コイノハナ
母の使いで外に出ていたサクラは偶々通りがかったカカシの家の前で足を止めた。
水玉のワンピースを着た女性がロングの金糸を揺らして部屋を出て行く。
恋人の存在など聞いた事もないが、いても不思議は無い。むしろ自然だ。
「どんなひとなのかしら」
興味本位サクラの乙女心に火が付いたがそれ以上に疼いたのは、見たことのある顔の様な気がしたからだ。
確かめるなら今しかない!
サクラに気付かず走り去る女の後を急いで追う。
けれど女の足はやけに速く、細道へ入ったまでは追えていたが大通りへ出た所で見失った。
ざわざわとした人込みの中で右へ左へ顔を巡らすが見当たらない。
女は忍者の様に忽然と消えていたのだ。
翌日サクラの頭は任務どころではなかった。噂などあっという間に広がるこの里で誰に打ち明ければ正解だろうか。
いのは噂好きでお喋りが過ぎるし、逆に同班のサイには話しても無意味なくらい反応に期待が持てない。
やはりここは七班初期メンバーのナルトだろうか。
今日はいつも以上に落ち着かなさげなナルトにそっと近付いた。
そわそわしていたナルトは急に話しかけられ驚いて跳び上がった。
「なっ何よ・・・そんなに驚くことないじゃない」
「サクラちゃんか・・・ハハ、ワリィってば、てっきりカカシ先生がまた妙な事してんのかと・・・」
「はあ?」
「や、何でも・・・」
「まあ良いわ!それより!聞きたい事があるのよ。耳貸しなさい」
「へっ?」
「ちょっと来て」
「ちょ、サクラちゃ・・・」
ナルトはぐいぐい腕を引っ張って行くサクラに戸惑いながら付いていく。
その場を去る前に集合場所を振り返ると二人を見て首を傾げるサイとその向こうにやっと来たカカシの姿が見えた。
カカシは遠目にもナルトとサクラに気付いて何を思ったのか目を細めた様に、見えた。
少し離れた樹の陰に連れ込んだサクラは緊張した顔でナルトを見た。
「サクラちゃん?そんなジッと見られると・・・照れるってばよ?」
「バカ!」
睨み付けるサクラの恐ろしさにナルトの肩が震える。
「カカシ先生のこと」
「え!?」
「その様子、何か知ってるわね」
「知ってるって、何をだってばよ?」
「しらばっくれないで。恋人よ、コ・イ・ビ・ト」
「・・・恋人」
「見た事あるんでしょ?」
「えっ・・・な、ななないってばよ!」
「じゃあさっきの反応は何!?」
「いや、カカシセンセーってばそういう噂ねーから、びっくりして」
するとサクラは目に見えてがっかりした顔で溜め息を吐いた。
「なあんだ・・・がっかり」
そして集合している彼らを振り返った。
「ナルトなら知ってると思ったんだけどな」
「ははっ・・・」
ナルトは複雑な顔でサクラの後ろ姿を見た。
ナルトは古びたカカシ人形を抱き締めてベッドに転がり何度目かの溜め息を吐いた。
サクラが話した金髪の女には心当たりが有り過ぎるくらいだった。
思い返すのは半年前。
宵の口、居酒屋の入口でカカシを見た時だった。
誰かと待ち合わせしているのかと思い、瞬時に上忍仲間の顔が浮かんだが雰囲気が違った。
その独りの姿に惹かれた。
けれど恋心には遠く七班隊員としての好奇心が強かった。カカシが店の中に消えるとちょっとした悪戯を思い付いて物陰で変化した。
未成年を店に入れない店主も易々と騙される。昔は苦手だった変化も今では高い完成度を誇る。
しかしそれは素人相手の事。担当上忍には簡単に見破られる。
そう予想してナルトは冗談で近付いた。呆れた顔で「お前何やってんの?」と言うだろうと。
バレても良かったのだ。それでも何か奢って貰えるかもしれないし話のネタになる。
しかし酒の席だったせいか意外にもカカシはナルトだと思わず接してきた。
更に飲食全て奢ってくれて自分の連絡先をその店のアンケートカードの裏面に書いて寄越した。そして幾度か会う内に男女の関係になった。
