ホウ素

写真は単体ホウ素です。

ホウ素は酸素との結合エネルギーが非常に大きく、ホウ酸・ホウ酸塩を作りやすいのですが、アルミニウムやマグネシウムで無理矢理還元すると、単体ホウ素になります。融点2076℃、モース硬度は9以上有り、自形結晶を作るのが非常に難しい元素です。

金属光沢でツヤツヤしているのでとても写しづらく、撮影も苦戦します。

六方晶系で、六角板状の結晶がたまに見えます。

目立つ針状の結晶は、おそらく tetragonal でしょう。

ホウ素の単体の結晶構造は極めて複雑で様々な相があります。

それらの大部分に共通するのは、B12 というかご状のホウ素クラスターを含み、これが互いに連結しているという不思議な特徴です。

ほんの少量の(モル比で4%以上の)別の原子が不純物として含まれると、また別の化合物に変化し、結晶構造も変わってしまいます。

硫黄と並び、多くの単体相が存在する興味深い(だが厄介な)元素であります。

こっちは単体ホウ素の焼結体です。

軽いが強靭かつ硬度の高い塊で、ガラスに容易に傷をつけることができます。

ホウ素はいろいろな鉱物に含まれます。「トルマリン」という名前(鉱物グループ)の電気石類も、ホウ素を含んだ複雑なケイ酸塩です。次のは岩手のもので、鉄電気石です。

こちらはパキスタンのリチア電気石。宝石(貴石)にも使われます。

宮崎のダンブリ石です。カルシウムとホウ素のケイ酸塩で、かつて戦時中に中島飛行機(今の富士重工)が、ガラスの原料用に掘っていたことがあります。

ホウ素の利用の一つ、ホウケイ酸ガラスです。

軟化点が高く、熱ショックに強く、化学的にも安定性が高いので、実験器具や食器で多用されます。有名なのはコーニング社のパイレックスですが、日本の技術では柴田のハリオガラスをおすすめしたいですね。