コランダム

大東のサファイア

佐藤さんちの裏山に、いっぱいサファイアを含んだ石が落ちてます。

岩手県一関市大東町興田

有名なコランダムで、珪線石-鋼玉ホルンフェルスに含まれるもので、六角板状の結晶をしています。

塩酸で洗うとわかるんですが、青いサファイアです。

ただし、インクルージョンが多くて透明度が低く、あまりきれいなものではありません。

コランダムの周りの無色透明な鉱物は、正長石です。

林の中にガーネットスカルンがあり、その脇の木の根っこをちょこっと掘るといっぱい出てきます。

穴虫のサファイア

奈良のはずれに二上山という山があり、この山を構成する安山岩の中の捕獲岩片中に、鋼玉(コランダム)が含まれているということが戦前に報告されました。

この安山岩の風化土砂には安山岩中のざくろ石(アルマンディン)が含まれていますが、これに紛れて青色のコランダム、いわゆるサファイアが少量ながら混在しています。

このざくろ石を、以前は穴虫というところで盛んに掘っており、磁力選鉱後の捨石の石英の多い砂に、サファイアが含まれています。

これを取り出す、という話です。

今回、多量の砂を頂いたので、ここからベストのサファイアを拾います。

ここのサファイアについては、故草下氏の「鉱物採集フィールドガイド」に、紙に広げて日向でじっくりやれって話があるのですが、これを踏襲しました。

ただし、科学は進歩するもの。古い本に書かれているのそのままというわけにはいきません。

それに、曇っていたら拾えないなんて、非効率極まりないです。

今回、この問題を解決するために鋭意努力し、新しい装置を開発発明いたしました。

「全天候型穴虫砂攻略装置 PF-4 改良型」、通称「全穴攻め4号改」です。

これなら深夜に黙々とサファイアを拾えますね。

この上に光沢のあるポスター紙を敷き、一方を両面テープで止め、砂を広げます。

よく拡大して見ると・・・

なんか青いのがいる!けっこういっぱい入ってる!

とはいえ、重量比を出したら1%以下でしょうけど。

これを拾っていきます。

サファイアはおよそ 2mm 内外の六角板状の結晶で含まれています。薄いので指ではつまめません。

ピンセットではエッジが欠けるし、つかみづらいことこの上ありません。

そこで、微結晶を拾うのを仕事にしている私が、攻略法をあみ出しました。

箸の先を濡らし、これをサファイアにくっつけると、表面張力で結晶が引っ付いてきますので、コップの中の水に放ち、外します。

で、箸の先の水滴が大きすぎると、これが砂に吸われて砂がダマになってしまうので、含ませる水は少ないほうがいいのです。

私は、自分の鼻先に濡れた箸をくっつけて水の量を減らし、これで拾ってます。

つまり、

+箸を水に付ける

+箸を鼻先に付け、水を減らす

+サファイアをくっつける

+サファイアの付いた先端を水に付け、サファイアを外す

この繰り返しです。慣れると1サイクル2秒。

完璧にサファイアのみを拾おうとすると、無駄に時間を食います。

ラフな選鉱が一番。砂鉱の完璧な選鉱ってのは歩留まりが悪いのです。

10分も拾うと、コップの底はこんな感じ。

忍耐の限界まで拾ったら、このサファイア入りの水をコーヒーのドリップフィルターで濾し、乾燥させ、広げます。

けっこういっぱいいるなぁ。

これを、今度は腰の硬いポスター紙をクサビに切り、先を折って二等分した極小スコップで拾い、ルースケースに並べます。

このうち、エッジの欠けが少なく、キレイな六角板状の結晶が20個に1個ぐらいの割合で入っているので、これを写真に撮るためにさらに選別します。

倍率は10倍前後で撮影しています。

結晶表面の三角形と、裏側の三角形が 180度ひっくり返しなのがわかりますか?

けっこうインクルージョンが入ってますね。固体もあれば液体もあります。

こんな感じです。楽しいんですけど無性に目が疲れます。

お金のある人はズーム型双眼実体顕微鏡(広視野)+真空ピンセットの方がいいかも。