とはいえ、まだ手を繋ぐ程度だ。
その時には既に恋心を認識していたナルトはとても幸せな気分だった。
けれど幸せな気分でいられたのは少しの間でナルトは新たな問題に悩んだ。
告白したのはカカシからだ。彼を好きだと自覚したナルトにはそれはとても幸福な事だった。だがカカシが申し込んだ相手はナルト(女)なのだ。
そう、カカシが付き合っているのは男ではない。女体のナルトだ。
それもナルトと知らずに。
目の前で変化を解けばカカシは驚いて拒絶するに違いない。想像してナルトは体を震わせた。
「どうしたの?最近調子悪いね」
「うん・・・」
いつもの夜じゃない酒場以外での逢瀬。
せっかくの昼間デートなのにナルトの表情は沈んでいた。
浮かない顔をしているとカカシは非常に優しく気遣ってくれた。
だが嘘つきの自覚がある心には余計に辛く響いた。
どんなに好きでも相手が嘘を吐いていたらどうだろうか。
嘘はいつか露呈する。
幸せな時を手放すのは辛いがこのままいても二人に未来はないと思った。
ナルトは悩み考え、もう会えないと決断した。
女の自分とは別れて初めからやり直したい。カカシには悪いが綺麗さっぱり忘れてもらって、本当の姿での告白を聞いて欲しい。
そしてある夜別れを告げにカカシの家に行った。
「あのな、カカシ先生」
「どうしたの?今日は呼び捨てじゃないじゃない」
マスクを外して素顔を見せたカカシは少し驚いた顔をしたものの、軽い世間話の続きの様に金髪の女子を見て言った。
「えっ」
思いがけない反応に次の言葉が出ない。
するとカカシはナルトを手招いた。
「とにかく中へ上がりなさいよナルト」
ナルトは自分がカカシを騙していると思っていた。だが逆でカカシは初めから気付いていてフリをしていたのだ。
つまりカカシはナルトだと分かっていて付き合っていた。
結果として良い方向になった。しかし・・・。
そこでもナルトは失敗した。
「はぁ」
驚きの展開になり頭がぼんやりとする内に姿を現しそこねた。
「あの時変化を解けば良かったんだってば」
自分で己の首を絞めている。
正体を出さなかった事で今度はカカシへの疑心が溢れてきた。付き合いを誘ったのはカカシだがもしかしたら冗談だったのかもしれない。
本気で答えを返す姿に冗談を訂正しそこね、そこに面白味を見つけて付き合いを続けているのでは。
諸々嫌な思いばかりが廻る。
「オレってばなんつーアホ!」
ナルトは唸りゴロゴロ転がってうつ伏せに止まった。
「今日のデート、どうしよ・・・」
居酒屋のカウンターで二人の『大人』が喋っている。飲み屋だが酒は片方の器にしか入っていない。
「サクラは本当に仲間思いだね。普段はお前に乱暴だけど」
カカシは隣に座ったツインテールの女子に笑いかける。
そのナルトは昼間の事を思い出す。
「センセー聞いてたのかよ」
ムッとして睨むと彼は手を振った。
「いやいや話は聞いてないのよ。ただサクラの様子でね」
あの一日サクラは珍しく上の空だった。
「てか、あれはオレの心配をしてるんじゃねーの!関心の対象が違うんだってば」
「へぇ?」
カカシはあの時の様に目を細めて聞き返す。
「じゃあ誰の心配?」
「センセーの」
「先生?」
「カカシ先生の!わざと言わせてるだろ!」
「まさか。何でオレの動向を気にするんだろうねえ」
「この間センセーん家行った時に見られたんだってば」
「じゃあお前のせいじゃない」
「否定しねーけど全部オレが悪いんじゃねェ」
ナルトはカカシに怒りを向ける。
「その変化を解いて行けば良かったのに」
「そりゃ大体カカシセンセーが女の方が好きだから・・・」
「え?」
ナルトの呟きにカカシが驚いて振り向いた時、新たな料理を運んできた給仕がそれを遮り話は途切れた。
あ~もうっどうすりゃ良いんだってばよ!
