ルビジウム

アルカリ金属の一つ、ルビジウムです。銀色のベタベタした粘っこい金属です。

融点は39.3 ℃。体温では融けませんが、ちょっとあっためるとすぐ融けます。

周期表上でカリウムの下、セシウムの上で、予想されるとおり酸素に対してとても活性な金属です。イオン化傾向の高さはセシウムに次いで2番目。

空気中に出してもそう簡単には燃えませんが、可燃物(キムワイプとか)にくっついていると、空気に接触しただけで燃え出します。そのため、ガラス管に封じて売買されます。高真空で蒸留して封じ込むんですが。

水に入れると、瞬間的に燃え上がります。これは、カリウム、セシウムと同じですね。

恐竜の背骨みたいな平行連晶を作ったりしますが、撮影に難儀します。

とりあえず融液の凝固物を示します。ちょこっと恐竜の背骨みたいな樹枝状結晶の片鱗が見えるかと。

亀の甲羅みたいな模様は結晶粒界。固化するときに約 5% 体積減少するので、粒界がはっきり見えます。

他のアルカリ金属同様、ガラスを非常によく濡らす(ガラスとゆっくり反応する)厄介な金属です。

ルビジウムの炎色反応は赤と青の混じった淡い紫です。この二つの色は、炎の温度によって微妙に出るタイミングが違います。

模式的な色はだいたいこんな感じでしょうか。

地下資源がすごく薄くて、およその場合セシウムと一緒にいるんですが、セシウムよりはるかに可掘埋蔵量が少ないです。

地殻中の元素存在量ではセシウムよりむしろ多いくらいなんですが、極めて広く散っていて、局所的に濃縮するセシウムに比べると、見かけ上の資源量は少ないためです。こういう資源上の問題点はゲルマニウムなどにも見られます。

資源としては、リチウムペグマタイトに少量混じってくるので、これを取り出す程度、あるいはマニトバ(カナダ)ではセシウムを多く含む鉱床があって、セシウムの副産物として得られました。

次の写真はマニトバのポルックス石です。セシウムのアルミノケイ酸塩ですが、このセシウムサイトに数%のルビジウムが混じりこんできます。

これを掘った鉱山、The Tantalum Mining Corp. of Canada (TANCO)の Bernic Lake 鉱山はタンタルを掘ったペグマタイトでしたが、同時に豊富なポルックス石が産出しました。

鉱物種としてはロンドナイトとか、ロディザイトのセシウムをちょこっと置き換えることも。これは家に標本があるはずなので、あとで引っ張り出してきます。

そんな資源状況ですので、放射性のフランシウムを除けば、アルカリ金属で一番高価な元素です。

それほど使い道が多い元素ではありません。

セシウム原子時計より安価な原子時計ですとか、あるいは花火の着色(紫色の炎色反応)などでしょうか。

科学史上、ルビジウムが大事な役目を負ったこともあります。

炭素に光学活性があることを見抜いたのはパスツールで、それが正四面体構造によるという推論に達したのはファントホッフでした。

しかし、右左があることはわかっていても、光学活性化合物の絶対構造を決めることは長らくできませんでした。

それをはじめて決めたのはバイフットで、1950年に酒石酸ルビジウムナトリウムの結晶において、ルビジウム原子のジルコニウム特性X線に対する異常分散法で求めました。パスツールの実験から100年後の話です。

(文献) J. M. Bijvoet, A. F., Peerdeman, and A. J. van Bommel, Nature, 168, 271–273 (1951).