも嬉しさを前面に押し出してアピールする所は見た事がなかった。
だから余程の事が起きたんだろうと直感的に覚る。
青年はそれ以上余計な事は聞かず、教室に戻るべく歩き出して既に角を曲がろうとしている師の背を急いで追い掛けた。
そうだ、今日がレポートの提出期限だ。
カカシは、はっとして目を覚ました。
急いで大学に行って仕上げてしまわなければ。
史学科の波風教授は一見優しい印象の人当たりも良い教官だが後継者の育成には厳しい人だ。
成績が低くとも真面目に取り組む学生には寛大だが期限には厳格だ。
またその厳しいイコール真剣という事で彼のゼミは好評を得ているのだが。
そこまで本気で考えて我に返った。
「オレは何を馬鹿な」
最近やっと過去から解放されたというのに、また別の過去に囚われようとしている。
あなたはもういない。
その事実を受け止めなければ。
しかし珍しい内容だった。
「何年ぶりかな」
学生時代の夢など司書になってからは一度も見ていない。普段見る夢には職場の学生達か社交辞令程度付き合いのある人間しか出てこない。それらは全て現在進行形だ。過去の物事は一つとして無い。
けれど今さっき目にしたのは遠い昔の出来事だ。
あの頃を未だに鮮明に覚えている自分に驚く。否、日頃は奥の引き出しに仕舞われているだけなのだろう。
原因は一つしか思い浮かばない。
「アイツの所為だな」
土砂降りの日の招かれざる客を思い出して頭を振った。
『波風博士』というフレーズも久し振りに聞いた。それはカカシが意図して長い間避けてきた名前だった。
今でも多くの文書にはその名が刻まれている。職場に行けば容易に彼の論文を読む事が出来る。けれどカカシは不自然なくらい自然に恩師の影を忘れて生きてきた。
自分の過去を清算する切っ掛けを与えた、ひとりの学生に出会った時にも全く思い出されなかった程に。
カカシはベッドを出て洗面所で顔を洗い歯を磨き、クローゼットを開いて服を取り出した。
時刻は午前七時三十五分四十八秒。
いつもより出だしが遅いが出勤時間の八時半には間に合いそうだ。
八枚切りの食パンを一枚トーストして珈琲を淹れた頃には、夢の終わりに師が濁した事は頭の隅に追いやられていた。
カカシは命令一つで資料を持って来させようとする学生に(または教官に)物を投げ付けてやりたくなる時がある。
今の状況がそうだ。
「先輩ボクが行きますよ。その方が業務に影響ありませんし」
「ありがと。でもま、平気でしょ。テンゾウのその気持ちだけ貰っとくよ」
資料運びも業務の一環と捉えているカカシは雑用を厭わない。一人の男子学生と共に大量の書物を研究棟に運んだのは記憶に新しい。
問題は頼む側の態度だ。
「だけど酷いですよねぇ、忙しいから頼むよ。ガチャッ!だなんて。開館前にすまないが・・・くらいは付け加えて欲しいですよ」
「ん~」
カカシは曖昧に笑って否定とも肯定とも取れる相槌を打った。
資料は既にテンゾウが探し出して手元に纏められている。彼は物探しが上手く、とても速かった。
「ここでグズグズしていてもしょーがないな。急かされない内に行って来るよ」
テンゾウに軽く手を上げてカウンターを出た。
「教授の研究室まで届けて欲しいそうです。大した荷物じゃないんだから、大学部の受付まで取りに来ればいいのに」
「余程忙しいんだろうさ」
カカシはテンゾウの愚痴に苦笑しつつ外へ出た。
今日の空は先日の土砂降りが異常だったのだと思えるくらい澄み渡っている。うっかり『春の歌』を口遊(くちずさ)みそうな程に。カカシの柄ではないが、ただひとりそれが似合う少年が浮かぶ。恋人というのも照れ臭いが彼ならしそうな気がした。
その研究室はすぐに見つかった。
ところがドアのノブには『不在』の札が下がっている。ノックをしても返事はない。
教授会に出席しているのかもしれない。勝手に入るのは失礼だし、そもそも鍵が掛かっている。
カカシはどうしたものか悩み暫くその場に立ち尽くしていた。すると程無くして、テンゾウ曰く『なっていない』教授が姿を現した。
でっぷりとした立派なお腹を抱えた男だ。本当はもっと若いのだろうが白髪の多さが実年齢よりも老けて見せている。