行き詰まったナルトは頭を抱えていた。
「それなら直接聞いてみればいいんじゃないかな?」
「だからそれができねーんだって!・・・ってうお!サイッ」
公園のベンチでブランコを眺めていたナルトは不意に掛けられた声に驚き飛び上がった。
「きみ声に出てたよ」
「は・・・ははは・・・」
ナルトは笑って視線を戻し沈黙した。
「それでどうするの言わないの?」
「って聞くのかよ!いま会話終わっただろ!てか終われってばよ」
「カカシ先生に言えばはっきりするのに」
「言いてぇけど言えねェ」
「なんで?」
「なんでって・・・そりゃ」
ナルトは自分で答えて絶句した。
聞けないのは怖いからだ。カカシの本音を聞いて、二人の心が離れてしまうのを恐れている。そんな自分に言葉を失った。
変化してカカシに正体が知られていないと思っていた頃は縁が切れてもまた一からやり直せると考えていた。
けれど今は見た目は女だが中身はナルトとして付き合っている。
同じ班なのだから別れても殆ど毎日会う羽目になる。
それが辛いのだ。
「ナルトはカカシ先生とどうして付き合ってるの?」
「ストレートに聞くよな・・・なんでって、サイはこの話気持ち悪くないってば?」
「?」
「だよな、サイはそういう基準じゃねーよな・・・あっ、良い意味でな!」
「うん、そうかな?」
「ありがとなサイ。なんか分かった気ぃする」
なぜカカシが好きなのか。彼がそんじょそこらの枠に当て嵌まる男ではないからだ。
「きみが納得できるなら」
「おうっ」
ナルトは笑って立ち上がり、眩しい西日が顔に当たるので古臭い青春ドラマみたいだと思いながら公園を出た。
普通の枠に当て嵌まらないカカシならば常識で考えては駄目だ。
前向きというよりも本当にそうであると思ったナルトはサイのマトモな意見を受け入れる事にした。
「カカシ先生は男だからとか関係ねー気がする」
ナルトが男でも女でも本気で「自分」と付き合っている気がし始めていた。
「明日、話し合うってばよ」
それでも不安は拭えず、ナルトは覚悟の顔で自分に言い聞かせた。
ところが。
「二股はいけない。なぜなら片方と会っている間もう一人は除け者にされるからだ」
「シノ!」
問題は一先ず置いて家に帰る途中ナルトは光の当たらない塀の影に潜む者を見つけて叫んだ。
「ナルト、なぜそんな顔をしている」
「フツーの反応だろ!そんな影の中に立ってたら驚くってばよ」
「忍ならば察しがつく・・・それが仲間ならば尚更」
「あいっかわらずめんど・・・じゃなくて、さっきの二股って何だってばよ!」
「自分自身を他人に問うとは律儀だなナルト」
「オレのこと!?えっなんで??」
目を丸くしてシノに近寄るナルトだがそこへ遠くから迫り来る新たな影があった。
「しゃーんなろーナルトー!」
大きな足音を立ててサクラが走って来る。
間に割って入った彼女はナルトの胸倉を掴み激しく揺さ振った。お蔭でナルトの頭は前後に大きく揺れた。
「サクラちゃん、ぐえっ」
「ちょっとアンタ!どういうつもり、どうなってんのよ!!こっち来なさいっ」
「エッ!何が!?」
逃げ腰のナルトにサクラが掴み掛かる。
「顔貸せっ」
「げっなんかヤな予感だってばよ」
ぶるぶる震えるナルトを彼女は問答無用で引っ張って行く。その二人を月を背にしたシノが黒いサングラスの向こうから見据える。
「だから仲間外れは駄目だと言った筈だ・・・・」
