タングステン

タングステンは融点が3000℃近い高融点の鋼灰色金属で硬度が高く、精錬には苦労します。

これは、アルゴン雰囲気で電子ビーム融解させたタングステンペレットを割ったものです。

結晶粒が六角柱状になっています。

切れたタングステンのフィラメントです。

タングステンは代表的な高融点金属で融点が3000度以上あり、そう簡単に融解できず、なかなか自形の結晶になってくれません。

あまりタングステンの結晶を見る機会はないと思えるのですが、実は身近なところでタングステンの結晶化をしていたりします。

ハロゲン電球の内部がそう。

ハロゲン電球のタングステンフィラメントは点灯のたびにゆっくりゆっくり結晶化し、結晶粒が成長していきます。

点灯時のフィラメント温度は融点まで上がらないので、融解こそ起こらないのですが、原子がゆっくりと結晶化再配列するには充分な温度のようです。

ここで育った粗結晶質のフィラメントが、熱的・機械的衝撃で結晶粒界や結晶内でのへき開によって破断し、そこで溶断されます。これが電球の切れるメカニズムです。

それを防ぐために、この結晶化を阻害するような不純物元素を混入してあるのですが、やっぱり切れるときには切れます。

写真は撮影に使っているファイバーのハロゲンライトのフィラメントで、メーカーはフィリップス。

フィラメントのコイルの形を保つように結晶化し、一見並行連晶のようになっています。

いくつか、結晶方位が違う平行連晶がくっ付いているのがわかりますか。

わかりやすく、結晶の方位によって色づけすると、こうなります。

色の違う部分は、向きの違う結晶。

この色の境目の部分で、フィラメントが切れやすい傾向があります。

蒸着源のタングステン線ぐるぐる。

高真空中で、中のアルミナの容器に蒸着したいものを放り込み、タングステン線に電流を通じ、発熱蒸発させます。タングステンの高融点を利用しています。

白熱電球のフィラメントとして盛んに用いられましたが、エネルギー変換効率があまり高くなく、電気エネルギーが熱として逃げ易い傾向があります。

地下資源としては「重石」と呼ばれるタングステン酸塩が利用されます。

灰重石(かいじゅうせき)、鉄重石、鉄マンガン重石など。

灰重石(Scheelite), CaWO4, tet., I41/a.

明延鉱山

国立科学博物館蔵.標本番号:NSM-M34524

大きさ : 4.0, 2.8 cm

灰重石(Scheelite), CaWO4, tet., I41/a.

乙女鉱山

国立科学博物館蔵.標本番号:NSM-M34506

大きさ : 4.0, 3.8 cm