カカシがお忙しいところ・・・と言うと、意外にも彼はとてもすまなさそうに眉を下げて資料を受け取った。
どうやら本当に忙しかっただけらしい。少し不味い対応だった事は本人も分かっているのだ。
彼は礼を言うとカカシに飴を差し出した。
これが原因だと思ったカカシは親切心から少し控えた方が良いですよ。
とは言わなかった。親切だが余計な事だからだ。素直に頂戴してポケットに収めるとその場を後にした。
「子供の御使いみたいだな」
『飴』と考えて思い浮かぶ事がある。
カカシが高校生だった頃、まだ幼馴染みだったリンがよく飴を持っていた。種類はいつも違うのだがお気に入りは三角形の苺飴らしかった。味は他にもあったが、リンはメロンよりもイチゴだった。
カカシが好んで食べる事は無かったが、初めて貰った時には首を傾げた。飴と謳っているのに噛んで食べるのである。
キャンディー類に関しては、彼女だけでなく殆どの女生徒が常備しているようだった。『装備』の項目に『キャンディー』があるのではないかと疑ったほどだ。
甘過ぎる物が苦手なカシには理解できない生態だった。
ある日学習室で二人が予習をしていると、それまで他の生徒と話をしていた太った顔見知りの教諭が近付いて来た。教室を出て行く途中でたまたま二人の前を通ったのだ。しかし彼はふと足を止めると、机上にあったリンの飴の袋に目をやり『ちょっと貰うよ』と言って、飴の袋に手を突っ込み個包装のキャンディーを掴み取りしていった。
なんてずうずうしいと思ったが、堂々と置いていたのも悪い。加えて文句を言うのも阿呆らしく『些細な事』と『後ろめたさ』が相俟って黙って後ろ姿を見送った。
隣を見るとさすがのリンも驚いたらしく、ぽかんと口を開けた後で苦笑を浮かべた。彼女には滅多に見られない引き攣った表情だった。
その時を思い出してつい吹き出してしまった。慌てて掌で口元を隠したが幸い見ている者は居なかった。廊下にはカカシ一人が立っているだけだった。そして自分が図書館とは逆方向に進んでいることに気付いた。考えながらだった為に無意識に大学の深部へと向かって歩いていたようだ。
そこで改めて廊下に面した教室を眺めてカカシは朝の夢を思い出した。
意識が再び静かにゆっくりと沈んでいく。周りの風景も当時のものへと変わっていった。
カカシが大学の専攻科目を決定したのは願書締切まぎわだった。初めから進学を念頭に置いていたが、進路希望ではいつも適当な意見を書いていたので、心配した担任は用紙の記入欄にある『歴史学』の文字を何度も見て本気かどうか確認した。
一度決めた事を変えるつもりはなかったが、それは方向転換が面倒だったからだ。更に志望動機は時間を掛けた割に安直なものだった。
元々古い物の探究に大して興味はなく、頭には歴史学の『れ』の字もなかったのだが、周囲の「一度決めたら究極まで突き詰める性格が非常に向いている」という声に押されて『まあそれも悪くない』程度の軽い気持ちで選んだ。
そして木ノ葉学園の史学科に進み、教鞭を振るっていた波風ミナトに出会い彼に師事する事になった。
大学生活も前期の終わり。
「カカシ君レポートの調子はどうだい?」
そう話し掛けてきたミナトはとても嬉しそうだった。問う内容と表情がちぐはぐだ。恐らく本当の話をする口実に過ぎないのだろう。
「先生、何か良い事ありました?」
機嫌の良さを察して伺うと、うんと頷いて少し焦らすような迷うような素振りを見せた。
「実はね、もうすぐ子供が産まれるんだ」
カカシは思わず彼のお腹を見たが当然そこには平らな腹があるだけで、笑いながら俺じゃないよと窘められた。
「予定は十月なんだけど、早まるか遅くなるかそこの所はよく分からない」
「へぇ・・・!本当に?それはおめでとうございます!」
目を見張り滅多にない興奮した様子で身を乗り出したカカシはにっこり笑う師を見てハッと我に返り、恥ずかしさを誤魔化すように紅潮した顔で咳払いをした。
「ありがとうカカシ。念願の子だったからねー。今から楽しみだよ」
「男の子ですか?女の子ですか?」