しかしその声は届かずサクラは強い力でナルトを連れ去った。
そしてものの数分で公園へ逆戻りしたナルトは詰め寄るサクラに戦々恐々の顔で両手を胸前に上げて距離を取り、ほぼ間違いなく怒っている彼女を鎮めようとした。
「ま、まあサクラちゃん」
「なにが“まあ”だ!なんなのナルト!この間はカカシ先生の恋人は知らないとか言ってたくせに自分ちゃっかり付き合ってんじゃないのってかサイとも良い感じでやっててこの浮気者!」
「あのー立て続けに言われてもだってばよ?というか、サイのくだりにつきましては何が何だか・・・さっきのシノも変なこと言ってたけど」
「しらばっくれんなァーーーーー!」
「ヒッ・・・」
サクラのパンチが顔横の木に炸裂してナルトは体を縮めた。パラパラと木の皮が剥がれていく。
「責任は取るんでしょうね!?」
「や、ちょ、ま・・・ほんっとーに分からないってばよ!」
顔を左右に激しく振り必死さをアピールすると腕組み睨んでいたサクラは眼光をほんの少し緩めた。
「後ろ暗い割にはこの反応はおかしいわね」
「ほんとだってばよっ」
「ふ~ん?・・・もしかして、状況を理解してないわけ?」
「何度も言ってるってばよ!わかんねーって」
「そう、つまりカカシ先生は認めるけど、サイは違うって言うのね?」
「だってばよっ」
「ふぅーーー、面倒臭いわねえ・・・どうして女装したりしてるのよ」
「それはっカカシ先生が女の方が好きだから・・・」
「ハア?そもそも何で付き合ってんの?やっぱりカカシ先生が変態なの?」
「そこは説明すると長くなるんだってば・・・」
質問攻めに困るナルトは別の気配を感じて遠くを見た。
「ナルトォーッ」
「あら、カカシ先生だわ」
またしても乱入。
ナルトはげんなりした。
「どういう事だ!?オレ以外にサイとよろしくやっちゃってて、今週中には同棲するって!?誰の許可得てんの?」
「内容が増えてるってばよ」
「さすが里は尾ひれが早いわねー」
「感心してる場合じゃない雰囲気だってばよ」
「苦労人ね。興味あるけどカカシ先生怖いし後で教えてね、じゃねっ」
「げげっ。サクラちゃ~ん置いてきぼりは嫌だってばよー!」
「な~る~と~」
「うわ・・・ぞわぞわぞわ・・・」
三方から分身カカシに囲まれたナルトは何処にも退がれず本能から鳥肌が立つ両腕を抱き締めた。
「どーいうことかなあ」
「ど、どうもこうも・・・カカシ先生勘違いしてるってばよ・・・・たぶん」
「フーン?どの辺りを?」
一人のカカシはしゃがみ込んで下から睨み、一人は横から覗き込んで人差し指でナルトの顎を上げ、もう一人は腰を抱き寄せて耳元で恐ろしい低音を響かせた。
「す、べて・・・」
「さっきサクラにオレが女が好きって言ってたみたいだけど?」
「地獄耳ぃぃぃ」
「はいはい、まだ泣かないで答えてちょーだい?」
「そーそー啼くのは後で、な?」
ペロリと目尻を嘗めたカカシは更に詰め寄る。
「で?お答えは?」
「だ、から、会った時から女のカッコしてたオレも悪いけど、カカシ先生ってば変化解けとか言わねーしっだから、だから」
呼吸さえ苦しくなってきたナルトは本気の泣きで訴えた。
「ああ、それでオンナの方が良いって?」
「ほんとーに」
「馬鹿だねぇ」
ボフッと音がして三人いたカカシは一人になり、ナルトをぎゅうっと抱き締めた。
「そんな訳ないでしょ!」
「カカシ先生、ちゃんとオレの事、その、す、好きになってくれてたんだな」
