テルル

聞きなれない名前かもしれませんが、テルル (tellurium)。

周期表でいうと、酸素の下の下の下。

酸素の下が硫黄、その下がセレン、その下がテルルなんですが、ここまで周期を上げると屈折率が上がり、見た目がだいぶ金属っぽくなってきます。

テルルというと、臭いイメージがあります。それは含テルル有機化合物の話で、単体はどのような構造のものでも匂いがしません。

写真のものは、金属テルルという多形で、テルル原子が結びついて無限の鎖を形成しています。

この鎖、よく調べてみると左右が存在し、水晶と同様に「右テルル」「左テルル」が存在するはず。

が、見てもさっぱりわかりません。

ちょっとわかりづらいんですが、結晶系は三方晶系、空間群は P3121 ですから、水晶と同じです。これはセレンも同じ。

よく、鉱物マニアは「テルルの結晶は水晶にそっくり」って言います。

原子配列の対称要素が同一なためです。

レアな元素で、野山を駆け回ってもあまりありません。

国内だと、手稲鉱山(北海道)、河津鉱山(静岡)が最有力の産地で、あとはちょぼちょぼと、金属テルル化物、テルル酸塩、亜テルル酸塩がでてくるぐらいで。

次の写真は手稲鉱山の自然テルルです。針状銀色の結晶で、黄色っぽくなっているのは酸化テルルで汚れた重晶石です。

この元素、金とすごく相性が良くて、金属テルルが出てくるところには金がすごく多く含まれます。

で、あまり人の役に立ちません。

元素って、ものすごく生活に密着して、絶対に欠かすことができないものもあれば、全然なくても困らないものもあります。

テルルはあまり役立たないほう。

あ、人間の視線からですよ。

原子や分子は人に役立とうなんて思っちゃいません。

結晶化法はいろいろあるんですが、単純に高真空で600度で昇華させてみました。

簡単にテルルミラーができます。

もっと育てると、こんな感じの放射状の集合体に。

刀のように見えますが、三角柱です。

あとは、助剤を使った水溶液からの結晶化、テルル化亜鉛を塩素ガスでテルルに戻すメルク法など、きれいな結晶を育てる方法が多く報告されています。

天然では、単体や金属テルル化物のほか、テルル酸、亜テルル酸のようなオキソ酸を形成し、他の金属カチオンと結びついて多くの含テルル鉱物を作ります。

北海道の手稲鉱山ではじめて発見された手稲石は、含水亜テルル酸銅の組成を持つ鉱物でした。

青い色は銅イオンに基づくのですが、大変美しい色の鉱物です。