セシウム

福島の原子力発電所災害で毎日名前を聞くことになってしまった、セシウム。

たぶん、単体を見たことのある人は、千人に一人もいないのではないでしょうか。

非放射性の金属セシウム 133 です。

大変美しい黄金色の金属で、融点 28℃、体温で簡単に融けます。

が、単体のセシウムはすべての元素の中で最もイオン化傾向が高く、空気中に出すとあっという間に酸化します。量が多ければメラメラ燃え出します。ですので、アルゴン詰めのアンプルに入れて売られています。

融解させ、適当に凝固させると融液の中に多くの樹枝状結晶が育ちます。

室温ではベタベタした固体で、アルゴン中で取り扱うのですがいろいろなところにへばりつき、空気中に出すと燃え出すので大変厄介です。

5gアンプルを空気中で割っただけで勝手に燃え出します。

炎色反応は青紫です。

【地下資源】

セシウムの地下資源は乏しく、リチウムの副産物で得られるものを利用しています。

次の写真はカナダのポルックス石です。

Bernic Lake, Lac-du-Bonnet area, Manitoba, Canada

width: 7.1 cm

ポルックス石はペグマタイトで有名なイタリア、エルバ島で見つかったセシウムを主成分とするケイ酸塩鉱物で、結晶構造から、方沸石のセシウム置換体に相当します。

この写真 (mindat) とか見ると、それがよくわかります。

ギリシャ神話の双子の神、カストルとポルックスの名前が同時に産する二つの新鉱物につけられましたが、片方のカストル石はペタル石(旧名は葉長石)と同じ鉱物だということになり、こちらは消滅しました。

花崗岩の塊そこね成分の吹き溜まりである「ペグマタイト」に稀に見られます。

今は、アフガニスタン産がたまに市場に出てきますね。

日本ですと妙見山(茨城)のリチウムペグマタイトで記載されています。ただし、石英にそっくりな真っ白な塊状の産状なので、よほど質感に対するセンスが無いと見つかりません。私も何回か訪れていますが、いまだにみつかりません。

アルカリ金属で一番軽いリチウムを含むカストル石と、一番重いセシウムを含むポルックス石が兄弟で、しかも同時に産するというのは考えてみれば面白い現象です。

イオンサイズおよび硬さがちょうどいいカリウムが優先的に消費され、次にナトリウム、最後に残ったリチウムとセシウムとルビジウムが、いろいろヘンテコな鉱物の原料となるのでしょう。

ルビジウムは量が少なく、まとまった鉱床を作りませんが、セシウムを置き換えて混じりこんできます。