恋愛の法則~ナルカカの成り立ち~ナルト18歳設定
「ナルトー今日任務でしょ?帰ったらデートしようよぉ」
うずまきナルトは先程から背後で「しようよぉ」と繰り返す男にいい加減呆れて振り返った。口から漏れる渇いた笑いはヘタレた上忍に向けたもの。蒼い両の瞳は今でも身長や忍としての技量全てにおいて追い越せない男を見つめている。
一方、一見怪しい風体の男は唯一露になっている右目で愛しい存在をジッと見ている。常にぼんやりとした印象を周りに与える男だが実は優れた観察眼を持っている。眼だけではない。知能・嗅覚・忍術・体術、忍に必要なもの全てがパーフェクトな男なのだ。
「カカシ先生、こんな道のど真ん中で恥ずかしい事言うなってばよ!」
ナルトは真っ赤になって叫んだが、正直恥ずかしいのは台詞ばかりではない。上忍ともあろう者が朝からそれもSランク任務前に公の場で元生徒・現上忍仲間の青年に迫っている姿が恥曝しだ。
「えー、だってお前任務の後は疲れたとか言って寝ちゃうデショ?もしかして・・・浮気?」
エロ本を持った手は腰に当て、少し首を傾げ疑り深く探るようにナルトを見る姿はうっとおしい事この上ない。
「最近はSランクばっかりだったんだってばよ。あんまり寝れねぇし、だから浮気する暇ないってばよ」
「えっお前デート断るくせに寝てないの!?」
一大事とばかりにガッとナルトの両頬を大きな手が包みカカシの行動に目を丸くするナルトを仰向かせた。
「今日の任務はキャンセル!キャンセルしなさい」
「ええっそんな事言ったってばあちゃんが怒るってばよ」
上忍としてあるまじき事を言うカカシにナルトは困惑気味だ。カカシはナルトに甘い所がある。下忍の頃からそうだった。サスケとサクラもいるというのに野菜の差し入れはナルトにだけしていたし、カカシ宅にお泊りをしたのもナルトだけ。他の二人を誘ったとしても即断られただろうが。
「オレが五代目に言ってあげるから、ネ?そうしなさい」
まるでナルトを子供のように扱う命令口調にムッとする。
「先生が決める事じゃないってばよ」
「ナルト!どうしてそう反抗的なの!?昔はあんなに素直だったのに。どうしたんだ、誰かに何か言われたのか?」
ナルトが反発するとは思っていなかったカカシは第三者がよからぬ事を吹き込んだに違いないと勝手な想像をする。
「カカシ先生こそ・・・何でオレを管理しようとするってばよ?」
「管理って誰がそんな事言ったの!」
カカシの脳裏に可能性ある様々な面々が思い浮かぶ。
「誰も言ってない」
「じゃあ、お前が自分で思ったって訳、ね?」
カカシはナルトの顔から手を離して腕を組み睨み下ろした。
「オレは自分で決めたいんだってばよ」
「決めてるじゃない」
「でも、決めて行動した結果がカカシ先生に変えられてる事があるってばよ」
「ああ、それはねナルトによくないものだからだよ」
「嘘、嘘だ」
ナルトはいやいやをするように首を振り呆然と呟きながら一歩、また一歩と後退さる。それはカカシから離れようとする自然な行動だった。
「ナルトに必要ない事だからね」
口当ての下でクスッと笑う。
「まさか、この間のキバ達との約束が無くなったのは」
「仕方ないんだよ。だってナルトがオレとのデートをすっぽかしてあいつらとつるんだりしようとするからサ」
ナルトが悪いんだよ?という姿は理解不能、ナルトの知らないカカシだった。
「オレにどうしろって言うんだってばよ!?」
ナルトはこれ以上狂ったカカシを見たくなかった。事態の悪化を防ぐには何が最善だろうか。