「当たり前でしょ。じゃなきゃ付き合わないって」
「冗談・・・とかじゃなくて?」
見上げるナルトの潤んだ瞳を見つめながらカカシは頷く。
「オレの事をどう思ってたわけ?これでも上忍で忙しいんだ。変な冗談や興味に付き合ってる時間はないんだよ」
「あ・・・そうか、忘れてたってばよ」
とにかく誤解は解けて。
「うーん。ま、取り敢えずは良いが・・・・これはオシオキ(調教)が必要か」
「・・・・は?」
「犬も猫も初めが肝心ってほんとだよねえ」
「ちょい待ち!こちとら犬でも猫でもねーし!」
カカシはマスクから見える片目を瞑って大袈裟に息を吐いた。
「オレが甘かったんだよなァ、手に入れればこっちのもんて高をくくってたから」
「へ?」
「ナルトのお仕置き決定」
言うなり担ぎ上げたカカシは素早い動作で公園を後にする。
「ひゃあっ」
「ハイハイそー言う声はオレの部屋でね」
腰をがっちり固められ足をばたつかせても逃げられないナルトは不幸にも不吉なセリフを聞いてしまい身を凍らせた。
「なんでまた分身してるってばよ」
ベッドに上げられたナルトは顎を引いてカカシを見た。しかしどれが本体か分からない。
「ん?今日は疑問が多いねえ。そりゃ調教には鞭ばっかりじゃなくて飴も必要でしょ?」
「鞭?調教!飴!?」
「そんなびっくりしてる場合じゃないと思うけど」
「ヒャアッ」
一人のカカシが耳を嘗め上げナルトはびっくりして背後の壁にぶつかった。けれどクッションが挟まって大きな音のわりに痛みはない。
その反応を見たもう一人がナルトの前に蹲って服のファスナーに手を掛けた。
「うわぁっ」
その下の鎖帷子にも手を伸ばし、三人目はオレンジのパンツのファスナーを躊躇なく開いた。
「ヤッ・・・」
思わず普段出ない声が出る。
「かわい~」
全員一致の大合唱である。ナルトは頭が痛くなった。この乙女キモイ上司をせめて一人に戻せないだろうか。
「気もそぞろ?」
「と言うより」
「集中力の欠如か」
「ワッ!」
首を傾げたカカシの合図で二人がナルトの太ももを掴んで引き寄せた。不意打ちに縮んでいたナルトの全身が開かれ防御ができなくなる。
「タンマッちょっとだけ待ちっ」
だが三人は止まらない。
くんくんくん。
耳を嘗めた右横のカカシが頭から胸まで匂いを嗅ぎ始め不快に顔を顰めた。
「サイの臭いがするかも?」
「かも」
「かもね」
足の先まで点検したカカシが大きく頷く。
「許せないなあ」
「許せないねえ」
「お仕置きかなあ」
三人はそれぞれ恐ろしいことを言って頷く。
「だーからっサイはただ一緒に話してただけだってばよ!」
「あれあれ?ナルト君」
「状況が分かってないね」
「ふーん、逆らうんだ」
「ゲ・・・」
「お仕置き二つ目~」
「げげ・・・」
「元よりオレを信じてなかったしねえ?」
「ねえ」
「そうだなあ、お仕置き三つめ~」
「ぎゃあああ、いーやーだー!」
ナルトは暴れたが相手が三人では要領良ければ敵うものも敵わない。
「っ・・・」
そそそ、と太ももを下から撫でる手にぞわぞわした。
「ナルトの罪状は沢山あるからこの際纏めて教育しなきゃ」
「そうそう、いちいち数え上げたら切りがない」
「酸いも甘いもぜ~んぶ、ね?」
「い、いや・・・」
涙目で激しく首を振るが彼らは全く受け入れない。
「!」
突然口を塞がれたナルトは抵抗できないままその隙に帷子の下の素肌に触れられて大きく跳ねた。
