イッテルビウム

イッてる元素、ランタノイドの最後から数えて二つ目、イッテルビウム。

銀白色の金属で、ゆっくりと空気中でくすんでゆきます。

これもスウェーデン、ストックホルム湾郊外のイッテルビーのペグマタイトのガドリン石から見出された元素です。イッテルビーでは、エルビウム、テルビウム、イットリウム、イッテルビウムの四つの元素が見つかり、名前が地名から取られています。紛らわしいことこの上なし。

写真を見ると、大船渡市みたいなところなんです。イッテルビー。

http://www.flickr.com/photos/bartdenny/469640700/lightbox/

ここでは、上記四元素以外にもガドリニウム、ホルミウム、ツリウム、スカンジウム、ルテチウム、タンタルを発見できたのです。まさに元素村。イッテルピーの珪長石鉱山からは、最盛期は握り拳大のガドリン石がゴロゴロ出たみたいですね。ただし、歴史的な価値から、イッテルビーの珪長石鉱山跡での鉱物採集はスウェーデンの法律により固く禁じられています。採集しちゃダメですよ。

モナズ石やサマルスキー石、ユークセン石、ゼノタイムなどに少量含まれますが、他の希土類との分離が困難で、イオン交換樹脂と溶媒抽出法の組み合わせでようやく単離できます。サマルスキー石、ゼノタイムでは、モル比で鉄を卓越したイッテルビウムサマルスキー石、イッテルビウムゼノタイムというのがありますが、すごくレアです。やっぱり現在は中国の粘土吸着型の鉱床が一番強いです。

マニアどころでは、コラ半島でイッテルビウム端成分のヒンガン石が見つかっています。トルトベイト石のイッテルビウム置換体というのもあります。ここらへんはコラ半島の独壇場ですよね。

やや特殊なケースですが、ロシアの Luna-24 ミッションで月の表面から単体が見つけられているそうです。月への隕石衝突で生じたガラス表面のハロゲン化アルカリに少量混じりこんでくるという産状から、星間を漂う隕石由来なのでしょう。無酸素条件では、こんなに酸素親和力の高い元素でも存在できるみたいですね。

応用はもっぱら固体レーザーのドーパント。波長可変の強いレーザー光が出力できます。エルビウムと並んでレーザードーパントイオンでは多用されます。

フラーレンの中にイッテルビウムを閉じ込めた研究もありました。

それと、調べるまで知らなかったのですが、比較的強い脊椎動物に対する有害性があるみたいです。気をつけましょう。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tera.1420110308/abstract;jsessionid=922DB89D057B3E661A37C5A7745F1AB2.d04t01