東濃鉱山のさいご

東濃鉱山の閉山に伴う調査に出かけてきました。

日本でもトップレベルの埋蔵量を誇るウラン鉱床でしたが、いかんせん可掘鉱量が少なすぎ((要するに品位が低い))、とうとう本格出鉱することなく閉山措置になってしまったのです。抽出したイエローケーキは人形峠事業所に試験的に送ったのですが、本格的な商業操業はできませんでした。

シャフト(縦坑)のやぐらです。

ウラン鉱床ですので、汚染で外部被曝されないよう、服を着替えます。

軍足まで貸してもらえます。写真は着替え中のM先生。

動燃調査で地表鉱床の追跡から、基盤岩の上に乗った堆積層にウラン濃縮部があるということがわかり、基盤岩直上まで100m以上一気にシャフトを降りて行きます。

H立のエレベータ屋さんがびびったという、いわくつきの(?)ケージ。こわいよこわいよ。

坑内のシャフト前ホールはこんな感じ。

ここから水平坑道を数百メートル歩いていきます。 前は、monazite さんです。

三脚立ててじっくり撮影していると、置いていかれてしまいます。 まってー、おいてかないでー。

うーん。試験鉱山とはいえ、やっぱり風格がありますね。

この男くさい雰囲気! いいですね!

坑車です。鉱床の富鉱帯は砂礫凝結層で水を通しやすく、2つのレベル間に酸を通してウラン抽出を行ったので、通常の鉱山とは違ってほとんど鉱石選鉱はしなかったのですが、これがないと穴が掘れません。

坑内壁の一部には、ウラニルとナトリウムの炭酸塩であるアンダーソン石 (andersonite) やカリウムとウラニル硫酸塩のジッペ石 (zippeite) が吹いています。

これ、見るまではウラン鉱脈だと思っていたのですが、そうじゃなくって地下水が毛細管現象でウラニルカチオンを溶かし出し、空気中の炭酸ガスなど吸収固定して坑壁に晶出するみたいですね。

おそらく、ウランのかなりの部分は、鉱床中では沈殿鉱物化しているとはいえ溶解度積が大きく、地下水によってじわじわ動きやすいのでしょう。

これに、紫外線を当てると蛍光を発します。 上の写真とだいたい同じアングルです。

ものすごくきれいです。 気分は、ポムじいさんに坑内を見せられたパズー&シータな感じ。 「わしも、みるのは、はじめてじゃー」

一見、坑道内にウランがいっぱいあるような錯覚を受けますが、この露頭前のγ線空間線量でも、1μSv/h あるかどうか。

要するに、ぜんっぜんウラン品位が足りないのです。 坑外で、0.1μSv/h 以下です。バックグラウンドとほぼ同じレベル。

そういう状況から、この坑道は今年度中には充填して埋めてしまい、廃坑になってしまいます。

日本の高度成長期、夢のエネルギーを求め、地調と動燃で日本中を探し回り、とうとう見つけたウラン鉱床。

しかし、可掘量が圧倒的に足らず、掘るまでもなかったのでした。

我々は、東濃鉱山の最後の雄姿を看取った見学調査者になってしまいました。

彼の最後の立派な姿を、オレは一生忘れられないでしょう。

(注記)東濃鉱山の見学、一般人は連絡しても、絶対に入れてもらえません。よほど文科省に太いパイプを持たない限り、機構に電話しても確実に断られます。ゴメンナサイ。写真で雰囲気だけ楽しんでください。