「んっんんー!!」
カカシはどんどん服をたくし上げて、パンツも脱がしてあっという間に全裸にしてしまう。
隠すものが無くなり益々窮地に陥った。今更焦っている場合では無いが無抵抗は癪に障る。気持ちだけは断固譲らないと決めて睨み返す。
たがそれも一瞬で砕かれた。
真ん中のカカシが下腹部に触れたのだ。
「!?」
唇を奪われたままギョッとして下を覗き見るとカカシがナルトの前に屈んでいた。
非常に嫌な予感がして冷や汗が流れる。
「ま・ず・は~飴から」
唇の感触を堪能したカカシが愉しそうに歌う。
「あ、飴って―――」
息を呑んだ直後意識を一気に持っていかれた。ナルトはハッ、と短く息をして天井を仰いだ。
「うわぁヤラシイ顔してる」
「バカ言ってん・・・!」
睨んで体を引き戻そうとしたナルトを素早くカカシが押さえ付ける。
「こーらこら、まだだって」
下でナルトを口に含んで嘗め上げるカカシを振り向き笑ったカカシは本体だった。直感で気付いたナルトは腕を振り解こうとするが中々に力強い。
そのカカシが額にキスを落とし頬に唇をつけて気が緩んだ所で首筋に噛み付き胸に吸い付いた。
「ひゃっ」
声を上げ視線を感じて右を向くと赤い写輪眼の中に浅ましい姿が見えた。彼は一瞬も逃すまいとナルトを克明にその瞳に映していた。
「ヤダッ」
カッと頬を赤らめて慌てて反対を向く。
胸ではザラザラの舌がぬるぬると嘗め上げ執拗に責める。理性を保とうとするが次第に体の敏感な部分が疼き始めた。
「は、あ・・・」
「どう?上と下をされる感じは?」
「っふ・・・・ぅ」
ナルトの下をいい様にしているカカシはカリをくるくると撫でたり根を絞めたり、ゆるゆる撫でたりするものの決定的な快楽は与えない。
「ン―――」
ナルトは息を詰めてこの責め苦から意識を遠ざけようとした。ところが背けた顔にカカシが細い指をかけて上向かせ意地悪く笑った。
「じゃーそろそろ鞭をね」
ゴソゴソ自分の衣服を探りナルトの体の上を這って丁度口の部分に寛げた下腹部を押し当てた。
「んっ!」
抗議を込めて唯一自由な顔で押し返すがびくともしない。そればかりか逆に銀色の毛が顔に擦り付く。
「わあ、マニアックだねーナルト。実は結構なスキモノ?」
「だっ誰が!!むぐっ・・・」
挑発に乗って言い返したのが拙かった。開けた口に無理矢理男を咥え込まされる。
適度に固くなり男臭さのあるそれが喉の奥まで詰まる。
「ぐ・・・」
上手く呼吸が出来ずに言葉も出ない。
「ほらほら動かないといつまでもこのままだよ」
下の方ではカカシが吸い込む仕草をした。
「アッ!」
叫んだつもりで声はなく、代わりに口の中の存在感が増し舌がそれに沿う。
写輪眼のカカシは時折髪や拘束した腕を撫でながらそれをじっと記録している。
「ほら嘗めてよ」
焦れたカカシは腰を揺らしその部分を動かして催促する。
「ンーーーッ」
後ろを弄られている事に気付いたナルトは目一杯力を込めて尻の穴を窄め抵抗を試みたが三人のカカシはお見通しだった。
「こーら、そんなに聞き分けが悪いともっと辛いことになるよ?」
「ま、酷くされるのがお好みならしょーがないけど」
「ん、んんー!!(ぜってぇ嫌だ!)」
「なら、言うことをきこーね」
ナルトは漸く観念して全身の力を抜いた。
そして促されるままに大きく口を開けて舌を這わせた。
「ん、拙いけど、いいよ」
