闇に吼える狼の夢
無理やり体を酷使されぐったりシーツに沈んでいたナルトは流れる水音に目を覚ました。起きたのは布団の中ではなく風呂場だった。
ここは・・・昼間の風呂場?そうだオレってばカカシ先生に強姦されて・・・。
ぼんやり身に起こった事を追う内に知らずナルトの瞳から涙が零れた。
「うっうっ」
嗚咽を漏らす唇をきつく噛み締めて迫り上がってくる辛い気持ちに耐えようとした。けれど涙は止めどなく溢れてナルトの瞳は赤く染まった。
「ナルト」
霞む視界の向こうにぼんやりカカシの姿を捉えて仰向くと、傷だらけの荒れた長い指が頬を伝う涙を拭った。それでも涙は止まらない。焦れたカカシは顎を掴んで深く口付けた。ぬちゃ、と湿った音と共に舌が侵入し狭い口内を犯す。
「ヒッ」
ナルトは覆い被さるカカシに恐怖を感じてジタバタ暴れる。しかし下半身は勿論、全身に力が入らず暴れるというより、もぞもぞ動いている程度だ。
何か助けになる物はないかと指が辺りを彷徨う。すると不意にズボッと指がどこかに入り込んだ。吃驚してすぐに抜いた。結構大きな穴が縦に開いているようだ。
「んっんぅ」
必死に口付けを受けながら掌でざらざらする床の表面を撫でた。穴を幾つか発見した。おそらくこれは、床ではなく・・・。
すのこ。オレってばすのこの上に寝かせられてるんだ。
「ナルト」
自分の状況をやっと把握したナルトから唇を離し、カカシは再び名を呼んだ。
「ナルト」
「はっ、はぁっはっ」
ナルトは真っ赤に腫れた唇を大きく開いて新鮮な酸素を求めた。そして焦点の合わぬ瞳でカカシをぼんやり見た。
「ナルト」
カカシは再び顔を近付け頬に口付けた。至近距離で見つめる闇と真紅、普段は薄いくせに今は厭らしく濡れて光る充血した唇、白銀の濡れそぼった髪、それらがナルトの両眼一杯に映った。
「カカシ先生」
端正な顔から少し視線を外したナルトは自分の体とカカシの体を見てまだ二人が裸である事に気付く。
「あっ」
両足の間を温めの湯が流れた。それに伴い蠢く二本の指、自分が後始末をされていたのだと分かった。
「っつ・・・」
カアッと顔を紅くしたナルトをカカシは冷めた眼で見つめている。いつもならば暖かく微笑む瞳が今は凍て付く冷たさだ。
再び恐怖感が沸いてきて体が震えた。
「カカシ先生、何で怒ってんの?・・・昼間オレが騒いだから?偵察なのに燥いでたから?」
「ナルト」
ナルトは自分の想いを伝える事に一所懸命でカカシの呼び声は耳に入らない。
「だったら・・・オレもう喚かねぇから、カカシ先生の言う事聞くから!だから」
そんな目で見ないでくれってばよ。
「ナルト・・・」
「うっうっ・・・オレってば先生にキラワレたら・・・うっ」
カカシは涙を零す青い瞳をじっと見つめていたが、スッと立ち上がるとバサッと白い布をナルトの体に掛け自分の腰にはタオルを巻いた。
「本当にオレの言う事聞くの?」
ナルトは無言で頷いた。カカシが優しい元の姿に戻ってくれるなら構わなかった。
「そう、なら少し待っていなさい」
カラカラと戸が開きカカシは出て行った。
「カカシ先生」
ナルトは閉められた戸の隙間から向こうの様子を探ろうとした。が、当然白眼でもなければカカシが何をしているのかは全く分からない。
何やってんだってばよ・・・。もしかしてカカシ先生はオレがうざったくなったってば?
ナルトが不安に心を揺らし始めた時、扉が開き腰にタオルを巻いたままのカカシが姿を現した。
「ナルト、おいで」
カカシはナルトを抱き上げ額にキスをした。ふっと微笑む様子はいつものカカシでナルトもつい笑みを零した。しかしカカシに抱かれゆらゆら揺られながら寝所に向かう途中、玄関の異様な様子が目に映りナルトは硬直した。
「な、ん・・・だってばよ、あれ」
外から内を護るというより内部から出られないように貼られた結界札。閉じ込めるならば外側に貼る封印札が一般的だがそれとは少し異なるようだ。何より外へは決して出さぬという意思が強く感じられる。
「何でも聞くんデショ?」
「あ・・・」
先程の約束を思い出し唖然とする。
「ナルトはオレのモノだからね」
うっすら笑み抱き締めたナルトの耳に唇を寄せて毒を吹き込む。
「逃げようなんて考えるなよ」
するりと手が内股を探りナルトの中心をやんわり握ってもナルトは呆然とカカシの言葉を反芻していた。
「ナルト愛してるよ。ナルトもオレを愛してるよね?」
「あ、い・・・してる?」
「そう、だから、ネ」
言ってよその可愛い口で、愛してるって。
「カカシせんせー・・・愛してるってばよ」
ナルトは注ぎ込まれる言葉に素直に頷きながら、満足げな笑みを浮かべるカカシを瞼の裏に収め意識を手放した。
翌朝ナルトが目覚めた時既にカカシの姿はなかった。代わりに一枚の紙切れが左手の小指に結ばれていた。広げてみれば見慣れた几帳面な文字が並んでいる。
『今日はオレ独りで行くからお前は寝ていなさい。朝食は用意しておいた。夕刻までには戻る』
普段は何ともない簡素な物言いが今はとても寂しかった。
少しでもカカシを感じられる物に触れたくて体を起こして探そうとした。
「痛っ」
布団から這い出て足を床に着け力を入れた瞬間、半端でない痛みが腰と内股から全身に拡がった。
「うううっ」
乱れた白い布の上で蹲り痛みが和らぐのを待つ。けれど昨夜カカシの太い楔を受け入れた秘所はジンジンして、それに反応した腰は自然と揺れる。痛みは落ち着いてもどうしようもない疼きがナルトの体を支配していた。
「ク、ソッ・・・・・」
オレってばこんなの嫌なのに。
カカシの行動一つで変化する体に愕然となったナルトは布団に顔を埋めて頭をゆるゆると振った。
「嫌だ・・・でも、先生からは離れらんねぇ」
一瞬シカマルの顔が浮かび、別れ際渡された無線と「何かあったら使え」というセリフが頭を掠めたがすぐに打ち消した。
「皆を巻き込むわけにはいかねえってばよ」
これはオレとカカシ先生の事だから。それにあの結界は簡単に壊せそうもないし。張ったカカシ先生は自由に出入り出来るだろうけど、他の人間は無理かもしんねーし、たぶんオレは・・・出られないだろうな。
まだ任務は始まったばかりだというのに先行き暗い予感にナルトは頭を抱えた。
続く