「取り敢えず、今日の任務は休みな。オレの家の鍵持ってるだろ、それでオレの帰りを待つ事。ベッドは勝手に使っていいからちゃんと寝ろよ」
離れたはずの空間を易々と詰めてカカシの手が金の髪をくしゃっと掴む。
「イイコにしていれば何も問題無いんだからね」
耳元で囁いた男の口許が満足げな弧を描く。威勢を削がれたナルトがぼんやりカカシを振り向くと煙幕と共に男の姿が消えた。
「は・・・結局先生の思う通り、か」
ナルトはふらり道を外れ木々の間に体を滑り込ませると、誰に知られる事無く姿を消した。
『カカシ上忍との事どう思ってんだ?』
『カカシ先生の?』
先日シカマルと任務後に交わした言葉だ。隊長を務めたシカマルに呼び止められたナルトは、シカマルがナルトだけを呼んだ事に驚き、その行動に勇気・無謀など様々な感情を抱いた仲間達同様、凍りついた。シカマルを含めその場に居たキバ・チョウジ・ネジ・シノはナルトがカカシ上忍のお手付きである事を知っていた。その事もあってカカシのテリトリーに入る事は危険であると感じていただけに、シカマルが声を掛けた時には本人よりもビクついていた。
「おい」
ネジがシカマルに警告を発する前にキバが声を上げた。
「いーじゃん。今更余所余所しくなるなんておかしいぜ。俺達下忍からの付き合いなんだぜ」
「そうだよね、ボクもシカマルの行動に賛成だよ」
「チョウジ!」
ネジの鋭い声が飛んだがひっそりと低い声が制した。
「そろそろこの状況を何とかしたいと思っていた。なぜならナルトは仲間だからだ」
「シノ・・・全員一致か、ならば仕方ないな。俺もナルトを放っておけない」
「そういう事だナルト、めんどくせーが俺らはお前を構いてーんだ」
その後ナルトとシカマルは報告書を提出すると上忍待機室には向かわず、シカマルの部屋で向かい合った。
ナルトの部屋では油断ならない上忍にシカマルの関与を嗅ぎ付けられる可能性が高いし、茶屋では人目につき易い。誰かに目撃されそこからカカシの耳に届いては非常にまずい事態になりかねない。
「カカシ上忍と付き合って何年になる?」
シカマルの明け透けな物言いにナルトはふっと笑ってしまった。よく知る仲だからこそこうして直球を投げられる。いつの間にか自分には大事な仲間が沢山いて、もう暗い過去を振り返る必要はないのだと思い知らされる。今は日暮れの公園で来ない親を待つ子供ではない。
「六年だってばよ」
「六年・・・長いな。それで、お前はこの状態から脱出しようとは思わねーのかよ」
「脱出?」
「そろそろカカシ上忍から卒業しろよ。別れろとは言わねえ。それは本人の問題だしな。でもお前は上忍の言いなりじゃねえか。何でも頷いてちゃ駄目だ」
言いなりというシカマルの言葉に反感を抱く。
「オレってば言いなりじゃねーってばよ!」
「でも・・・あークソッこの際ハッキリ言う。お前ずっとカカシ上忍のいいように抱かれてんだろ、いい加減子供じゃないんだ見返そうとか思わないのか?」
「えっ」
ぽかんとナルトの口が開く。
「えっと、それってば、オレが・・・カ、・・・カカ・・・シ先生を、やるって事だってば?」
「平たく言えばそういう事だ」
ショックだった。言われた事よりもそういう可能性だってあるという事が。世界が開けた気がしたのだ。
「頑張れよ」
友人の励ましにナルトは「おうっ」と元気よく意気込んで見せたものの、いざカカシを目の前にすると、到底無理だと思った。それからはなるべく二人きりにならないようにデートの誘いを断っていたというのに、結果を知りたがる周囲の期待の眼差しときたら!