「ん、男だよ。彼女に似たら可愛いし美形にもなるだろうけど、自分に似てくれたら嬉しいかな。その点ではクシナと取り合いだよ。なんてね、ハハッ。まだ生まれてもいないのに気が早いね」
「いえ、そんな事ないですよ。親なら当然思いますって。まあオレには・・・まだよく分かりませんけど」
今更ながら照れた顔を見せる師を純粋に良いな、と羨望に似た思いで見たカカシは幸せな二人を見守っているだけで、温かな気持ちになる自分に気付いた。
他人の喜びが自分の幸せになる。
カカシは分かっている様で全く分かっていなかった発見に驚いた。
それから幾つか雑談を交わしてミナトは戻って行った。カカシはレポートを書き終え、ミナトの研究室に置いて研究棟を出た。棟の階段を一段一段下りて行くと、不意に足を止めた踊り場の窓から陽が燦々と降り注ぐグラウンドが見えた。眩しさに目を眇めたカカシは夏の終わりを信じられない思いで眺めやった。
すると突然ジーンズの後ろポケットが激しく震え出した。反射的に後ろへ手をやりそれを抜き出す。
グラウンドから視線を外して見た携帯電話の小さな液晶画面はリンからの着信を告げていた。電話でなくメールの受信はすぐに切れる。
我知らず口許を弛めたカカシは慣れた手付きでメールボックスを開き再び階段を下り始めた。
「悪いテンゾウ待たせた」
図書館に戻ったカカシは長い留守を詫びてカウンターに戻った。
「変わった事はなかったか?」
「はい、問題なくいつも通りです。カカシ先輩、教授に会えなかったんですか?」
予想よりも遅く帰って来たカカシを心配してテンゾウが聞く。
「いや会えたよ」
うっかり帰り道を間違えたとは言えない。
「そうだ、ホイッ」
「飴・・・」
「教授がくれるってさ」
掌に落とされた包みを見つめるテンゾウはどこまで本気か計り兼ねている顔だ。
結局どういう判断をしたのか、その包みを開いて口に放り込んだ彼は既に業務に戻り返却図書をカートに入れて運ぼうとしているカカシに一言放った。
「あの教授糖分摂り過ぎですよね」
不意打ちに笑いが零れる。
テンゾウはいつも思わぬ所で(それも本人は至って真面目な顔で)笑いを提供してくれる。
ミナトと子供の話をした翌日。
居酒屋でバイトをしているカカシは店仕舞いに表の暖簾を片付けに出た際に戸の脇に立っているリンに気付いた。
「リン、来てたのか」
「ついさっき。お店もう仕舞いでしょ?待ってて良い?」
「ああ、すぐ済むから。中入ってなよ」
「うん、ありがとう」
リンは戸の傍の一番端の席に座って厨房に入っていくカカシの背中を見ていた。
ここに来るのは何度目かで待つのは慣れていた。店主も彼女の顔を覚えていて、迷惑な様子は少しも見せず「いやぁ~若いっていいねぇー」と意味深めいた事を言った。
着替えたカカシと共に外に出ると少し冷えた空気が体を包んだ。まだ秋の入りだが確実に冬に近付いている証拠だ。けれど寒いというより涼しいといった程度で心地好い。
手を繋いだ二人は暫く無言で歩いた。黙っていても気まずい雰囲気はない。
不意にリンが前を向いたままポツリ呟いた。
「先生、子供が産まれるんだってね」
リン、オレ達もいずれは。とは口に出せなかった。
それは余りにも早計だからだ。
「なんて名前にするんだろう」
無邪気に首を傾げる彼女の隣でカカシは尋ねた時の師の非常に困った顔を思い出していた。
『う~ん、色々考えているんだけどね』
曖昧に笑った彼には幾つか候補が浮かんでいるようだったが、多過ぎてか逆に決め兼ねている様子だった。
それからリンは目先の将来について話した。
明日の予定、来月受ける情報処理検定、高校から続けているアルバイト、大学の副専攻、そして在籍している波風研の事。
主な話題は歴史学科の海外研修についてだった。
十日程度の短いものから一ヶ月、半年間など期間の差はあれど、どの学科も積極的に取り入れている。考古学と密接な係わりを持つ分野であれば尚更だ。
現場での発掘作業は勿論、現代に残る遺跡を巡って古代の生活様式や政治体制を学び人々の様々な想いに触れる。
しかしカカシと同期の者達はまだ一度もミナトの研究に同行した事がない。教授の腹積もりも分からない。
だが順当にいけば来年度の前期には連れて行って貰えるだろうと先輩に諭された。いや、カカシは特に希望していないのでそれについて不満はない。
