バナジウム

溶融塩電解合成の、バナジウム樹です。

あまり見ることのない、純度 99.9+% の高純度品。

バナジウムは体心立方充填ですから、サイコロのような (001) をメインにした結晶ができます。が、エッジが削げます。

どうも、(110) と、(210) で削げるようですね。

周期表で、一つ高周期のニオブが、溶融塩中での電解で (110) をメインにした結晶ができるのと、似ています。

上の写真での上下延長方向が、格子対角を斜めに突っ切った方位になってます。指数で言うと (111)。

次の写真は、平行連晶のアップです。サイコロのような (001) 面を基調とし、稜が (210) で切られているのがわかります。

下の写真の一番右のサイコロ状の結晶は、面の出方が180度ひっくり返ってますから、(111) を双晶面とした双晶ですね。

金属バナジウムは比較的空気酸化を受けやすく、2ヶ月も放置すると酸化物皮膜ができて、その干渉色により虹色に変色してしまいます。

バナジウムは、純粋な単体で使われることは少なく、合金鋼としての用途のほうがはるかに多く、クロムバナジウム鋼などの、高強度工具鋼としてよく用いられます。ゴルフクラブにも愛用されます。

それを暗示するように、大変硬度の高い金属元素で、カチカチです。

航空機用のアルミ―バナジウム鋼も、使用量の多い用途です。

また、酸化物は触媒としての用途があります。特に、5酸化2バナジウムは、硫酸製造用には無くてはならない触媒です。

価数によってもイオンの色はかなり変わりますが、三価イオンは鮮やかな色で、野外で見つけるとよく目立ちます。

地下資源としてはバナジン鉛鉱や硫化物のパトロナイトがあります。ウランと仲がよく、ウラン鉱床でもしばしば見つかります。

火山岩に時折含まれますが、資源的な価値はあまりありません。

次の写真は、マンガン鉱床に希に出てくるバナジウムとストロンチウムのケイ酸塩、原田石です。

三価のバナジウムイオンによる発色で、鮮緑色が目印。

原田石(haradaite) Sr4V4Si8O28, orth., Ama2

鹿児島県大島郡大和村 大和鉱山(TL)

東京大学総合研究博物館蔵

標本幅: 4.8 cm

Nikon Micro Nikkor 60mmF2.8G ED/Nikon D3

モロッコ産のバナジン鉛鉱(天然のバナジン酸鉛)です。美しい赤橙色六角板状の結晶を示し、白い重晶石の上にパラパラと付着しています。

ある種の生体内で、バナジウムが濃縮されることが知られています。

代表例はホヤですが、ホヤの血液中には、海水濃度の数千―数万倍のバナジウムが濃縮されています。

しかし、いつ見ても食欲の湧かない形状をしていますね。ホヤ。