どうやれば良いのかなんて初心者には分からない。
さっさと済ませたいナルトは飴やアイスクリームを思い浮かべて舌を動かした。
「は、あ・・ちゅ・・・ん、ぅぅ」
自分がされたのを思い出して丹念に舌を動かし、根元を嘗めたり先端をちゅぱちゅぱと吸ったり精一杯の愛撫でカカシにご奉仕をする。
気付けば腕の拘束は解けていた。ナルトは指を絡ませて扱き舌の先で突ついたり強く吸ったりして器用さを発揮させる。
吸われているカカシには卑猥な音と震動が伝わった。彼にはナルトの後頭部が目に映り、記録係には恥ずかしさと興奮で紅潮した顔がさぞ良く見えるだろうと羨ましくなる。
「結構クル・・・な」
余裕の無い顔でナルトを見下ろすが嘗める事に集中している彼には見えない。
放って置かれて参加の甲斐が無い他のカカシは我慢が出来なくなり、ついにナルトの腰から下を掲げさせ普段は隠れている庭を刺激し始めた。
自然とナルトの上半身はベッドに沈む。
「おーよく見える」
「さっきちょっと弄ったから少しは緩くなったカナ?」
「つ!?かかひふぇんふぇー!」
焦って叫んだ拍子に咥えていたものがこぼれた。
奉仕を受けていたカカシ(本体)がとても残念そうに呟く。
「そんなにしたら・・・・あーあ、抜けちゃったじゃない」
「げほっごほ・・・」
手を口に当てて咳き込む向こうに自分のあられもない下半身が見える。
「なっなにして!」
「今更?」
「今更だよね?」
「よいしょっと」
ナルトの上から降りたカカシが再び意識を横取る。
「こっちも集中して貰わないと」
視線で他のカカシに指示し、自分は再びナルトの胸に触れてさわさわと刺激する。
「アァッ」
上向いたナルトはベッドに沈みはあはあと呼吸を繰り返しながらシーツを掴んだ。びくびくと体が震える。どちらにしろもう引き返せない所に来ていた。
「あっあっ・・・やっ、もっ・・・」
「ん?もっと?なあに?」
「ひゃんっ」
後ろの部分にぬるっとした液体が塗り込められる。
「や、や、や、そ・・・こっ」
「うん、ココが良いんだね?」
もうどのカカシが語りかけているのか分からなくなっていた。
「あーやばい、もー我慢できねーわ・・・」
カカシは下準備に勤しんでいた二人を押し退けて無理矢理ナルトの上に跨り猛るそれをあてがった。
「挿れるよ」
まだ完全に迎え入れられないそこに固い肉が分け入る。
「いっ・・・いたぃってば・・・!アァ!」
「くっ・・締まるっ」
ナルトの声を無視してカカシはそのまま激しく動き出した。そして頂点に向かって一気に駆け上がる。
「ん、やっあっあっ」
揺さ振り快楽を追い駆けて二人ひとつになって達しようとしていた。
その時、
ボンボンッ。
立て続けに破裂音が響いてカカシが一人に戻った。
「あ~チャクラ切れかあ」
ぼんやり呟いたカカシがゆっくりナルトの上に倒れていく。
「・・・え?」
呆然とするナルトを置いてすやすや寝息をたてる。どうやら深い眠りに落ちてしまった様だ。
「まじで?」
まだ挿れたばかりではないか。
呆気に取られてカカシを見下ろしたナルトにふつふつと怒りが湧く。
「―――このっ・・・中途半端でやめんなーーー!!!てか、やめるくらいなら初めからすんなー!!」
ナルトの分身もすっかりしょんぼりしている。放り出されて悲しいやら気が抜けるやら。後にはどうしようもない空気と吐き出されたナルトの怒りが残った。
END