カドミウム

金属カドミウムの結晶。カドミウムは蒸気圧が高く、加熱すると融点付近から蒸気圧を持ち始め、蒸発または昇華する。低温のガラス壁に蒸気が接触すると昇華し、ある程度温度が高いと金属液滴ができる。この液滴を冷却すると、液滴の形をある程度保ったまま、ミラーボールのようなまばゆい光沢のカドミウムの結晶ができるのが見られる。これは単結晶のように見えるがそうではなく、放射状結晶集合(表面に出ている面は六方晶の底面c)らしい。

トロトロに溶かした、カドミウムのつらら。

表面のしわしわは、酸化皮膜の引きつれです。

やや青みを帯びた銀白色の金属で、高温では酸化されやすく、酸化皮膜を作ります。

酸化されると灰色っぽくなり、そして次第に黄色みを帯びてきます。

カドミウムの名前はイタイイタイ病などの公害病で有名になりました。

周期表では亜鉛の真下で、亜鉛鉱石に少量含まれて産し、精錬後の汚染水が田畑に入り込むと米に吸収され、この米を食べると腎臓がやられ、骨が脆くなるなどの有害性を示します。

三井金属鉱山の経営した亜鉛鉱山である神岡鉱山の事件がよく知られていますが、こういった事故は何ヶ所もあり、安中の東邦亜鉛の精錬所近くでもそういったことが起こりました。

昔はメッキによく用いられました。耐食性があり、自己潤滑性もあるので、自動車部品などには好んで用いられました。カドミメッキといい、独特の金色の被覆(ユニクロメッキの虹色より落ち着いた色)ですぐわかります。これも縮小傾向にあります。

低融点合金の組成の一つだったり、硫化物が黄色顔料に使われたり、ニッカド電池として用いられたりします。

黄色〜赤色顔料としての硫化カドミウム〜セレン化カドミウムは耐熱性が極端に高く、ほうろうや陶磁器釉薬用顔料としては特に有用です。

硫化カドミウム(左)、セレン化カドミウム(右)、およびその固溶体(中央)。

化合物半導体で、そのバンドギャップに相当する波長より長い光を吸収する。

カドミウムサイトを亜鉛で部分置換すると黄色が薄くなり、水銀で置換するとオレンジ~赤になる。

また、硫黄サイトをセレンで置換すると、やはり長波長側に吸収がシフトし、赤くなる。

しかし、やはりその有害性から、忌避される傾向にあります。

[資源]

カドミウムは亜鉛鉱に少しずつ含まれ、亜鉛鉱精錬時に回収して利用し、特に有用な鉱石鉱物はあまりありません。

フィールドでよく見かけるのはこの硫カドミウム鉱。

硫カドミウム鉱(Greenockite)は、硫化カドミウム(CdS)が成分の鮮やかな黄色の鉱物で、顔料として使われるカドミウムイエローと同じです。

カドミウムと亜鉛は相性がいいので、亜鉛鉱の微量成分でカドミウムがいるのですが、これが地表近くで酸化/加水分解されると、場所によってはカドミウム分が濃縮し、この鉱物となって二次生成します。

亜鉛に伴ってカドミウムが出る例としては、公害病(イタイイタイ病)を引き起こした神岡鉱山の例があります。

硫カドミウム鉱(Greenockite), CdS, hex, P63mc.

滋賀県甲賀郡石部町灰山、標本サイズ 5.5 cm

Nikon Printing Nikkor 95mm F2.8A/Nikon PB-4/Nikon D800E

滋賀県甲賀郡石部町灰山産。日本を代表する硫カドミウム鉱の産地ですね。

ここは採石場で、鉱脈酸化帯に当たり、ベゼリ石などの珍しい鉱物を多く産しました。

こちらは神岡の石です。やはりカドミウムは鉛亜鉛鉱床の酸化帯に出てきます。