「ああっオレってばどうしたらいいんだってばよ!」
ぐしゃぐしゃ頭を掻き混ぜるナルトの耳に「ただいまー」という愛しくも恐ろしい声が聞こえた。
「ナールトォ」
「ゲ、帰って来た」
カカシは腰からポーチを外して放ると額当ても口当ても外しベストまでも脱いでベッドの上に座し、頭をくしゃくしゃにしているナルトの唇にただいまのキスをした。
「ちゃんと寝てたかー?」
カカシはくすぐったがるナルトの頬や首筋に幾つもの口付けを落としながらボサボサの髪を指して笑った。
「寝てた」
いつもの調子に戻っているカカシに安心したナルトはニシシッと笑い、されるがままになっている。しかし当然といった感じで押し倒された時にはシカマルの言葉を思い出してだからオレってば駄目なんだってばよ!と激しく己を叱咤した。
「ナルト?」
いつもならば甘い雰囲気を醸し出す筈のナルトがすっと真顔になり黙り込んだ為にカカシは不思議に思い、首を傾げた。
「オレってばもう子供じゃねーーーーー」
ナルトは飛び起きると勢いそのままに逆にカカシを仰向けに倒した。
「うわっ」
油断していたカカシは腰に跨っているナルトを何事かと見上げた。いつもとは真逆のこの状態。カカシを見下ろす事に優越感を抱いたナルトは自慢げに両手を腰に当ててカカシを嗤った。
「ヘヘッオレだってやる時はやるってばよ!先生油断し過ぎじゃねーの?」
「・・・・」
「今夜はオレがヤッてやるってばよ」
「・・・生意気な。お前にオレがヤれるわけないでしょ?」
「決めつけんなーーーーーっ!!!」
カッとなって跳びかかったナルトはカカシの服を脱がそうと掴みかかる。そして強い力で布を引っ張った。
「覚悟ッ・・・って・・・アレ?」
けれどナルトの体は突然言う事を利かなくなりカカシの服を掴んだまま身動き一つできなくなってしまった。
「うそ」
一体何が起こったのか分からなかった。ナルトはにっこり微笑むカカシを阿呆のように見つめ、まさかと恐る恐る視線を下に落とし愕然となった。ナルトの体の下、印を結ぶ手が見えていた。相手の動きを封じる術が発動したのだ。
「ゲッ」
「まだまだ甘~いね?ナルトォ」
「何で・・・何で・・・いつの間に?」
カカシは呪文のように呟くナルトの両手を服から剥がして変わりにベッドに突かせると、下から這い出て悠然と見下ろした。これで二人は通常の位置関係に戻った。
「お前は「受」なんだから余計な事はしなくていーの。騎乗位なら大歓迎だけどね」
カカシは先程の勢いから一変真っ青になり冷や汗をかくナルトの頬から頭を撫で、首筋から背中、腰へといやらしく手を動かし双丘で少し躊躇うように止めた。
「せっ先生ッまさか、まさかだってばよね!?」
この格好、状態全てにおいてナルトは不利だ。今はしっかり着込んでいる服もカカシの前では無意味。
「んー何が?」
とぼける男の手は既にパンツのファスナーにかかっている。
「オレッオレッてば腹が痛くて」
咄嗟についた嘘もカカシには通用しない。
「ハイ!嘘。ナルトが悪いコだから今夜はちょーーーーっと厳しくしちゃうよ?オレ」
「カカシ先生ぇ」
「甘えても駄目だよ~。さーてどういう風に啼いて貰おうか」
泣きつくナルトを突き放したカカシは一気にパンツと下着を足首まで下ろし、腕から脱がせられないシャツは引き裂いて剥ぎ取った。その乱暴さにナルトの体が震える。
「ナルト、今夜は長いよ」
背後に覆い被さる存在を感じ耳元で囁く低音にナルトは絶叫した。
こうしてナルトがカカシをヤる事は悪魔の手によって永遠に阻止されたのだった。
END