含ウラン鉱物

ウランは核燃料となる元素で、自発的に放射線を出す元素ですが、地殻中にはそれなりの量が存在し、時折、含ウラン鉱物として野外で見出されます。ウランを含む鉱物について紹介します。

閃ウラン鉱(岐阜県土岐市)

岐阜県土岐市でかつて産した閃ウラン鉱です。ウランの二酸化物で、最も主力なウラン鉱石鉱物です。

この標本は非常に品位が高く、ずっしりと密度の高い塊です。少なく見積もっても U-Th品位 20%近くはあるでしょう。

これが戦時中に見つかってたら、石川山(福島県)でなくここを重点的に掘ったでしょうね。

この鉱床は、長さ600m、幅200mある小さなものですが、立派なピッチブレンドや多くのウラン二次鉱物を産したようです。

岐阜では、国道端や公民館横にウラン鉱床が露出しています。

閃ウラン鉱(Uraninite), UO2, cub., Fm3m.

岐阜県土岐市泉町定林寺 国道21号露頭

原子力研究開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)蔵(登録番号 0447)

標本サイズ 60 mm

Nikon Zoom Micro Nikkor 70-180mm D ED (f = 22)/Nikon D3

下の写真はチェコのピッチブレンドです。和名では古くは瀝青ウラン鉱と言いました。

ぬるっとした光沢の漆黒の塊状になるため、これをピッチ(コールタールの固まったもの。アスファルト)になぞらえたのでしょう。

この産地、ヨアヒムスタール(ヤヒモフ)のピッチプレンドは、ボヘミアガラスの黄色い着色料として、古くから利用されてきました。

燐灰ウラン石 (Autunite)

代表的なウランの二次鉱物で、黄色い板状結晶です。ウラン雲母と呼ばれることがあります。

その重量に対し、約 40% のウランを含みます。

上下 45 mm あるかなり立派な標本です。けっこう古い標本のようです。

アメリカ、ワシントン州とアイダホ州の州境ぐらいの Mt. Spokane には、以前こんな立派な結晶がゴロゴロしていたらしいのです。

ちょっとビックリしますね。

紫外光照射により、鮮やかな発光を示します。

色の濃い緑色のゾーンと、薄い黄緑色のゾーンがありますが、いずれも燐灰ウラン石です。

色の濃い部分は、極めて小さな閃ウラン鉱 (Uraninite) を包有しているためだとされています。

Mt. Spokane, Spokane Co., Washington, USA

Mt. Spokane のこの鉱物については、ウェブ上で論文が読めます。

コフィン石

コフィン石(Coffinite), (U,Th)(SiO4)1-x(OH)4x, tet., I41amd.

秋田県仙北市田沢湖

原子力研究開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)蔵(登録番号 0169)

標本サイズ 30 mm

Nikon Zoom Micro Nikkor 70-180mm D ED (f = 22)/Nikon D3

コフィン石はウランのケイ酸塩で、黒々とした大変地味な鉱物で、なかなか結晶を作らないことから見栄えは悪いものの、ウランの一次鉱物としては代表的なものです。

ウラン含有量も理論値で70%以上あり、大変放射能の高い鉱物です。

この標本は1950年代後半、カーボーン調査をきっかけに見つかったものです。

産地は田沢湖までしかラベルに書いていませんでしたが、今の仙北市、田沢湖町鎧畑 鎧畑旧道トンネルのトンネル内で産出したものに間違いないでしょう。

グリーンタフの基盤近くの礫岩中に生じたコフィン石で、一次生成したものとされています。

黄鉄鉱などと密雑な混合物を作り、肉眼で見てもよくわかりませんでした。

品位も低く、最大でもウラン品位が U3O8 計算で 2%を越すことはありません。

これについては、地質調査所報告232巻に詳細な報告があったと思いました。

五年ぐらい前に報告書を読んでみて、行こう行こうと思っていたものの、まだ到達できてない産地の一つです。

表面に黄色いつぶつぶがちょこっと見えますが、これは酸化されて生じたウランの華だと思います。

もう一つ、こちらは鳥取、倉吉市円谷のものです。

こちらは切断研磨したものです。黒い部分がそれです。

コフィン石(Coffinite), (U,Th)(SiO4)1-x(OH)4x, tet., I41amd.

鳥取県倉吉市円谷町

原子力研究開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)蔵(登録番号 0002)

標本サイズ 35 mm

Nikon Zoom Micro Nikkor 70-180mm D ED (f = 22)/Nikon D3

ウラン置換珪化木(人形峠)

人形峠鉱山、神倉鉱床で見つかった珪化木です。ちょっとシノブ石入ってます。

有機成分の大部分が二酸化ケイ素で置換され、その一部はカルノー石になっています。

ウラン含有量は線量から0.7%前後。

日本の大規模なウラン鉱床は、花崗岩を基盤岩として、その上に堆積したアルコース砂岩などに基盤ギリギリにたまるものですが、砂岩中に含まれている木質の植物化石、あるいは貝化石がウラン成分で置換されることがよくあります。

おそらく、有機質が残っているときに、優先的なウランの吸着が起こり、これがゆっくり無機化していくんでしょうね。

ちなみに昨日のヨハン石も、珪化木の隙間に生じたものです。

裏には、黄色いウランの花が粉ふいています。

燐銅ウラン石

山口県豊田町

ヨハン石(人形峠鉱山)

人形峠鉱山の神倉(かんのくら)鉱床に産したもの。

銅のウラニル+硫酸イオンよりなる塩なのですが、黄色みが強いですね。

もうちょっと緑かと思ってました。

ジッペ石(土岐市東濃鉱山)

カリウムのウラニル+硫酸イオンの塩基性塩です。はじめてみました。

人形石(人形峠鉱山)

おなじみ人形石ですね。

煤に似ているので、はじめのころは、ススライトと呼ばれていたそうです。

β-ウラノフェン(東郷鉱山方面鉱床)

小さいですが、美しい結晶が無数に付いています。