あれをコイバナと言えば君は否定するだろうけどbyカカシ
「ところで先輩、ナルトに気付いて貰おうというのがそもそも無理なんじゃないですか」
戦線の合間、戻って来た途端ポンッと投げ掛けられた問いに男は嫌そうな顔をした。
「いきなりその話題かテンゾウ」
オレ一応戦場から帰還した身よ。
「一時帰還した先輩をちょっとは気遣えないワケ」
けれどその科白はヤマトの耳を素通りして。
「ボクならいつでもオッケーなんですが」
カカシは更にげんなりして手甲と脚絆を脱ぐ傍らヤマトを見遣る。
「あのさ~テンゾウ、ナルトがここに来たら」
そして後輩の世迷い言をサクッと無視して、自分の頼みは決して断れない彼に都合良い伝言を託す。
「オレは大丈夫だって。里で待ってるからって、伝えといて」
それはまた二人で囲む食卓を意味していた。
「・・・そんなこと言って、笑われるだけですよ」
失敗した時の尻拭いを押し付けられても困ります。
「お前、もー少し励ましても良いんじゃない?」
「現実的なんです」
「あ、そう」
まーいいや。
カカシはあっさりと引き下がって、せっかく外した手に新調した手甲を嵌め、脚絆も替えて立ち上がった。
「頼んだよ」
そう言ってテントの幕を上げ出て行く。
一瞬だけ明るい光がヤマトの顔を射し、再び戦場に出て行くカカシの背中をくっきりと浮き上がらせた。
幕が下り薄暗い中に取り残されたヤマトはカカシの残像を振り払うように首を振る。
「はぁー。やれやれ、ですよカカシ先輩」
しかし彼は無下にできない自分にこそ『やれやれ』なのだと、溜め息を吐き天を仰いだ。
END