逆にリンは入学当初から研修を切望していた。
そのような事を何度もカカシとの会話で口にしていた。女の子らしく、一緒に行けたら嬉しいとも。
だがそれも叶わぬままある事件が起きる。
それが後々(のちのち)司書となったカカシの胸を、父の件とは別に時折深く突き刺す痛みとなる。
大学の生活に慣れ研究の要領も覚えた二年目の暖かな春。
シンポジウムのため渡米していた波風夫妻を乗せた旅客機が海洋29,000フィート上で空中分解を起こし墜落した。
その日カカシは昼には到着する二人を迎える為、朝から空港へ向かっていた。白羽の矢が立ったのはゼミの末席で、更に運転免許を取得していたからだろう。帰国時には教授の車で迎えに来るよう仰せ付かっていた。
けれど再び彼に会う事は叶わなかった。
報せを受けた瞬間カカシの目の前は真っ暗になって、耳に当てていた携帯は床に落としてしまった。
空港内のアナウンスや再び呼び出そうと躍起になっている携帯のメロディーは素通りして、耳の中で煩く喚く自分の心臓の音だけが聞こえていた。
それ以外、何も聞こえなかった。
事故調査委員会による調べの後、公式には隔壁板の破損とエンジントラブルが原因と発表されたが、何の理由であれカカシには生涯忘れられない最悪の日として残った。
そして、それから毎夜運び出される凄惨な師の姿を夢に見るようになり、魘されて飛び起きるという最悪の状態に陥った。
しかしまだカカシにはリンが居た。その頃は、まだ。
その後(あと)、相次ぐ不幸にもう前には進めないと思い悩んだ時もあった。
しかし死を選ぶ勇気もなかったカカシはリンを想いながら生きる道を選んだ。
だがそれも「生きている」のとは程遠い生活だったが。
そのカカシに運命を感じる出会いが訪れる。
奇妙な理由で図書館に通い始めた少年。渦巻ナルト。
姓が違っていた為すぐには気付けなかった。けれど特徴のある名前は一度聞いたら忘れられないものだ。
不思議はない。なるべくして成った事だがカカシは使命に近い感情を抱いた。それも直接の係わりは持たず、そっと見守りいざというとき影から支えるような。
ナルトにはしていない話だ。もしかしたらカカシは一生明かさないかもしれない。最期まで胸に秘めておくのがベストだと考えているからだ。
それに恐らく、というより十中八九ナルトは怒るだろう。怒らないにしても喜ばない。それが分かっているからカカシは黙っている。
当人に聞かれないうちは。
「暇ですね」
カウンターで待機するテンゾウは何となく呟いた。返事を期待したものではなかったが、少しの空白を置いて律儀な答えが返ってきた。
「新学期に入ったからな。先日のオリエンテーションとか、初めの頃は何かと団体行動が多いだろ。生活のリズムが安定すればすぐにまた増えるさ」
眼鏡の奥の眼を細め、ぱらりと紙を捲ったカカシが事も無げに言う。
つい最近、説明会の一つとして図書館案内があった。その時の人数は月の平均利用者数を上回るもので大変な賑わいだった。
(賑わいと言っても勿論ざわざわ、がやがや騒いでいる訳ではない)
「それは嬉しいような、喜び難いような・・・」
テンゾウは紙音に反応して少し後ろの椅子に掛けているカカシを振り返って尋ねた。
「それ何ですか」
「昔の学術誌だよ。歴史学科に在籍していた波風教授の論文が載ってる。他にも翻訳されて書籍になっているよ」
テンゾウは暫しカカシの横顔を見つめ不思議そうに呟いた。
「先輩史学に興味あったんですね」
『先輩』と呼んではいるが、テンゾウはカカシの出自や生い立ちを何一つ知らない。
「うん」
それは問いに答えたというより反射的に出た生返事だった。
それ以上の回答は期待できないようだったので、テンゾウは諦めて未だ客の訪れそうにない扉を見た。
時計の針は休みなく進み一日一日を終えていく。
やがて聞き慣れた足音と生徒達の声が図書館を満たす。そして緩やかな時間が終わり忙しい季節が戻って来る。
END
リンのキャンディーの話は実話です。
私の実体験(笑)学習室ではなく図書室だったのですが本当にビックリしました。私も一緒に居た友人も!