リチウム(簡易版)

リチウムは、銀白色の金属で、すべての金属元素のうち最も密度が小さいものです。密度は 0.53 g/cm3 と水の半分程度で、手に持つとプラスチックよりはるかに軽く感じます。ただし、空気中の湿気(水分)および酸素と速やかに反応し、あっという間に灰色くくすみ、そのうち白い粉を吹いてくるため、空気中での軽金属として利用することはできません。

(caption) 金属リチウムの塊。新鮮な状態では銀白色だが、すぐに灰色にくすむ。非常に軽く、ナトリウムやカリウムに比べやや硬い。

(caption) 金属リチウムのパッケージ。アルゴンガス中に厳封されている。

(用途)

リチウムは、1モルあたりの重量が小さく、密度も小さく、多くの電気エネルギーを貯めることができることから、軽く容量の大きい電池、特に放充電の繰り返し可能な二次電池に重宝されます。特に、炭素(黒鉛)と化合物を形成し、LiC6 という高エネルギー化合物を何度も作ることができるため、リチウムイオン電池(LIB)として、電気自動車などへの応用が積極的に行われています。

また、人間の血中のリチウムイオンを増大させるとうつ病治療に効果があるということがわかり、うつ病の治療に炭酸リチウムを用いることがあります。

有機合成用試薬として、有機リチウム化合物がしばしば用いられ、化成品や医薬品の合成試薬として利用されることもあります。

(資源)

かつては、リチア雲母やリチア電気石などの鉱物資源に依存していましたが、現在のリチウム資源の大部分は塩湖のかん水(干上がった海水の不純な部分)です。北南アメリカの塩湖資源が開発されていますが、開発に伴う環境破壊が問題とされています。

(caption) パキスタンのリチア電気石。リチウムを含む鉱物で、貴石として装飾品にも使われる電気石(トルマリン)の一種。赤、黄色、緑、青などの多くの色のバリエーションがある。